家計簿・家計管理

井原西鶴が語る!貧乏病に苦しむ人への「処方箋」と「16のやめたほうがいいこと」

井原西鶴は日本初の経済小説『日本永代蔵』で、貧乏から抜け出す「長者丸」の処方箋と、浪費を防ぐ「16の禁忌事項」を説きました。時間の使い方と節約の大切さは、現代の「投資の元手づくり」にも通じる普遍的な教えです。※サムネイル画像出典:PIXTA

All About 編集部

江戸時代を代表する作家・井原西鶴が唱えたお金を貯める方法とは?(画像出典:PIXTA)

江戸時代を代表する作家・井原西鶴が唱えたお金を貯める方法とは?(画像出典:PIXTA)

投資には、まず「元手」が必要です。

バートン・マルキールとチャールズ・エリスの共著『投資の大原則』の冒頭にも「投資資金がないことには、リターンが2パーセントだの、5パーセントだの、10パーセントだのといっても始まらない」と説かれています。

生活に追われる読者の中には、投資が大切なことは理解しているけれども元手がなかなか貯まらない、という方も多いのではないでしょうか。

貧乏病に苦しむ人へ!井原西鶴が唱えた「お金の貯まる処方箋」とは?

江戸時代前期を代表する作家の井原西鶴(いはらさいかく/1642年~1693年)はわが国初の経済小説とされる『日本永代蔵』において、貧乏病に苦しむ人へ「長者丸(ちょうじゃがん)」という薬の処方箋を提示しました。

「△早起き5両、△家業20両、△夜業8両、△倹約10両、△達者7両……この50両の薬を細かく砕いて粉にし、……これを朝晩飲み込んだら、長者にならないということはありますまい」(出所:新版 日本永代蔵 現代語訳付き、井原西鶴、堀切実訳注)

というものです。この内容を「お金を貯めるための時間配分」と考えてグラフ化すると以下のようになります。
 
貧乏病に苦しむ人への「長者丸」という薬の処方箋(図版は筆者作成)

貧乏病に苦しむ人への「長者丸」という薬の処方箋(図版は筆者作成)

早出・残業は現代で言えば副業と捉えることもできるでしょう。つまり、起きている時間の3分の2は仕事に使い、お金を稼ぎましょうということです。

注目されるのは健康にも14%くらい留意すべきということでしょう。健康でなければきちんと働けませんし、医療費もかかってしまいます。「日本永代蔵」は300年以上前に書かれたものですが、現代においてもそのまま当てはまる絶妙なバランスになっていることは驚くばかりです。

もっと大事な16の禁忌事項。現代ではどんな行動を回避したらいいの?

西鶴はこの“長者丸”の処方よりもさらに重要なこととして、「16のやめるべき行動=禁忌事項」を挙げています。一見すると節約の具体的な項目のようですが、処方箋に書かれている「節約」は時間を費やして工夫する項目、「禁忌事項」は単純にお金の流出を防ぐために回避すべきこと、と考えるのが適切です。

■井原西鶴が禁忌とする事項(堀切実訳)と、現代で該当すると思われる事柄
①美食と好色と、絹物を不断着にすること……グルメ、風俗、着道楽

②女房を乗物にのせて贅沢をさせ、娘に琴・歌がるたをさせること……車、子どもの音楽教室やカードゲーム

③息子に鼓や大鼓など種々の遊芸を習わせること……子どもの音楽教室や習い事

④蹴鞠・楊弓・香会・連歌・俳諧に耽ること……サッカー、ダーツ、アロマ、カラオケ

⑤座敷普請・茶の湯……道楽家のリフォーム、お茶会

⑥花見・舟遊び・昼風呂入り……花見、クルーズ、昼風呂

⑦夜歩き・博奕・碁・双六……ギャンブル、対戦ゲーム

⑧町人に無用な居合・剣術……サバイバルゲーム

⑨寺社参詣・後世の安楽を願う心……宗教団体への寄付

⑩諸事の仲裁と保証の判をおすこと……連帯保証人になること

⑪新田開発の出願と鉱山事業にかかわること……リスクの高い出資をすること

⑫食事のときの飲酒・煙草好き・目的のない京上り……飲酒、タバコ、旅行

⑬勧進相撲の資本主になること・奉加帳の世話役……クラウドファンディングへの参加

⑭家業のほかの小細工、金で刀の目貫を装飾してひけらかすこと……アクセサリーで身を飾ること

⑮役者に見知られ、揚屋と近づきになること……ファンクラブ、キャバクラ、ホストクラブ通い

⑯月八厘より高い利息の借金……年率9.6%を超える借金を指すが、金利水準が江戸時代と現代では異なるので、借金全般(カードローン・住宅ローンなど)が該当する

ここまで禁止すると生活の潤いもなくなってしまいますが、投資のための最初の「元手」を生み出すためには、このくらい我慢しても損はないと筆者は考えるものです。

自分へのご褒美は投資を開始してからでも遅くはありません。

井原西鶴の教えを実践してお金持ちになった!無一文だった箸屋甚兵衛

西鶴によると、この教えを40歳で知った箸屋甚兵衛という者は、無一文の境遇からスタートし、日本橋で道行く人々を観察していたところ、大工見習が木くずを道に落としているのに気付き、それを拾って転売したり箸(はし)に加工したりすることで財を築いたそうです。

ついには大きな材木屋を経営し、節約生活を続けていましたが、70歳を越えたところでようやくぜいたくを始め、亡くなったときには盛大な葬式が挙行されたそうです。西鶴は、「若いころにはお金を貯め、年を取ってから使うのが大事で、あの世には持っていけないものの、この世で生きていくには欠かせないのがお金である」、とまとめています。

現代に生きる私たちは、まずは仕事、そして節約。これで投資の元手をつくり、豊かな老後を目指したいものです。

教えてくれたのは……
陣場 隆(じんば たかし)さん


京都大学法学部卒業、ペンシルベニア大学ウォートン校MBA、三井信託銀行入社、国際金融部、国際企画部、融資企画部付、年金企画部、年金資金運用研究センター出向、三井アセット信託銀行公的年金運用部次長、証券営業部次長などを経て2006年末に同社退社。2007年より年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に勤務。調査室副室長、運用部長、調査数理室長を経て2020年定年退職。GPIF勤務の13年間で、運用機関構成の決定や基本ポートフォリオの策定を統括した。GPIFを定年退職後「今を生きる若い人たちに向けて年長者の知恵を伝えたい」という気持ちが強くなってきたため、執筆活動を開始
 
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