資産運用

業績が安定している「高配当株」を買う場合の注意点を教えてください

皆さんから寄せられた投資にまつわるさまざまな疑問や悩みに、なかのアセットマネジメントの中野晴啓さんと、日本経済新聞社の田村正之さんが答えてくださいました。今回は「業績が安定している高配当株を買う場合の注意点」についてです。

All About 編集部

皆さんから寄せられた投資にまつわるさまざまな疑問や悩みに、なかのアセットマネジメントの中野晴啓さんと、日本経済新聞社の田村正之さんが答えてくださいました。今回は、NISA枠で高配当株の購入を検討している方からの質問です。

Q. 長期保有を前提に経営が安定している高配当株を購入する場合、注意点などはありますか?

「最近、株価下落で配当利回りが4%以上の銘柄が増えました。NISA枠で長期保有を前提に、経営が安定した高配当銘柄の購入をもくろんでいます。注意点などもあれば教えてください」(カモネギさん/57歳)

<金融資産>現金預金:2000万円、リスク資産:7000万円

A. ただ配当利回りが高いからという理由だけで判断しないこと

中野:リスク資産が7000万円もあれば、配当収入をインカムゲインとして活用しながら、安定したキャッシュフローで生活を支えたい――そんなふうに考えていらっしゃるのかもしれません。

けれど、「経営が安定していて高配当の銘柄」というのは、それほど簡単に見つかるものではありません。一般に高配当株というのは、企業の事業がすでに成熟し、成長性があまり期待できないケースが多いです。

そうした企業は、内部留保を多く抱えていて、そのぶん配当を多く出せる。だから高配当になるわけですが、株価の成長余地は限られています。特に、相場が回復し始めた局面では、そういった銘柄は株価の上昇に取り残されがちです。ですから、高配当株を持つということは、株価の値上がりはある程度諦めて、安定的なインカムを重視するというスタンスになります。

それに、株価が下がれば当然、利回りは一時的に上がります。でもそれが「本当に割安なのかどうか」は、何とも言えません。

田村:そうですね。NISAの新制度が始まってから、高配当株がやたらと注目されるようになりました。でも、高配当株というのは、基本的に設備投資などの成長に資金を回していない、成熟企業が多いんですよね。だからこそ配当を多く出せるわけですが、そのぶん成長性では見劣りする場合が多いです。

また、高配当株は業種的にもかなり偏っていることが多いので、トータルリターン(=配当+株価上昇)で本当に有利なのかどうかは、個人的には少し疑問に感じています。

大切なのは、「ただ配当利回りが高いから」という理由だけで飛び付かずに、その企業が「なぜ高配当なのか」をしっかり見ることです。例えば、株価が下がったことで一時的に利回りが高く見えるだけかもしれませんしね。連続増配の実績があるか、経営が安定しているかなど、長期的な視点で見極める必要があると思います。

※本記事の内容は、2025年4月23日に公式YouTubeチャンネル「All About マネー」で配信された内容に基に作成しています。

回答してくれたのは……

中野晴啓(なかの・はるひろ)なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長。
元セゾン投信創業者。長年にわたり「長期・分散・積立」投資を提唱し、日本の個人投資家に向けた資産形成の啓発に尽力。2023年、なかのアセットマネジメントを設立し、個人投資家本位の資産運用をさらに追求している。温かく率直な語り口と、実直な投資哲学に定評がある。著書に『ほったらかし投資はやめなさい』(宝島社)など、資産運用に関する書籍を多数執筆。

田村正之(たむら・まさゆき)日本経済新聞 編集委員。
金融・経済分野を中心に、個人の資産形成やマネーリテラシーに関する記事を多数執筆。分かりやすく実践的なアドバイスに定評があり、多くの読者から信頼を集めている。各種メディアや講演活動などでも活躍し、生活者目線の情報発信を続けている。著書に『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP日本経済新聞出版)など、他多数。

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