ちょっとした角度や刃のギザギザの数でも使い勝手が大きく変わる
「OPPテープは100m巻きの製品などもあるため、かなり重くなることもあります。重いテープも引っ張りやすくするために、今回、テープとカッターを固定する部分のバネを強力なものにしました。実はそれに合わせて『クラフトテープカッター』もバネを強くしています。本体の側面にあるストラップ穴にひもを通しフックなどかけてぶら下げるとき、テープが重いと、バネが開いたりしていたので改良しました」と神瀬さん。
大量の刃の試作品。この何枚もの刃を作ってテストを繰り返す。刃の交換がしやすいように作られているとはいえ、取り換え作業だけでも大変だ。刃は、ミドリの人気商品「エッチングクリップス」の生産技術を応用して作られている
「刃自体の角度やギザギザの数と、そのバランス、厚み、強度などを変えながら、たくさん試作してそれを使ってみるの繰り返しです。ただ、刃自体は、結構簡単にいろいろなパターンのものが作れるんですよ。とはいえ、しっかりしたOPPテープならキレイに切れても、安価なOPPテープは薄くて裂けやすいのでうまくいかないということもあって、単に切れ味だけで比べるわけではないんです。縦に裂けることを防ぐためには、端が刃に当たってから逆の端までしっかり刃に当たり続けることが必要です。そのための刃の形を探るのも大変でした」と高城さん。 細かいところでは、安全のために刃をカバーしているシャッター部分のバネの強度も調整が難しかったと言います。そこのバネをかなり弱くしても、切ろうとするとテープをシャッターが押し戻してしまって、そこからテープが裂けてしまったそうです。
「刃の部分に触ってしまっても指は切れないけれど、テープを押し戻さないようにするのは、とても苦労したポイントです。一時はシャッターは諦めようかと思ったほどでした。本当にちょっとした力でも、テープが裂けてしまうんです。シャッターの力に押し戻されないまま、最後までテープが刃に当たるようにするのは、とても難しかったです」と高城さん。
そんなふうに、機能と安全性の両方に徹底して配慮した製品が、この「OPPテープカッター」なのです。実は、この開発チームは、すでに十分実力を証明していたダンボールカッターのセラミック刃を応用した「ボックスカッター」や、マグネットで棚などにくっつけたままで使える「マグネットレターカッター」などの開発も行っているチームなのです。
「仕事用に使われているものを、いかに家庭で便利に使えるものにするかは、弊社の多くの製品でコンセプトとして持っています。すでに世の中にはさまざまなものがありますから、これまでなかったものをゼロから作るというのは、もうほとんどできないと思うんです。ただ、不便なものはたくさんあって、また、家庭で使ったらとても便利なのに業務用しかないものも世の中には多くある。それをどう見つけるか、そこからどうヒントを得てどうしていくかといったことに取り組んでいるチームという感じはしますね」と高城さんは語ってくれました。