本記事では住宅・不動産ジャーナリストの山下和之氏が、比較的価格が安いものの資産価値上昇が期待できそうなエリアを取り上げます。
<目次>
23区の新築マンション、平均は1億円超え
首都圏の都心部にマンションを買えれば、購入後の資産価値の高まりを期待できるのは間違いありません。民間調査機関の不動産経済研究所の調べによると、東京23区の新築マンションの平均価格は2018年度には7320万円だったのが、2024年度には1億1632万円に上がっています。6年間で58.9%も上がった計算です。都心部だけに限定すれば、もっと上がっているでしょう。しかし、東京23区は平均で1億円以上ですから、都心部となるとそう簡単には購入できないという人が多いのではないでしょうか。そこで注目したいのが、現在の価格水準は低いものの、将来的に価格の大幅な上昇が期待できそうなエリアがないかという点です。
群馬県のマンションは10年で1.8倍に
各種のマンション情報を提供している「マンションレビュー」を運営するワンノブアカインドでは、定期的に全国47都道府県の中古マンション70㎡換算価格について、1年前、3年前、5年前、10年前との価格騰落率(上昇率、下落率)を算出しています。その結果をみると、まだまだ価格は低い水準にとどまっているのに、上昇率が高く将来性のありそうなエリアがあることが分かります。図表1は、全国47都道府県のうち、10年前との騰落率の高いベスト10と、その都道府県の2025年6月現在の70㎡換算価格を示しています。
図表1:中古マンションの10年前との騰落率が高い都道府県と価格 騰落率が最も高かったのは東京都の+88.9%ですが、70㎡価格は8212万円と高く、手が届かないという人も多いでしょう。
しかし、騰落率2位は群馬県の+84.8%で、70㎡価格は1341万円とリーズナブルな水準です。10年前には725万円だったのが、1.8倍以上に上がっています。
移住先として人気が高まる群馬県
群馬県といえば新幹線を利用すれば東京まで1時間弱の近さでありながら、北部は尾瀬や榛名山、谷川岳などの自然に恵まれ、草津、伊香保などの温泉が豊富で、南部には電機、自動車などの工業地帯が広がり、バランスの取れたエリアとして注目度が高まっています。公益社団法人の「ふるさと回帰・移住交流推進機構」が、移住希望地についてアンケートを行ったところ、群馬県は静岡県、長野県、北海道などを抑えて1位になりました。特に若い世代の支持率が高いそうです。
仮住まいした上で群馬県が気に入って、本格的に移住を決意したという人も増えていますし、東京の拠点は残しながら群馬県にも拠点を持つ、二拠点居住を実行する人もいるようです。
そうした人のなかには、首都圏に比べての価格の安さから、マンションを購入する人も少なくなく、それがマンション価格の上昇率の高さにつながっているのではないでしょうか。今後もこうした流れが続きそうですから、群馬県にマンションを買っておけば、長い目でみた資産価値のアップを期待できるのではないでしょうか。
北陸新幹線の延伸効果が期待できる県も
10年前との騰落率が高い都府県としては、東京都や群馬県のほか、沖縄県や大阪府がありますが、どちらも70㎡価格は3000万円台に達しています。そんななか、群馬県以外にも価格が安くて資産価値の高まりそうな県があります。福井県、新潟県、石川県などがそうです。福井県は70㎡価格が1812万円でありながら、10年前との騰落率は+71.0%、新潟県は1131万円で、+66.8%。石川県は1652万円で、騰落率+52.4%です。
このうち福井県は、2024年3月の北陸新幹線の福井・敦賀への延伸効果もあって、マンション価格が上昇しています。現在も福井県の福井市、敦賀市では駅前を中心に再開発が続いていて、マンション価格が上がっています。
時期は明確ではありませんが、北陸新幹線は最終的には大阪までつながることになっているので、その計画が本格化すれば、もう一段、二段の上昇があるのではないでしょうか。金沢市も同様で、駅前を中心に再開発が行われており、インバウンドも増えているといわれています。
いずれにしても、これらの県であれば、さほどの投資額でなくても一定の資産価値の上昇が期待できそうです。
1000万円以下でマンションを買える県
価格の安さを重視するなら、1000万円前後で購入できる県もあります。図表2にあるように山梨県は70㎡価格が867万円と、全都道府県のなかで唯一1000万円を切っています。それでも前年同月比は12.3%の上昇で、(図表にはありませんが)10年前との騰落率は+18.4%となっています。図表2:中古マンション価格が安い県の70㎡換算価格と前年同月比 1000万円以下で購入できるのですから、騰落率がさほど高くないのも致し方のないところでしょう。二拠点居住に活用しながら、長い目で価値の上昇を期待するのがいいかもしれません。
一方で、70㎡価格が1261万円の山口県は前年比4.0%の低下ですし、10年前の価格は1328万円だったので、10年前に比べても下がっています。このように資産価値の上昇を期待しにくい県もあるので注意が必要です。
引用:「マンションレビュー」2025年6月 全国中古マンション相場推移 データ集(マンションレビュー)
文:山下 和之
住宅・不動産ジャーナリスト。新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトなどでの執筆・取材、セミナー講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『よくわかる不動産業界』『「家を買う。」その前に知っておきたいこと』(いずれも日本実業出版社)、『マイホーム購入 トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)、『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)など。