ライフキャリア

「配属ガチャに外れたから退職」ではもったいない。絶望がチャンスに変わる「3つのW」を見つけたい理由

入社後、希望通りの配属先になるか不安に思う新入社員は多い。「配属ガチャ」に外れて退職を考える社員もいるが、中長期的なキャリアを築く上で、まず今の配属先で見つけてほしい「3つのチャンス」を紹介する。※画像:PIXTA

小寺 良二

小寺 良二

ライフキャリア ガイド

ライフキャリアコンサルタント。米国の大学を卒業後、アクセンチュアを経てリクルートに入社し企業の採用・人材育成に携わる。2009年に独立後は「キャリア支援の専門家」として企業だけでなく大学や官公庁のプロジェクトに多数携わる。2021年に家族で沖縄県石垣島に移住。

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「配属ガチャ」の結果を気にする新入社員は多い ※画像:PIXTA

「配属ガチャ」の結果を気にする新入社員は多い ※画像:PIXTA

就活生にとっては第一志望の企業から内定を得ることが目の先のゴールであるが、その企業に入社後は希望する部署に配属されるかどうかが大きな懸念事項となる

特に部署によって仕事内容や関わる分野が異なる企業に入社した新入社員にとっては「配属ガチャ」に当たるか外れるかは、働くモチベーションに直結するだろう。

筆者は毎年某総合商社で新入社員研修の講師を担当しているが、配属先の発表前と後では、明らかに配属先が希望通りだった社員と希望がかなわなかった社員で状態に差が出る。

就活の面接で、その企業に入ってから何をやりたいのかを志望動機で熱く語った社員ほど、そのショックは大きい。中には配属先が希望通りではなかったことで退職の意志を示す社員もいる。

「総合職」という職種や部署の縛りのない職種で入社することが多い日本企業では、この「配属ガチャ」は新入社員に限らず、入社後何度も経験することになるので、希望通りでなかったからといってそのたびに退職を考えてしまうようではどの企業でも続かないだろう。

今回は中長期的にキャリアを築いていく上で、どの配属先になったとしても見つけてほしい3つのチャンスを紹介する。

キャリア形成の土台となる「3つのW」

実は筆者自身も、過去に「配属ガチャ」に大きく外れた経験がある。元々教育分野に興味があったので、リクルートに入社した際に希望していた部署は大学などに対して入学広報などを企画提案する「学び事業部」だった。しかし、実際に配属されたのは企業に対して求人広告の提案をする「HR事業部」であり、かつ勤務地も本社がある東京ではなく縁もゆかりもない名古屋支社であった。

大きく落ち込んだ記憶があるが、当時なんとかして自分を奮い立たせるために全く希望していなかった配属先に何かしら興味や成長のチャンスがないか探してみた。その時に意識した3つの視点は以下の通りだ。

1:What(職種・業務内容)

部署はどこであろうと、そこでどんな仕事をするのかが最も重要だ。筆者の場合は「営業」が希望だったので、それは学び事業でもHR事業でも変わらない。ただ扱う媒体や作る広告は、学び事業は大学の入試広報の広告(高校生向け)、 HR事業は企業の求人広告(リクナビなど求職者向け)で違いはあるので、HRの営業で何か面白そうな点や成長できそうな点がないか探した。逆に営業希望なのに、人事に配属されていたら、同じように人事の仕事の面白さや人事にしかできない経験を必死に探していたと思う。

2:Who(関わる社員・顧客)

部署によって、関わる社員や業務パートナー、顧客が変わる。配属先は希望通りでなくても、関わる人に興味や成長機会がある場合もある。筆者の場合は、学び事業では大学向けの営業なので大学の入試や広報担当者が顧客になるが、配属されたHR事業では企業の人事・採用担当者、また経営者に直接営業することもある。実はこの「仕事で経営者に会える」という点は、自分の中で魅力を感じ「もしかしたらHRの営業でも(の方が)成長できるかも」と思えるきっかけとなった。

3:Where(業界・部署・環境)

配属された部署が関わる業界や、社内での役割や位置付け、その環境だからこそ得られる経験にも目を向けていきたい。筆者は学び事業部を「教育業界に関わりたい」という思いで希望していたが、当時はまだ大学向けの事業は発展途上で社内での売上比率も小さかった。

逆にHR事業部の方が業界で長らくNo.1で売上も利益率も圧倒的に高く、社内でも稼ぎ頭の事業部だった。希望する業界ではないが「もしかすると自分を鍛えるには(社内で出世するには)いい環境なのかもしれない」と思うようになった。

「配属ガチャ」という偶発的な機会を自分のキャリアに生かそう

キャリアの分野で有名な理論の1つにスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ博士が提唱する「Planned Happenstance Theory(計画的偶発性理論)」がある。

「キャリアは計画だけで決まるものではない。偶発的な出来事をうまく活用していく能力が最も重要だ」

という理論である。「この企業に入社し、〇〇部署で、△△の仕事がしたい」というのは学生の立場で描くキャリアの計画だが、それが常に希望通りにかなうわけではい。その時に落ち込むのではなく、その偶発的に与えられた機会をうまく活用すべきということだ。

筆者自身も、残念ながらリクルートに入社してすぐには、教育分野で大学などの支援に携わる仕事をする機会は得られなかった。その点、配属ガチャは失敗した。しかし偶発的に配属されたHR事業部で、企業の採用を支援する仕事を経験する中で、採用する側の気持ちやニーズを理解したり、経営者と仕事をする機会も得た。

結果的にはその経験を生かして、個人のキャリア(自分に合う仕事や職場を見つける)支援の専門家となり、大学で学生にキャリアの授業をしたり、教職員の方々に研修をするようになった。遠回りだったかもしれないが、回り回って「教育分野に携わりたい」という希望はかなえることができた。これは本当に偶然だったかもしれないが、当時学び事業部に配属されなかったからといって退職していたら、このキャリアを構築するチャンスはなかった。

希望通りではなかったが、配属によって自分に偶発的に与えられた機会(What、Who、Where)を探し、生かしてみようと思ったことが今につながっている。

ぜひ「配属ガチャ」で自分に与えられたチャンスを見つけてみてほしい。

>次ページ:【実例】「3つのW」をもとに分析する配属先ごとのチャンス
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