資産運用

医業の傍ら、投資情報を発信して各地で交流「投資は“プライスレス”な財産をもたらしました」

投資で資産を倍増させ、勤務医からフリーランスの医師+投資家に転身した関西在住の医師・Kさん。現在の生活ぶりや後輩医師へのアドバイスを伺いました。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

医師の勉強会イメージ

フリーランスの医師で投資家のKさんに、現在の生活ぶりや後輩医師へのアドバイスを伺いました ※画像:PIXTA

医師をはじめ、多忙なビジネスパーソンにとっては仕事が第一で、お金の管理は二の次、三の次になりがちです。しかし、資産をどのように管理し、増やしていくかによって、その後の人生が大きく変わることもあります。そこで、実際に投資で資産を倍増させ、勤務医からフリーランスの医師+投資家に転身した関西在住の医師・Kさん(35歳)にインタビュー。今回は、現在の生活ぶりや後輩医師へのアドバイスを伺いました(全4回の4回目)。

正しい情報を伝えることの大切さを感じて発信

Kさんのアイコン

Kさん

Kさんは2020年5月から投資を始め、約2年後には配当収入で生活できるまでになりました。その後、過労で体調を崩したのをきっかけに、2023年に勤務医を退職。以来、フリーの医師と投資家という“二刀流”生活を続けています。 「今は週1回の非常勤の外来勤務に加え、単発で複数のクリニックで診察し、それ以外の時間は投資活動や趣味に充てています。毎朝、経済新聞やニュースサイトで最新情報をチェックしてSNSで発信するほか、オンラインコミュニティーで投資仲間と交流しています」

きっかけとなったのは、投資を勉強する際によく見たサイト「リベラルアーツ大学」で発信することの重要性を知り、その手段を得たことでした。

「新型コロナウイルスのパンデミックでは、医療者が正しい情報を持っていても世間に伝えることが難しく、その結果誤った判断が下されることがありました。その際、正しい知識や情報を持っていることと同じくらい、それを伝える発信力の大切さを痛感したので、ぜひ自分でやってみようと思いました」

そこで、雑談の場で長期投資の重要性を説明したり、質問に答えたりしたところ、交流が広がって勉強会を開くようになりました。今では各地で月1~2回勉強会を開催するほか、セミナーに呼ばれて講演することもあるそうです。

「いろんな方とお会いするのがとにかく楽しいんです。リモートより直接お話しするほうがコミュニケーションを取りやすいので、趣味(旅行)も兼ねてあちこち巡っています。勉強会は以前から病院で後輩医師向けによくやっていましたし、私はどうやら“専門的で難しい情報を初心者に分かりやすく教える”スキルに長けているようです。これはおそらく患者さんへの説明を繰り返す中で磨かれたもので、参加した方から感謝されると“やってきて本当によかったな”とやりがいを感じます」

10年分の業績や株価をチェックして投資

最近のKさんの運用方針は、あくまでも長期での運用。株式投資では、長い目で見て安定的した利益が生み続けられるビジネスを展開する企業を選んでいます。

「10年分の財務諸表に目を通し、EPS(1株当たり利益)や自己資本比率、配当性向などの主要指標をチェックします。もっぱら企業業績などの分析のみで、チャート分析はしません。ただ、過去10年間のPER(株価収益率)を見て、できるだけ下限に近いところで買うようにしています。以前はクオカードなどの株主優待に惹かれて買うこともありましたが、株価下落でかえって高くつくこともあるので、今は優待目的では買いません」

資産運用によってすでに配当収入で生活し、含み益も数千万円出ている状態ですが、投資を始めてから大きな買い物をしたとか、生活が派手になったとか、消費行動への影響は特にないそうです。

「もともと物欲がなく質素倹約の生活だったので、お金が増えても急に金遣いが荒くなったりはしていません。むしろ投資を始めてからは、資産の保有で収集欲や物欲が満たされるのか、またストレスフリーな生活で浪費しなくても日々幸せを感じるせいか、ますます物欲がなくなっている感じです(笑)。これはほかの投資家さんからもよく共感される点です」

現在最もお金をかけているのは、もっぱら「人と会うこと」。そのための旅費や外食費は惜しまないと言います。

「外の世界に出てみると、医療業界という狭い世間で長年生きてきて、まさに『医の中の蛙』だったと痛感させられました(笑)。ですから、より広い視座を養おうと、各地でさまざまな業界や職種で働く多年代の方々と交流するようにしています」

忙しい医師の資産運用はインデックス投資から

投資によって生き方自体も大きく変わったKさんですが、今後については、「10年、20年先にどうなっているかは自分でも分かりません。10年、20年前には今のような生活を送るとは想像もしていませんでした。ただ、投資はライフワークのようなもので、続けているでしょうね。この先、結婚したり子どもが生まれたりすれば、リスク許容度も当然変わってくると思いますが、ずっと続けていくと思います」と話します。

最後に、後輩医師に向けて資産運用についてのアドバイスを伺いました。

「医師はとにかく忙しく、お金の管理どころではないと思いますが、今始めるのと始めないのとでは将来大きな差がつきます。まずは支出を把握して家計管理することから始めましょう。そして、投資先を自分で調べて選ぶ余裕はないと思うので、毎月捻出した資金を世界株ファンドなどで積み立て、インデックス投資を続けるのが最適解です」

Kさんは「医師は安定した高年収の職業なので、10~20年もあれば資産1億円は誰でも築けるし、早期リタイアの“FIRE”も夢ではない」と指摘します。

「そのために今すぐやるべきことは、掛け捨て以外の保険を解約すること、高級車やブランド時計など他人に自慢するための浪費をやめること、そして値上がりが期待できない家を買わないことです。さらに、不動産投資や怪しげな投資詐欺の勧誘がやたらと来ますが、耳を貸さないこと。マネーリテラシーをはじめ、資産を守る力を鍛えることも大切です。

私にとって投資は収益だけでなく、新たな価値観や人との出会いなど、“プライスレス”な財産をたくさんもたらしてくれました。その一方で、医師としてのキャリアアップや収入増など、失ったものももちろんあります。ただ、医師に限らず、お金・時間・労力・健康など、人生を豊かにするためのリソースは誰にとっても有限なので、何かを得るには何かを捨てることも必要です。後悔することのないよう、自分自身で取捨選択していくことが大切ではないでしょうか」

<終わり>

執筆:塩田真美(しおたまみ)
出版社の女性誌・マネー雑誌の編集部を経て、フリーの編集者・ライターとして活動。主に女性誌や広報誌、金融関連サイト、書籍などで、人物インタビューのほか、NISA(少額投資非課税制度)、株主優待、ふるさと納税、節約術などの記事を手掛ける
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