資産運用

トランプショックで資産が数千万円減りました。保有株を売却するべきでしょうか?

皆さんから寄せられた投資にまつわるさまざまな疑問や悩みに、なかのアセットマネジメントの中野晴啓さんと、日本経済新聞社の田村正之さんが答えてくださいました。今回は「資産が数千万円減ってしまった場合、保有株を売却するべきか」についてです。

All About 編集部

皆さんから寄せられた投資にまつわるさまざまな疑問や悩みに、なかのアセットマネジメントの中野晴啓さんと、日本経済新聞社の田村正之さんが答えてくださいました。今回は、「数千万近く資産が減ってしまったため、保有している株を売却するか悩んでいる」という方からの相談です。

Q. 資産が数千万円減りました。それでも売却せずに持ち続けるべきでしょうか?

「トランプショックで資産が数千万円減りました。これまで同様、売却は全くせずに、いつかおさまると考えて様子を見ています。これまでも、コロナ禍の場合でもこのスタンスで乗り切ってきました。ただ、今回はさらに落ち込みがあるかもしれないと不安です。思い切って半分ほど売却したほうがいいのか迷っています」(定年初心者さん/62歳)

<金融資産>現金預金2400万円、リスク資産2500万円

A. 現金が十分にあるので、慌ててリスク資産を手放す必要はないのでは

中野:ご相談者も還暦を越え、お金についてもこれまでとは違う観点で考え始めているのかもしれません。とはいえ、まだ60代ですし、これからの時間をしっかりと活用していただきたいですね。

田村:そうですね。実はこんなデータがあります。次の表は、リーマン・ショックが起きた2008年9月の直前、同年8月からの株価の推移を円ベースで示したものです。黒い実線は全世界株の動きですが、リーマン・ショック前の水準に戻るまでには約4年半かかっています。※円ベースの動き
 
株価と資産額の推移

リーマンショック直前からの全世界株や4資産分散型投資信託の株価と、リーマンショック直前から積立投資をした場合の資産推移


もう少し前、高値だった時期も含めた金融危機全体として見ると、大体5年ちょっとで元の水準に戻っています。つまり、「100年に一度」と言われたような大規模なショックでも、5年程度のスパンがあれば回復しているということです。ですから、そのくらいの間に必要なお金を現金で確保できていれば、慌てて資産を売る必要はないと思います。

そして、表下の水色部分は、リーマン・ショック前から価格が回復した4年半後まで、ずっと積立投資を続けていた場合の総投資額、下の緑の実線と赤い点線がそれぞれの資産額の推移を示しています。

つまり、積立投資をしていると、株価が安いときにたくさんの口数を買えます。その結果、株価が元に戻った時点で、すでに資産は積立額よりも約4割増えていたわけです。「暴落は永遠に続かない」ということ、そして「安いときに積立を続けていれば、リターンを得られる」という過去のデータを、ぜひ知っておいていただきたいですね。

中野:ご相談者は、「大きく資産が減った」と感じているかもしれませんが、それはあくまで“数字”が下がっているだけで、実際に損をしたわけではないのです。重要なのは、これからどれだけ時間的な忍耐力を持てるかどうかです。

まだ60代ですし、十分に時間はあります。田村さんがおっしゃるように、元に戻るのに何十年も必要ではありません。リーマン・ショックのときでも、5年くらいで元に戻ったわけですから。

ただ、「もう一度さらに落ち込みがあるかもしれない」という、ご相談者のコメントは、私もそう思います。これからのマーケットは、トランプ氏の一挙手一投足に振り回されるというよりも、彼の政策が実体経済にどんな影響を及ぼすのか。

その結果として、景気の減速やリセッション(景気後退)を想定し、マーケットが調整に動くと思います。そうなると、「適正価格」がどこかは分かりませんが、もう一段下がる可能性も視野に入れておく必要はあると思います。

ご相談者は、資産の半分を現金で持ち、残り半分を投資に回されている点が素晴らしいと思います。60歳を過ぎた方の資産配分として、理想的な形ではないでしょうか。お金を使うときも、現金と投資の両方から柔軟に対応できますし、今の状況においてはとてもいい資産バランスだと思います。

田村:そうですね。これだけ現金を持っていれば、相場が下がったときにも、無理に株を売らずに済みますよね。

※本記事の内容は、2025年4月23日に公式YouTubeチャンネル「All About マネー」で配信された内容に基に作成しています。

回答してくれたのは……

中野晴啓(なかの・はるひろ)なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長。
元セゾン投信創業者。長年にわたり「長期・分散・積立」投資を提唱し、日本の個人投資家に向けた資産形成の啓発に尽力。2023年、なかのアセットマネジメントを設立し、個人投資家本位の資産運用をさらに追求している。温かく率直な語り口と、実直な投資哲学に定評がある。著書に『ほったらかし投資はやめなさい』(宝島社)など、資産運用に関する書籍を多数執筆。

田村正之(たむら・まさゆき)日本経済新聞 編集委員。
金融・経済分野を中心に、個人の資産形成やマネーリテラシーに関する記事を多数執筆。分かりやすく実践的なアドバイスに定評があり、多くの読者から信頼を集めている。各種メディアや講演活動などでも活躍し、生活者目線の情報発信を続けている。著書に『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP日本経済新聞出版)など、他多数。

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