
NISAの投資枠は使い切ったほうがいい?(画像:PIXTA)
「NISAの年間の投資枠360万円を全て使い切ったほうがいいでしょうか? 今年中に使い切れないかもしれません」(資産1000万円・40代)
NISAの投資枠、どう使えばよいか悩みますよね。
筆者はせっかちなので、つみたて投資枠は使っていないものの、成長投資枠は受け取った直後に、ほとんど使い切ってしまいました。
本記事では、株式投資で生計を立てている個人投資家の筆者が、NISAの投資枠をどう扱うのがよいか考えていきます。
NISAの投資枠、使い切ったほうがいい?
ご質問者さまの資産額が1000万円なので、使い切ろうと思えば使い切れる資産を持っている、という前提で話を進めます。理屈っぽい話をするならば、「バブルでもない限り、大多数の人は使い切ってしまうのがよいと思う」というのが筆者の考えです。
ただし、「投資経験が浅い人」や「投資が得意な人」の中には、あえて使い切らないほうがよいケースもあります。以下で解説します。
バブルの場合
投資をするなら、最低限「バブルかどうか」くらいは目利きできるようになったほうがよいかと思います。ここでのバブルとは「裏付けに乏しい高い価格で取引される」ことを指します。
例えば1990年の日本株バブルでは、銀行の定期預金金利が6%もあったにもかかわらず、TOPIX(東証株価指数)の益回りは2%にすぎませんでした。
つまり、「リスクを取らなくても年6%の金利が受け取れるのに、リスクを取って株を買っても大したリターンが見込めなかった」ということです。リスクを取るうまみなど、ほとんどなかったと言えます。
株式市場がバブルであれば、「株を買わないのが正解」なので、NISAの投資枠を無理に使わず、安全資産に回すのが無難でしょう。
理屈上は、使い切ってしまうのがよい
市場がバブルでなく、手元資金が潤沢なら、理屈上は、NISA枠を使い切るのが正解だと思います。使い切って損をするのは「高値づかみ」くらいなので、バブルじゃないタイミングなら大きなミスにはつながりにくいと思います。
また、NISAの非課税枠は翌年以降に繰り越せないため、「その年に受け取った分はその年に使う」が基本です。もし判断を誤ったと思えば、売却すればよいのです。
例外1:心の準備がまだの人
使い切らないほうがよい例外に、「心の準備がまだ」という人が挙げられます。筆者も昔はそうだったのですが、投資するには勇気がいるものです。投資信託や個別株を買うと、毎日のように資産が変動します。
筆者は初めての投資で50万円の株を買ったのですが、1日で1万円上下するのが怖くてたまりませんでした。
360万円の枠を使い切れば、相場が荒れたときに1日で5万~10万円ほど動くことも珍しくないでしょう。
株式投資はハイリスク・ハイリターンなので、数年に1度は20%くらい損するでしょうし、人生に1度は半分くらいになってしまうリスクもあります。
投資にはリスクがつきものですし、「自己責任」である以上、損をしても誰も助けてくれません。だからこそ、「損失を受け入れる覚悟がある」「自己責任を取れる」人だけが大きな金額を投資すべきです。
心の準備ができていない状態で大きなリスクを取ると、大事なところで動揺してしまって、冷静な判断を下せなくなるリスクもあります。
損失に対する耐性は、実力がつくにつれて少しずつ身についていきます。
筆者も初めは50万円の投資でもヒヤヒヤしましたが、今では1つの会社に何百万円と投資することもザラなので、少しずつ慣れていけばよいと思います。
例外2:投資がうまい人
使い切らないほうがよいもう1つの例外に、投資が上手な人が挙げられます。個別株投資がうまい人は、つみたて投資枠を使うとかえって効率が悪くなります。つみたて投資枠で選べる投資商品は無難なものばかりで、利回りも平均的だからです。
だから、上手な人は「成長投資枠だけ使い切って、つみたて投資枠は使わない」というのがよいかと思います。
まとめ
ここまでの話をまとめると、- バブルならNISAだろうが買うべきでない
- 適正価格なら理屈上、NISAの投資枠を使い切るのが有利
- 心の準備ができていない人は無理にNISAの投資枠を使い切る必要はなく、少しずつ慣れていけばよい
- 投資がうまい人は、つみたて投資枠は不要で、成長投資枠だけ使い切ればよい
NISAは「うまく使えばお得」ですが、しょせんは「税金が優遇される箱」にすぎません。
使い切ること自体が目的ではなく、自分の投資プランに合わせて最善の使い方を考えることが大切です。