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首都圏マンション価格は、いよいよ頭打ち?「価値が下がりにくい物件」の選び方

中古マンションの価格は、2025年1~3月期、東京23区で上昇傾向が見られる一方、埼玉・千葉・神奈川など首都圏全体では下落しています。こうした動きを見ると、都心は資産価値が高く、それ以外は低いと思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。では、価値が下がりにくいマンションを見分けるポイントはどこにあるのでしょうか。株式会社さくら事務所の山本直彌氏が解説します。

執筆者:All About 編集部

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価値が下がりにくいマンションの選び方とは?

価値が下がりにくいマンションの選び方とは?

中古マンションの価格は、2025年1~3月期、東京23区で上昇傾向が見られる一方、埼玉・千葉・神奈川など首都圏全体では下落しています(※)。こうした動きを見ると都心は資産価値が高く、それ以外は低いと思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。同じエリア内でも、将来的な価値の維持には大きな差が生まれます。

マンションが長く資産としての価値を保てるかを見極めるには、「どこにあるか」だけでなく「どんな物件か」を冷静に判断する視点が欠かせません。では、価値が下がりにくいマンションを見分けるポイントはどこにあるのでしょうか。個人向け不動産コンサルティング事業を展開する株式会社さくら事務所の山本直彌氏が解説します。

※成約㎡単価の前年同期比(2025年1~3月)/公益財団法人東日本不動産流通機構調べ

なぜ差がつく?マンション価格「三極化」時代の到来

まず押さえておきたいのが、不動産市場における「三極化」という現象です。これは、マンションの将来的な価格が、市場全体が好景気だから一様に値上がりし、不景気だから一様に値下がりするといった単純な動きとは異なり、具体的には主に以下の3つのタイプへと明確に選別されていく傾向を指します。
 
  1. 価値を維持、あるいは高めていく物件
  2. なだらかに価値を下げていく物件
  3. 限りなく無価値になる、あるいはマイナスの価値にさえなりかねない物件=負動産
もちろん、従来と同様に、資産価値の形成において立地が極めて重要な要素であることは確かです。

ところが、同じように好条件と思われる立地であっても、時間の経過と共に資産価値を堅調に維持できる物件と、そうでない物件へ進むケースが見受けられるのです。こうした状況を鑑みると、もはや「立地がよい」という1点だけで将来の安心が保証される時代ではないと言えるかもしれません。

そこで、将来の資産価値を左右する決定的な要素として、これまで以上に重要性になってくるのが「建物」そのものの品質と、長期的な視野に立って適切に実施される「管理」の質です。

建物:将来の「売りやすさ」と「住み心地」を左右する仕様の見極め

建物の基本的な構造や仕様は、将来の住み心地はもちろん、売却時の評価(=資産価値)にも直結する重要なポイントです。具体的にどこをチェックすべきか見ていきましょう。

まず、マンションの建物仕様をチェックする際には、大きく「共用部」と「専有部」の2つの視点で見なければなりません。

<共用部:日々の快適性とマンション全体の印象を左右>
  • 廊下……天候に左右されず静かで快適な「内廊下」か、開放的なものの雨風の影響を受けやすい「外廊下」か。ホテルライクな内廊下は人気が高い傾向
  • ゴミ置き場……24時間ゴミ出し可能かは重要なポイント。さらに各階にゴミ置き場があれば、日々の利便性は格段にUP
  • 耐震性能……基本の「耐震構造」に加え、揺れを抑える「制震構造」、特に建物に揺れを伝えにくい「免震構造」は希少性もあり評価が高くなる
 
<専有部(居住スペース):生活の質と将来の資産価値に直結>
  • 窓の断熱性……光熱費や快適性を大きく左右。「ペアガラス」か、さらに断熱・遮熱効果の高い「Low-Eペアガラス」なのか要確認。窓は共用部分扱いで個人での交換が難しいため、中古マンションでも仕様の確認は必須
  • 床・天井……上下階の生活音を軽減し、将来のリフォームもしやすい「二重床・二重天井」が有利
  • その他設備・仕様……キッチンにディスポーザーはあるか(後付けは困難なケースも)。間取りは、多くの方に受け入れられやすいオーソドックスな形が無難。室内に不必要な段差(特に水回り)がないかも、安全性・バリアフリーの観点から確認
全体として、質の高い仕様を備えたマンションは、長期的に価値が維持されやすいと言えます。

管理:負動産への転落を防ぐ鍵「修繕積立金」と「住民の意識」

さらに、どんなに素晴らしい立地と建物でも、管理状態が悪ければ資産価値は大きく損なわれます。マンションの価値を将来にわたり維持向上させるには、適切な維持管理が不可欠です。

①最重要!「修繕積立金」の妥当性
将来の大規模修繕に備える「修繕積立金」の計画とその妥当性は極めて重要です。新築時は低めに設定されがちですが、将来の値上げ幅やタイミングが現実的か、長期修繕計画を冷静に見極める必要があります。

