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首都圏なら「駅徒歩5分以内」がやっぱり強い!マンション資産価値の分かれ目

マンションの最寄り駅からの徒歩時間は、入居後の生活利便性を左右するだけではなく、資産価値に決定的な影響を与えます。本記事では住宅・不動産ジャーナリストの山下和之氏が、資産価値を重視するマンション選びのヒントをお届けします。​​​​​※サムネイル画像出典:まちゃー/PIXTA(ピクスタ)

All About 編集部

マンションの最寄り駅からの徒歩時間は、入居後の生活利便性を左右するだけではなく、資産価値に決定的な影響を与えます。ことに首都圏では、駅前開発が進んだ結果、徒歩時間の短い場所での新築マンションの開発が難しくなっていて、駅近マンションの希少性が高まっています。

それだけに、駅近マンションであれば、購入後の資産価値の上昇が期待できるのではないでしょうか。本記事では住宅・不動産ジャーナリストの山下和之氏が、資産価値を重視するマンション選びのヒントをお届けします。

首都圏マンションでは、徒歩5分が一番多い

不動産専門のデータバンクである東京カンテイでは、マンションと戸建住宅の最寄り駅からの徒歩時間を調査しており、マンションと戸建住宅でどう違っているのか比較できるようになっています。

図表1は首都圏の新築マンションと戸建住宅を比較したグラフになります。
東京カンテイ「首都圏新築一戸建てと新築マンションの比較」をもとに筆者作成

東京カンテイ「首都圏新築一戸建てと新築マンションの比較」をもとに筆者作成

2024年に首都圏で販売された新築マンションは2万6562戸で、徒歩時間を1分刻みに分けると、最も多かったのは「徒歩5分」の3468戸で、新築全体の2万6562戸の約13.1%を占めます。徒歩5分以内の合計は1万700件ですから全体の約4割に達しています。

それに対して戸建住宅は徒歩5分以内の割合は5.5%にとどまり、徒歩15分が最も多く、3995戸と4000戸近くに達しています。15分を過ぎても、20分まで2500戸以上が続き、マンションとは大きく異なっています。戸建住宅なら徒歩10分以上は当たり前で、徒歩15分、20分がふつうということでしょう。

首都圏の駅近の条件は「徒歩5分」以内?

首都圏では徒歩5分が最も多いこともあり、徒歩5分までを「駅近」と呼んでもいいのではないでしょうか。さらに徒歩10分程度までが、マンションにおける徒歩圏と言っていいでしょう。ちなみに、不動産広告では、徒歩1分は80mと定められています。つまり、徒歩5分は400m以内、徒歩10分は800m以内ということになります。

資産価値を重視するなら徒歩5分以内、間違っても徒歩10分超のマンションには手を出さないことです。

ただこの徒歩時間の実情は、都市圏によって異なります。近畿圏では、徒歩3分が最も多くなっています。徒歩3分が1843戸で、次いで徒歩2分が1357戸、徒歩4分が1062戸でした。その後徒歩5分から10分までは1000戸前後となっています。首都圏に比べるとおおむね2分ほど短くなっているとみてよさそうです。

中部圏でも近畿圏と同様に徒歩3分が最も多く、次いで徒歩6分、徒歩5分と少しバラけています。都市圏によって徒歩時間を巡る環境は多少異なっているので注意が必要です。

駅近立地のマンションが減る傾向に

都市圏による違いがあるとはいっても、マンションは徒歩5分以内が多く、長くても10分で、それ以上になるとバタッと売れなくなるという点は共通しています。それは新築分譲時だけではありません。中古住宅になってからも続きます。

購入後の資産価値の向上を期待するのであれば、徒歩5分以内のマンションを買っておくことが大切です。近畿圏や中部圏では、それが徒歩3分以内になると言っていいでしょう。資産価値を重視するのであれば、徹底的に徒歩時間にこだわってください。

これからはその傾向が一層強まる可能性があります。というのも、近年では、マンション分譲を行うデベロッパーにとって、主要都市の駅前、駅近でマンション用地を取得することが大変難しくなっているからです。

大都市圏では、開発が隅々にまでおよび、新たにマンションに適した用地がなかなか出てこないようになっています。まれに出てきても、各種商業施設のデベロッパー、ホテルの開発業者などとの競合になり入札が行われます。そうすると、マンションデベロッパーは、インバウンドで活気づいているホテル業者に入札で負けることが多く、駅近立地のマンション用地を確保できなくなっているのです。

そのため、図表2にあるように徒歩「3分以内」の物件の割合が減少しており、徒歩「4~7分」の割合が高まっています。ジワリと徒歩時間が長くなる傾向にあると言っていいでしょう。
東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2023」をもとに筆者作成

東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2023」をもとに筆者作成

それだけ、駅近立地のマンションの希少性が高いわけで、そんなマンションが出れば迷わず買いですが、残念ながら価格が高い上に希望者が殺到、抽選になることが多いので、買えるかどうかは難しいところです。

中古なら駅前や駅近でも探せる可能性

そこで注目しておきたいのが中古マンションです。中古マンションの最大のメリットは、新築に比べての割安感でしたが、中古価格も新築同様、あるいは新築以上に上昇して割安感が失われつつあります。

それでも、新築ではなかなか出会えないような立地の物件に出会える可能性があるのは、中古ならではの魅力。

先に触れたように新築は立地の優れたマンションの開発が難しくなっていて、利便性の高いエリアの駅近立地マンションを探しにくくなっています。まして、希望するエリアが限定されていれば、なおさら希望に合うマンションは簡単には見つかりません。

中古であれば、いつでもどこでも希望に合うマンションを探せます。実際、中古マンションを選んだ理由(複数回答可)をみると、図表3にあるようにトップは「価格が適切だったから」の59.5%ですが、そのポイントは2021年には67.1%だったのが、2022年は64.4%、2023年は63.1%、そして2024年59.5%と減少しています。
国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」をもとに筆者作成

国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」をもとに筆者作成

代わって、「住宅の立地環境が良かったから」「交通の利便性が良かったから」が多くなっています。新築マンションでは、希望の場所に物件を見つけるのが難しくなっていても、中古なら見つけられる可能性が高く、価格高騰、新築マンションの供給数減少の中だけに、なおさら中古マンションへの注目度が高まりそうです。

駅近マンションなら資産価値上昇が期待できる

最寄り駅からの徒歩時間の重要性は、不動産のプロも認めています。

不動産情報サービスのアットホームが、マンションの売買に携わっている仲介会社の担当者に対して、「資産価値の高いマンションを見極めるポイント」を聞いたところ(複数回答可)、設備面では「管理状況」が67.0%のトップでしたが、周辺環境面では、「最寄り駅との距離」が72.8%の1位でした。2位の「周辺環境の充実性(スーパーマーケットやコンビニなど)」の51.5%に20ポイント以上の差をつけています。

入居後の生活の利便性だけではなく、資産性を考えた場合にも、徒歩時間のチェックが大変重要なので注目しておきたいところです。

文:山下 和之
住宅・不動産ジャーナリスト。新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトなどでの執筆・取材、セミナー講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『よくわかる不動産業界』『「家を買う。」その前に知っておきたいこと』(いずれも日本実業出版社)、『マイホーム購入 トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)、『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)など。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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