
投資初心者におすすめする運用方法
人気の高い金融商品「ファンドラップ」とは
ファンドラップとは、金融機関(銀行や証券会社)と投資一任契約を締結し、顧客特性に応じたポートフォリオの決定、組み入れる投資信託の売買および必要に応じたリバランスといった運用にかかる面倒なことを全て金融機関にお任せできるサービスです。他に本業があって運用に時間が取れない方や運用にかかる専門知識が不足している方にとってはありがたい金融商品と言えましょう。
かつては富裕層向け商品というイメージが強かったのですが、近年は300万~500万円から受け付けてくれる金融機関がほとんどで普通の個人投資家の皆さんにとっても身近なものになってきています。金融機関によっては兆円単位で残高が積み上がっているようで、人気の高い金融商品と言えそうです。
手数料は税込みで投資一任報酬が年間で1.5%程度、組み入れる投資信託にかかる報酬が0.5%程度となっており、合計で年間2%程度徴収されることを覚悟する必要があります。なお、投資信託にかかる報酬はインデックスファンド(運用成績が市場を代表する指数に連動するファンド)であれば0.5%より安くなりますが、一方でオルタナティブ(代替的な)資産を組み入れるケースもありこの場合はもっと高くなります。
ファンドラップの課題とは?高過ぎる手数料
ファンドラップの第一の課題は手数料が高過ぎるという点です。個人投資家の皆さんは72の法則というものをご存じと思います。これは72を利回りで割ると資産が倍になる年数になるというものです。仮に8%の利回りで運用できれば、72÷8=9となり9年間で資産が倍になります。ファンドラップにより5%の運用成果が上がったとしても、手数料控除後では3%の結果になったとしましょう。72÷5=14.4で14年ちょっとで資産が倍になると思ったら、72÷3=24で実は24年かかるということとなります。資産の成長をなによりも重んじる個人投資家の皆さんにとって、資産が倍になるのに10年も余計にかかるということでは話にならないのではないでしょうか。
第二の課題は、一部の資産で顧客特性に応じたポートフォリオを組んでも部分最適化に過ぎないということです。金融機関との面談などを通じて最適なポートフォリオを組んでもらうのなら、預金や不動産も含めた顧客の全資産で最適化を図らないと意味がありませんが、そこまで一切合切まとめた運用を行うファンドラップ商品は存在しないようです。
第三の課題は、組み入れる投資信託についてアクティブ運用のケースが大半で、顧客利益より手数料収入を重視していると思われる金融機関の営業姿勢です。
以上の3点から、筆者としては個人投資家の皆さんにファンドラップをおすすめできません。
ファンドラップよりGPIFの運用をまねしてみよう
それでは、時間も専門知識もない個人投資家はどうすればよいのでしょうか? 筆者がおすすめしたいのは、10年以上使うあてのない資金であれば、「GPIFのポートフォリオをまねしてみよう」ということです。GPIFとは年金積立金管理運用独立行政法人の略称で、258兆円(2024年12月末)の年金積立金の長期・分散投資を実施しています。この法人の運用の中核が基本ポートフォリオと呼ばれるもので、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の4資産を各25%ずつ配分した構成になっています。GPIFは現在の基本ポートフォリオを採用して以降、2020年度から2024年度の第3四半期までの5年弱で年率12%という驚異的な運用成果を上げています。
個人投資家がまねをするには、この4資産に近いインデックス運用の投資信託または上場投資信託(ETF)を25%ずつ購入し、年1回程度比率を維持するためのリバランスをするだけです。
上手にファンドを選べば、手数料率は0.1~0.2%程度とファンドラップの1/10以下に抑えられ、運用成果を侵食することがありません。
もちろんGPIFと同じように市場の変動にはさらされますので時に大きくファンド全体の時価が下がることがありますが、長期的な運用成果を信じ、冷静に構え、下落局面で投げ売りをするようなことは避けましょう。
これによって長期的には、ファンドラップより効率的に運用成果を上げることが期待されます。
教えてくれたのは……
陣場 隆(じんば たかし)さん
京都大学法学部卒業、ペンシルベニア大学ウォートン校MBA、三井信託銀行入社、国際金融部、国際企画部、融資企画部付、年金企画部、年金資金運用研究センター出向、三井アセット信託銀行公的年金運用部次長、証券営業部次長などを経て2006年末に同社退社。2007年より年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に勤務。調査室副室長、運用部長、調査数理室長を経て2020年定年退職。GPIF勤務の13年間で、運用機関構成の決定や基本ポートフォリオの策定を統括した。GPIFを定年退職後「今を生きる若い人たちに向けて年長者の知恵を伝えたい」という気持ちが強くなってきたため、執筆活動を開始