スキルアップトピックス

若手が提案を出さないのは上司のせい! 組織のしらけムードを作り出す「上意下達」「前例主義」

現場からの改善提案、無視していませんか? その「上意下達」「前例主義」が、部下のやる気を奪い、組織の成長を阻害する元凶かも…。外部コンサル頼みの落とし穴と、現場のアイデアを活かす重要性を解説します。

執筆者:All About 編集部

「コンサル頼み」が、現場のしらけムードを作っているかも?

「コンサル頼み」が、現場のしらけムードを作っているかも?

新しいツール導入、業務フロー改善……現場には効率化のヒントが溢れているのに、上司は「外部の専門家」の意見ばかり。そんな状況が、部下の「諦め」を生み、組織を停滞させているかもしれません。

20年以上プロジェクトマネージャーを務めてきたプロジェクトのプロ・橋本将功さんの著書『人が壊れるマネジメント プロジェクトを始める前に知っておきたいアンチパターン 50』では、現場の創意工夫を潰してしまう組織文化の危険性を鋭く指摘しています。

今回は本書から一部抜粋し、なぜ上意下達や前例主義が新しい工夫を阻むのか、そして現場の意見を軽視することがもたらす深刻な問題点について紹介します。
<目次>

現場の「もっと良くしたい!」が届かない……

プロジェクトなど、新しい取り組みを実施する際は未知の課題を解決するために担当者やチーム全体の創意工夫が求められます。

プロジェクトチームには周囲からも多くの情報や意見が集められ、それらを専門的な見地から検討します。

そして、検討事項を形にする際には大量のタスクが発生するため、より良い手法を取り入れていく必要があります。

特にITの領域では一つのツール(コラボレーションツールなど)や技術(生成AIやRPAなど)を導入することで生産性や効率性が数倍から数十倍程度、飛躍的に向上するケースは珍しくありません。

確かに新しいツールや技術にはリスクがつきものですが、ただ忌避していると、低い生産性や効率性のままプロジェクトや既存事業を続けることになり、組織の競争力は競合に対して相対的に低下することとなります。

さらに、普段外部の情報に多く触れている現場から、上層部やマネージャーにこうした新しい技術の取り込みや業務フローの改善などを提案しても認められないことがあると、プロジェクトの生産性や効率性が向上しないのはもちろん、担当者にとっては抱えている課題が解消されないうえに、そのために試行錯誤した努力が認められないと感じて大きく意気消沈することとなります。

これは当人のモチベーションが喪失するだけでなく、自分が所属する組織に対する「諦め」となって、新しい工夫を取り入れようとせずに言われたことしかやらない受け身の姿勢へとつながっていきます。

なぜ変わらない?「上」「前例」という見えない壁

個人のアイデアや創意工夫が却下されてしまう状況が発生する要因は、上意下達・前例主義の社内文化やそうした考え方を持つ意思決定者個人の考え方が背景にあることが一般的です。

プロジェクトのマネージャーや実行チームは意思決定者より職位が低いことが通常であるため、上層部がそうした社内文化を元に現場をコントロールしようとすると現場は萎縮して生産性や効率性が失われてしまうのです。

また、新しいアイデアや創意工夫はまだ未検証であるため、うまくいかない可能性もあります。

他社や他のプロジェクトでうまくいっているものでも、前提条件や目的、実行するメンバーが違う場合は失敗する可能性があるからです。

失敗を許容しない減点方式の人事評価である場合も、現場は自分たちが考えた方法を主張して失敗した際のリスクを恐れて、より良い方法を思いついていたとしても提案しなくなるでしょう。

「コンサル頼み」が招く、現場のしらけムード

筆者が業務改善のプロジェクトで現場の担当者にヒアリングを実施した際に、「上層部は外部のセミナー講師やコンサルタントなどの意見は聞くが、内部の現場の意見は聞かない」という不満を聞くことがあります。

現場の担当者が日々の業務を行う中で課題として感じていることを上層部に伝えたり、その課題を改善するための方法を提案しても全く聞き入れられないことが、同様のことを外部のコンサルタントが提案すると、それがそのまま通ってしまうといったケースがしばしばあるのです。

もちろん、コンサルタントの意見が通るのは優れた伝え方や資料の作り方、プレゼンテーションの要素もありますが、前述の上意下達や前例主義の文化のために現場の意見をうまく吸い上げられていないケースも多々あり、そうした場合、現場は外部の意見ならすんなりと聞く上層部に対して「それ、散々言ったのに ...」と鼻白んだ気持ちになってしまいます。

現場の意見を吸い上げれば迅速に改革の方針として経営に反映できたのに、外部のコンサルタントに提示されなければ納得しないという状況は、単純に費用や時間のロスであるだけでなく、実際に改革を実行する際に、自分たちが軽視されたと感じた現場の担当者による抵抗や妨害につながることもあります。

現場の意見を吸い上げることが、未来への投資

自分や周囲が日々感じている課題や不満を取りまとめ、改善策として実施し、状況を改善することができれば、それは大きな「成功体験」となります。

最初は現場の改善を行っていた人材が業務経験を積んで新規事業や DX(業務改善・組織改革)を担えるようになることも珍しくありません。

現場からの意見や提案の抑圧は人材育成には大きなマイナスとなりますが、提案を吸い上げて改善することができれば事業にとってプラスになるだけでなく、人材育成の面でも中長期的に大きな効果をもたらす可能性があるのです。
  橋本将功(はしもと まさよし)プロフィール
パラダイスウェア株式会社 代表取締役 早稲田大学第一文学部卒業。文学修士(MA)。大学・大学院ではイスラエル・パレスチナでテロリズムの調査研究を実施。IT業界25年目、PM歴24年目、経営歴15年目、父親歴11年目。 Webサイト/ Webツール/業務システム/アプリ/ 組織改革など、500件以上のプロジェクトのリードとサポートを実施。世界のプロジェクト成功率を上げて人類の幸福度を最大化することが人生のミッション。著書に『人が壊れるマネジメント』(ソシム、2025)『プロジェクトマネジメントの本物の実力がつく本』(翔泳社、2023)『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本』(翔泳社、2022)
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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