計画に無理があれば、将来資金不足に陥り、必要な修繕が見送られたり、高額な一時金負担や借入金が発生したりするリスクが予測されるためです。結果的に、今後の資産価値を著しく低下させてしまいます。
(出典:国土交通省「段階増額積立方式を採用しているマンションは早めに均等積立方式に切り替えよう!」)

(出典:国土交通省「段階増額積立方式を採用しているマンションは早めに均等積立方式に切り替えよう!」)

新築マンションの修繕積立金計画で多く見られるのが、当初は低く抑えられ、将来段階的に増額される「段階増額積立方式」(上図)。国交省によれば、当初月額7000円でスタートした積立金が、30年間で約4倍の月額2万8000円に上昇するケースも考えられる。

②「管理会社任せ」の認識を改める
マンションの管理は、区分所有者(主に住民)で構成される「管理組合」が主体です。一方で、清掃や修繕手配など管理業務を代行する「管理会社」はあくまでサポート役。

さくら事務所が関わった事例でも、「自分たちの財産は自分たちで守り育てる」という当事者意識の有無によって、将来のマンション価値に大きな差が生じるケースを数多く見てきました。主体的な管理組合の運営が求められます。

③アフターサービスの活用と住民の「気付き」も大切
新築ではアフターサービス保証期間内に、共用部分の見落としがちな初期不具合も確実に修繕してもらいましょう。これは将来の修繕費用の節約につながります。また、住民一人ひとりが日々の小さな変化に気付き、報告することも、問題の早期発見・対処のために非常に重要になってきます。

「管理」は、購入後も区分所有者の努力や意識次第で質を高め、資産価値を向上できる唯一の要素でもあるのです。

立地:「駅近」だけで大丈夫?選ばれ続けるのはどんな街?

最後に、建物、管理の重要性を踏まえ、改めて「立地」を考えると、単なる駅近だけでなく、将来性を見極めることが重要になってきます。

具体的には、次のような点に着目しましょう。
  • 街の魅力を高める再開発計画の有無
  • 人口動態(特に若年層の流入状況)
  • 新駅や道路計画といったインフラ整備の将来像
  • 子育て支援や教育環境といった行政サービスの質
近年は都心部の価格高騰を受け、交通利便性と住環境のバランスがよいセカンドベスト(※1)なエリアにも注目が集まっています。「この街は10年後も魅力的か」「将来も選ばれる街か」という長期的な視点で街の力を評価することが肝心です。

※1:都心や主要ターミナル駅ではないが、次いで利便性や住環境が良好なエリアのこと。さくら事務所は、首都圏では練馬区や世田谷区の住宅地、千葉・埼玉・神奈川の都心近郊などがこれに該当すると分析しています。

将来を見据えた賢い選択で、後悔しないマンション購入を

マンション選びは、目先の魅力だけでなく、数十年先を見据えた長期的な視点で「資産価値」を冷静に見極めることが、後悔しないための秘訣(ひけつ)です。建物、管理、立地という3つの柱から、物件を多角的にチェックしましょう。

<価値が下がりにくいマンションを見分けるポイント>
  • 建物……快適性、メンテナンス性、耐久性など市場評価につながる質の高い仕様を備えているか
  • 管理……適切な管理体制が敷かれ、住民が主体的に関わっているか。特に、修繕積立金の計画が長期的視点で無理のない、現実的なものになっているかは最重要
  • 立地……街全体が将来にわたり魅力を持ち続け、発展していく可能性はあるか
これらのポイントを踏まえつつ、ご自身のライフプランと照らし合わせ、総合的に判断することが大切です。迷ったり専門的な知見が必要だと感じたりした場合には、ホームインスペクター(※2)やマンション管理士など信頼できる不動産の専門家に相談するのも有効な手段と言えます。

※2:第三者的な立場かつ専門家の見地から、さまざまな改修すべき箇所などを見極めアドバイスを行うホームインスペクション(住宅診断)を業務とする。

住宅市場が「三極化」するとも言われるこれからの時代だからこそ、情報を吟味し、多角的な視点を持って、自ら、そして家族にとって本当に価値のある「資産となるマンション」を選び抜きましょう。

文:株式会社さくら事務所・副社長 COO 山本 直彌
株式会社さくら事務所・副社長 COO 山本氏

株式会社さくら事務所・副社長 COO 山本氏


マンション・ビル管理、不動産仲介の経験を経て、マンション管理コンサルタント・不動産エージェントの業務に従事。これまでに50棟を超えるマンション管理フロント業務、500件以上の不動産仲介を経験。2020年4月 株式会社さくら事務所へ参画。2025年にさくら事務所・取締役副社長COO、同年、グループ会社のらくだ不動産株式会社・取締役副社長COOに就任。自身が取材協力した「マンションバブル41の落とし穴」(小学館)が発売中。



引用・出典
公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年01~03月)」
国土交通省「段階増額積立方式を採用しているマンションは早めに均等積立方式に切り替えよう!」
さくら事務所コラム「2025年不動産は大暴落するのか? 金利上昇・2025年問題・新築供給減の影響は」
株式会社さくら事務所「ホームインスペクション(住宅診断)とは」
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