
勤務医からフリーランスの医師+投資家に転身したKさん。病院を辞めてフリーに転身した理由と経緯について伺いました ※画像:PIXTA
過労によるストレスで心身に異変が!
Kさんは2020年5月から投資を始めて順調に資産を増やし、約2年後にはその配当収入で生活できるようになりました。ところが、ちょうどその頃、心身に大きな異変が訪れました。- 第1回:コロナ禍に始めた投資で人生が激変!35歳医師「“お金を働かせる”という発想に衝撃を受けました」
- 第2回:投資で人生が激変!勤務医からフリーランスの医師+投資家に転身し「配当などで生活費を賄えるように」
それが半年以上続き、そのうち自分が今何をしなければならないのかも分からないような状況になり、さすがに「これはマズい」と思って上司に相談したところ、「しばらく休んだほうがいい」と言われました。
「完全に休業して自宅で療養するのも選択肢の1つでしたが、上司や精神科の先生とも相談し、自分にしかできない最低限の仕事のみをする形で、出勤しながら療養を続けました」
すると、過度なストレスから解放されたせいか、徐々に体調は快復してきました。しかし、3カ月以上たち、元の業務に復帰した後、Kさんは大きな決断を下します。
「病院を辞めることにしました。体調は快復しても、もう元のような生活を続けることはできないと思いました。あの過酷なサイクルに戻れば、またいつ再発してもおかしくないと感じたからです。その頃には基礎的な生活費を配当で賄える状態になっていましたし、医師免許があればおそらく食いはぐれることはないでしょうから、辞めても困ることはないという安心感がありました。ただ、主治医として5年近くお付き合いしていた患者さんもたくさんいたので、その関係が打ち切られると思うと、退職には相当な葛藤が伴いました。また、医師としてのキャリアパスを自ら放棄することになり、一から自分を育ててくれた上司にも合わせる顔がありませんでした」
フリー転身に対し、周囲の反応はさまざま
勤務医を退職するというKさんの決断に対し、家族をはじめ周囲の反応はさまざまでした。「祖父母や母は以前からあまりの忙しさに私の身体の心配ばかりしていたので、比較的すんなり受け止めてくれました。ただ、父はかなり驚いたようで、『せっかく入ったのにもったいない』『もう少しよく考えてみては?』と説得されました」
しかし、Kさんの決意は固く、結論が変わることはありませんでした。
「上司に辞意を伝えると『えっ、辞めるの?』と驚いていましたが、それまでのいきさつがあったので、了承してくれました。実を言うと、上司を含め病院の人たちには、資産運用で食べていけるという事情は一切伝えていません。言ってもおそらく理解してもらえないだろうと思ったからです」
フリーの医師として複数のクリニックで勤務

Kさん
「以前に比べると医業に割く時間がかなり減り、収入的にも医業6割、投資4割といった感じですが、もともと自分の時間や心のゆとりを確保したくて病院勤めを辞めたので、想定通りです。フリーランスの医師はまだまだ少数派ですが、医師を常勤で雇うコストはかなり高いため、単発や非常勤の需要は意外と高いんです。派遣経由の単発がベースですが、最近では行った病院から直接依頼されるケースも増えています」
特に事業所の出張検診は春や秋に集中し、引く手あまたですが、自分のペースで選んでいるそうです。ちなみに、公立病院の勤務医時代と比べ、現在の時間単価は2~3倍にも上るとか。
「勤務医は高給取りのように思われますが、つまるところ超長時間労働なので、時間単価にするとかなり安いわけです(笑)。私の場合、生活費は配当から出せているので、休みたいときに休めるし、無理して働いて身体を壊すといった心配もなくなりました。何より、働き方や生活スタイルを自分自身でコントロールできることがありがたいですね。おかげで今は文字通り“ストレスフリー”な生活を送れています」
さらに、投資はKさんに新たなライフワークや生きがいなどをもたらしたと言います。
<第4回:医業の傍ら、投資情報を発信して各地で交流「投資は“プライスレス”な財産をもたらしました」>に続く
執筆:塩田真美(しおたまみ)
出版社の女性誌・マネー雑誌の編集部を経て、フリーの編集者・ライターとして活動。主に女性誌や広報誌、金融関連サイト、書籍などで、人物インタビューのほか、NISA(少額投資非課税制度)、株主優待、ふるさと納税、節約術などの記事を手掛ける