Q:63歳を前に退職しました。失業手当と特別支給の老齢厚生年金はどちらを優先すべきでしょうか? 失業手当の後に特別支給の老齢厚生年金を申請することは可能ですか? 65歳以降の年金に影響はありますか?
「1962年11月生まれ。11月で63歳になりますが5月に仕事を辞めました。失業手当をもらうのは3カ月後くらいになると思うのですが、失業手当をもらったほうがいいのか、63歳になったら特別支給の老齢厚生年金をもらったほうがよいのか、悩んでいます。特別支給の老齢厚生年金をもらわず失業手当をもらい、失業手当をもらった後に特別支給の老齢厚生年金の手続きはできるのでしょうか? 65歳からの年金にはどう影響しますか?」(たこぽんさん)
失業手当をもらった後に特別支給の老齢厚生年金の手続きはできる?(画像:PIXTA)
A:特別支給の老齢厚生年金は、失業手当の受給中は停止されますが、後から申請できます。65歳以降の年金には影響しないため、収入の見通しを踏まえて選ぶことが大切です
65歳を迎える前に退職を検討している方にとって、「失業手当(正式には雇用保険の基本手当(失業等給付)といいます)を受け取るか、特別支給の老齢厚生年金を選ぶか」は、生活設計に直結する重要な選択です。たこぽんさんからいただいたご相談は、まさにその分岐点に立つ方のリアルなお悩みですね。まず押さえておきたいのは、失業手当と特別支給の老齢厚生年金は原則として同時に受け取れないという制度上のルールです。失業手当を受給している期間中は、特別支給の老齢厚生年金の支給が全額停止されるため、どちらか一方を優先する必要があります。
この仕組みは、「今の生活をどう支えるか」という視点で選択を迫るものですが、失業手当の受給が終わった後に、改めて特別支給の老齢厚生年金の申請をすることは可能です。年金の受給権そのものが失われるわけではないため、「まずは失業手当でつなぎ、その後に特別支給の老齢厚生年金を受け取る」という流れも選択肢として成り立ちます。
65歳以降に受け取る老齢基礎年金や老齢厚生年金には、今回の選択が影響しません。失業手当を優先しても、将来の年金額が減ることはないため、この点は安心材料の1つです。
税制面では、失業手当は非課税ですが、特別支給の老齢厚生年金は課税扱いです(控除により非課税となる場合もあります)。こうした違いは手取り額に影響するため、事前に確認しておくことで生活の見通しが立てやすくなります。
また、税負担だけでなく、健康保険料や介護保険料も収入に応じて発生します。制度を選ぶ際には、こうした負担も含めて収支バランスを考えておくことが大切ですよ。
退職後の収入をどうつなぐかは、制度を選ぶだけの話ではなく、自分らしい生活設計そのものです。制度の仕組みを正しく理解し、収入見込みや税負担を踏まえたうえで、「今の安心」と「将来の安心」のバランスを取ることが、納得感のある選択につながりますよ。
そしてもう1つ大切なのが、“わたし仕様”で確認してみることです。申請のタイミングや手続きの流れによって、実際の運用には細かな違いが生じることもあります。
例えば……
- 失業手当の受給資格の判定時期
- 特別支給の老齢厚生年金の申請に必要な書類や手続きの流れ
- 支給開始月の確認と収入設計への反映
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