本記事では住宅・不動産ジャーナリストの山下和之氏が、資産価値が高まるマンションの条件として各種設備、管理サービスを取り上げます。
<目次>
クルマの出し入れは「バレーサービス」に
マンションの共用部が充実していれば、住んでいる人にとっては満足感が高まり、自分たちのマンションにプライドを持てます。訪問者は憧れのまなざしを向けるようになり、マンションの評価が高まるでしょう。資産価値の高いマンションでは、エントランスは2層、3層分の吹き抜けで開放感のある、ラグジュアリーホテルのような空間が形成されています。レセプションスペースがあれば、住民同士のコミュニケーションの場になり、富裕層の交流、社交の場になります。
高額マンションでは、コンシェルジュカウンターが設けられ、2カ国語、3カ国語対応が可能ですし、コンシェルジュが入館者をチエックし、住人管理が行われます。機械管理だと、住人の後についていけば入館できますが、コンシェルジュがいれば外部の人間の出入りを厳しく見張り、外部の人間は簡単には出入りできません。
さらに、クルマの車庫入れなどを行ってくれるバレーサービスのあるマンションでは、玄関で担当者が「○○さま、お帰りなさいませ」と迎えてくれるでしょう。
有能なスタッフなら、住民のクルマ、顔と名前を憶えていてくれるので、ホッとしますし、安心感があります。キャノピー(車寄せの庇)でクルマを降りてキーを渡せば、車庫に入れてくれ、外出時にはエントランスまでクルマを出してくれます。
住民同士の交流が進む……豪華共有部
高額マンションにはフイットネスジムがあり、大規模な物件であればプールが設置されています。健康によいのは言うまでもありませんが、水遊びや水泳を楽しむための設備、スタッフがそろい、家族や友人とプールでゆったりとした時間を過ごせるでしょう。専任のスタッフが個別の指導やアドバイスしてくれ、外部のジムに行くまでもなく、マンション内で健康管理ができます。
そのほかカラオケや映像を楽しむ各種スタジオ、キッズスペース、ワークスペースなどがあれば、ライフスタイルに応じて利用できますし、住人同士の交流の場になります。
高額マンションであれば、高額所得者、富裕層が多いもの。そうした人たちと交流が進めば、公私ともに人脈としてつながりを広げられ、プライベートだけではなく、ビジネス面でも役立つことが多いのではないでしょうか。高額マンションに住むメリットとしてその点を挙げる人は少なくありません。
そうした施設を利用することで生活が充実しますし、住民の交流が進み、住みやすいマンションになります。また、外部からやってきた人も豪華で充実した設備や管理サービスを見ることで評価が高まり、マンションの資産価値の向上につながるのではないでしょうか。
「キッズルーム」や「ワークスペース」の必要性は個々による?
ただ共用施設は、人によって好みがありますし、ライフスタイルによっては必要としないものもあるでしょう。その典型がキッズルームです。小さな子どもが多いマンションには有意義ですが、高額マンションで、子どもの少ないマンションには必要ないかもしれません。不要になったからといって用途を変更するのは簡単ではないので、要注意です。
ワークスペースも、コロナ禍で設置するマンションが増えましたが、高額マンションだとさほどニーズはないかもしれません。ワークスペースではなく、ライブラリースペースなど、汎用性の高いスペースとして利用度が高まるような空間になっているほうがいいかもしれません。
共有部に「何があればいい」という決まりはありません。資産価値の高いマンションにはどんな共用施設があるのか、管理サービスはどうなっているのか、実際に実物を見て、見る目を養っておくのがいいでしょう。
食洗機はドイツ製「ミーレ」が当たり前に
専有部の内容も大切です。高額マンションならではの設備があれば、資産価値の維持、向上には重要な要素になります。まず不可欠なのがリビングの広さ。高額マンションであれば最低でも20畳は必要でしょう。専有面積にもよりますが、30畳から40畳程度あれば、高額所得者、富裕層が好むホームパーティーを開催することも可能になります。
キッチンスペースもゆったりとしていて、最近の高額マンションではアイランド型のキッチンが増えています。家族やお客もキッチンに入って一緒に調理できるようになっていればなお可、といったところでしょうか。
水回りでは、ビルトインが当たり前になっているのが食洗機です。それも国産の小型ではなくミーレなどの大型が欠かせません。家族数は少なくても、来客が多いこともあり、洗う食器が多く、強い洗浄力が求められます。目が肥えた人だと、国産メーカーの製品には満足できない人が少なくありません。
トイレは、家族用と来客用の複数が最低条件
天井高は、一般的なマンションでは2.4mから2.5mが標準ですが、高額で、資産価値の高いマンションでは2.6m、2.7mはほしいところ。最上階のプレミアム住戸では3.0mのマンションもあります。天井高の違いが住まいを広く感じさせ、開放感を高めます。天井や壁をスッキリさせるためには。天井のカセット型エアコンが有効。天井高と相まって、各部屋をより広く、開放的に感じさせます。
収納も大切です。玄関にはシューズインクローゼットが不可欠になっています。靴のまま入れるクローゼットで、ゴルフバッグを収納できる高さが必要です。各居室にも収納があって、適材適所に収納できるようになっていれば、いつでも室内をスッキリできます。
そのほか、できればトイレは家族用と来客用の複数設置され、クルマ椅子と介助者が入れるような広さがあれば安心感が高まるでしょう。
洗面所は、複数人が同時に身支度できるようになっているのが便利です。バスタブについても、大人がゆったりと足を伸ばせる広さがあり、大きなヘッドから水やお湯が出てくるレインシャワーがついていれば評価が高まります。
以上のような点は、実際にいくつか高額物件を見て、見る目を養うことが大切です。慣れていないと、豪華さに圧倒されて、判断が狂ってしまいます。資産価値の高いマンションを見極めるためには、豪華さに惑わされないためにも慣れが必要なので、できるだけ多くの高額物件を見ておきたいものです。
文:山下 和之
住宅・不動産ジャーナリスト。新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトなどでの執筆・取材、セミナー講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『よくわかる不動産業界』『「家を買う。」その前に知っておきたいこと』(いずれも日本実業出版社)、『マイホーム購入 トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)、『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)など。