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損しない不動産選び!2025年路線価から読み解く「資産性が高い街」5選

2025年7月、不動産市場の行方を占う指標の1つ「路線価」の最新版が発表されました。今年の路線価で注目すべき東京都心・近郊のエリアを5つ、株式会社さくら事務所の山本直彌氏が厳選して紹介します。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

2025年7月、不動産市場の行方を占う指標の1つ「路線価」の最新版が発表されました。今年の路線価で注目すべき東京都心・近郊のエリアを5つ、株式会社さくら事務所の山本直彌氏が厳選して紹介します。
<目次>

路線価とは?

路線価とは、主に相続税や贈与税を計算する際に使われる土地の評価額のことで、国税庁から発表されます。不動産の実勢価格の7~8割程度が目安とされ、不動産市場のリアルな動向を知るための指標としても注目されています。

今年の発表では都内は軒並み上昇という結果となり、まさしく現在の不動産市場の活況を映すものとなりました。こうした価格上昇を背景に、多くの方が「これだけ価格が上がっている中で、いったいどこを買えば後悔しないのだろう?」という切実な悩みを抱いているのではないでしょうか。

価格が上昇し続ける今、従来マンション選びの指標とされてきた「街の人気」や「駅からの距離」といった基本的な情報だけでは、将来本当に価値が上がる物件を見抜くことは難しくなっています。そこで、今年の路線価で注目すべき東京都心・近郊のエリアを5つ紹介します。

注目エリア①【中野・杉並・荻窪】都心高騰が生んだ相対的な割安感

まず注目したいのが、JR中央線沿線の中野、杉並、荻窪エリアです。これらは23区を区分した際の城西(じょうさい)エリアに当たります。

都内のエリア区分について、東京23区は皇居(旧江戸城)を中心に、おおむね4つのエリアに区分して語られることがあります(図1参照)。
図1:皇居を中心とした4つのエリア(筆者作成)

図1:皇居を中心とした4つのエリア(筆者作成)

・城南(じょうなん)エリア
品川区、目黒区、大田区など南側。高級住宅街が広がる。

・城西(じょうさい)エリア
新宿区、渋谷区、杉並区など西側。商業地と人気住宅街が混在。

・城北(じょうほく)エリア
文京区、豊島区、板橋区など北側。多様な住宅地が特徴。

・城東(じょうとう)エリア
台東区、江東区、足立区など東側。いわゆる下町エリア。

もともと人気の高いエリアながら、再度注目されている理由として、都心部の価格高騰が大きく影響しています。

例えば、湾岸エリアのタワーマンションでは、一昔前は坪単価300万円台で買えた物件が、今や1000万円を超える成約事例も出てきています。特に最近では、話題の晴海フラッグなども高額で取引されており、この価格高騰を象徴しています。

こうした状況で、都心に比べて相対的に価格が落ち着いて見える中央線沿線に、購入者の目が向いているのです。

新宿へのアクセスのよさはもちろん、エリアによっては丸ノ内線や西武線も利用できる交通利便性の高さも魅力です。

中野サンプラザ跡地の再開発は一時中止というニュースがありましたが、中野駅自体の開発は活発に行われており、街の将来性への期待感は依然として高く、その期待が周辺の街にも好影響を与えています。

注目エリア②【西新井】城東エリアの価値を塗り替える開発への期待

次に注目したいのが、城東エリアに位置する足立区の西新井駅(東武スカイツリーライン)です。近年、著しい人気上昇を見せる北千住の隣駅(急行等の利用時)という立地が、この街のポテンシャルを物語っています。

西新井の魅力は、何と言ってもその交通利便性の高さにあります。ターミナル駅である北千住で乗り換えれば、東京メトロ千代田線でビジネスの中心地・大手町へ、日比谷線で銀座へも乗り換えなしでアクセス可能です。都心から少し離れているという印象を覆すほどのスムーズな移動が、多くの人を惹きつけています。

さらに、駅西口では新たな再開発も予定されており、将来性への期待も高まっています。都心に比べてまだ手頃な価格帯でありながら、高い利便性と将来性を両立している点こそが、セカンドベストの選択肢を探す人々のニーズと合致し、その人気を確固たるものにしていると言えるでしょう。

注目エリア③【小岩】大規模開発が生む街の変貌

3つ目に紹介するのは、同じく城東エリアに位置する江戸川区のJR小岩駅です。かつての下町のイメージを抱いて駅に降り立つと、建設中のタワーマンション群を目にし、その変貌ぶりに驚くでしょう。

