開発は、“なるべく使いやすく”と“なるべくコンパクトに”のせめぎ合い
「ローラーを付けて、それを開閉式にすれば楽にセットできるというのは、比較的早い段階で思いつきました。ローラーの素材も、くっつきにくさや、回転性、摩耗性の低さなどを考えると、選択肢が絞られたので、おそらくそうなるかなと思っていたPOM(ポリオキシメチレン)樹脂になりました」と神瀬さん。お話を伺うと、実は機能の実現よりも、いかにコンパクトにするかということと、引っ張りやすくすることのバランスをどう取るかという点が一番苦労されたようでした。
「ローラーと刃が近いと、切った後にテープがローラーにくっつかずに貼り戻ってしまいます。そこに引っ張りやすい角度などの条件も重なって、この刃とローラーの距離と角度は、いろいろなバランスを考えなければならず難しいんです。テープは上方向に引っ張ろうとすると力がいるし、刃がテープに当たる角度で切れ味が変わります。その結果として、ローラーと刃の距離は空けたいし、刃自体も少し前に出したいということになって、サイズが大きくなってしまいました」と神瀬さん。
それでも、コンパクトさと使い勝手のギリギリのバランスを攻めたのだろうことは、いくつも作られた試作品の数が物語っています。構造自体は早い段階で決まっていたのに、開発に1年以上かかってしまったというところに、道具としての使い勝手と、生活の邪魔にならないサイズ感の間で苦心したあとがうかがえます。
おかげで、実際に使ってみると、テープは切れやすいのに裂けることはなく、もちろん貼り戻りもなく、スムーズにOPPテープで梱包ができました。確かに引く力を軽くするにはちょっとコツが要りますが、角度を覚えればとてもスムーズ。
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