それもそのはず、現在の小岩は駅の北口と南口の両方で大規模な再開発が同時進行中。新たなランドマークとなるタワーマンションが生まれれば、周辺の不動産価格を押し上げる効果も期待されます。

JR総武線を使えば錦糸町や秋葉原といった拠点へも出やすく、交通利便性も申し分ありません。再開発による未来への期待感と、今なお残る商店街の温かい雰囲気が同居する、そのダイナミズムこそが小岩の最大の魅力となっています。

注目エリア④【調布】ライバル路線の価格高騰が追い風に

4つ目は、これまで紹介したエリアからは少し西側に位置する調布駅(京王線)です。23区外の多摩地区になりますが、地理的には城西エリアの延長線上にあります。

調布を通る私鉄の京王線は、長年ライバルとされてきたJR中央線に人気・価格ともに一歩譲る状況でした。しかし、その中央線沿線の価格が高騰したことで、本来中央線で探していた層が、調布に目を向けるようになっています。

特急停車駅のため新宿までは約20分ですし、明大前で井の頭線に乗り換えれば渋谷へも20分で到着するなど、交通アクセスに優れているのも特徴。きれいに整備された駅前はファミリー層にも暮らしやすく、少し足をのばせば緑豊かな自然も身近にあります。

都心へのアクセスと穏やかな住環境、この2つを高いレベルで両立させている点が、調布ならではの強みです。

注目エリア⑤【相模大野】価格上昇の波、ついに国道16号へ

最後に紹介するのは、都心から始まった価格上昇の波がついに到達したことを示す象徴的な街、神奈川県相模原市の相模大野駅(小田急線)です。このエリアが注目される理由の1つに、国道16号線との位置関係があります。

不動産業界ではこの国道16号線の内側か外側かで、資産価値が大きく変わると言われてきました。その境界線上に位置する相模大野の路線価が上昇しているという事実は、都心部で家を探していた人々のニーズが、いよいよここまで広がってきたことを示唆しています。

もともと駅周辺は商業施設や大学、公園などがそろう暮らしやすい街でしたが、現在進行中の大規模な再開発が、その将来性をさらに高めています。

小田急線の快速急行停車駅で新宿まで約40分なのはもちろん、下北沢で京王井の頭線に乗り換えれば渋谷方面へのアクセスもよく、その高い交通利便性もエリアの価値を押し上げる一因となっています。

路線価が示す、これからの価値ある街の共通点

今回の路線価の発表は、まさしく現在の不動産市場の活況を映すデータとなりました。その中で見えてきた、これからのマンション選びの重要なヒントは2つあります。

1つは、価格上昇の「波及」です。都心部の価格高騰は、ひらがなの「の」の字を描くように周辺エリアへと広がっています。特に、これまで比較的価格が落ち着いていた浅草や北千住といった城東エリアの著しい伸びは、ニーズが都心から周辺にも移っていることを表す流れです。

そして、もう1つの最も重要なキーワードが「再開発」です。今回ご紹介したエリアのように、路線価の上昇率が高い街の多くで駅周辺の再開発が予定されています。再開発は街の利便性や魅力を劇的に向上させ、周辺の不動産価値全体を押し上げる起爆剤となるからです。

都心から周辺へ価格の波及が続く中で本当に注目すべきは、再開発によって街にどれだけの「伸びしろ」があるか、その見極めが重要になってきます。今回ご紹介した5つのエリアは、その未来への期待値が路線価の数字に表れ始めた好例と言えます。

これからのマンション選びは、現在の人気だけでなく、未来の街の姿を読み解く先見性が何よりも求められます。

 
株式会社さくら事務所・副社長 COO 山本氏

株式会社さくら事務所・取締役副社長 COO 山本氏

株式会社さくら事務所・取締役副社長 COO 山本直彌
マンション・ビル管理、不動産仲介の経験を経て、マンション管理コンサルタント・不動産エージェントの業務に従事。これまでに50棟を超えるマンション管理フロント業務、500件以上の不動産仲介を経験。2020年4月 株式会社さくら事務所へ参画。2025年にさくら事務所・取締役副社長COO、同年、グループ会社のらくだ不動産株式会社・取締役副社長COOに就任。自身が取材協力した「マンションバブル41の落とし穴」(小学館)が発売中。


 
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