亀山早苗の恋愛コラム

娘が作った夕飯をゴミ箱に捨てた夫……28年の結婚生活の果てに妻が決断した「夫婦の今後」

子どもたちが巣立ち、夫もそろそろ定年。また夫婦2人の生活がやってくると考え、これまでの結婚生活を振り返った56歳女性。思い出すのは過去の夫の悪行ばかりで、この夫との「老後」をイメージすることなんて到底できないことに気づいた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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30年近く一緒にいても結局は相いれない夫婦だった

30年近く一緒にいても結局は相いれない夫婦だった

更年期による不定愁訴や体調不良が落ち着いてきたころ、夫婦関係を見直す気持ちになったという女性は多い。目の前に迫ってきた「老後」が頭から離れないからだろう。

今になって思い出す過去の夫の悪行

「子どもたちも巣立ち、私の体調不良も落ち着いて、さてと周りを見渡すと夫しかいない。夫もそろそろ定年。その後も仕事は続けるつもりらしいですが、この夫と10年後、私はどうしているんだろうと思うとまったくイメージが湧かないんですよ」

そう言って苦笑するサホリさん(56歳)。結婚して28年たち、娘は26歳、息子は23歳になった。2人ともすでに実家を出て独立している。職場からそれほど遠くに住んでいるわけでもないのに、子どもたちはあっさりと出ていった。

「早く自立してほしいと思っていたけど、あんまりあっさり独立されるとそれはそれで寂しくて。25年以上の時を経て、またいきなり夫婦2人になるんだなと実感しました。あの頃とはどうしてこれほど違ってしまったんだろうということも……」

新婚当初、夫は優しかった。初めての妊娠を告げたら夫の目にみるみる涙がたまった。出産時には号泣していた。それなのに3年後の出産のとき、夫はいなかった。出張だと言っていたが、後から有給休暇をとっていたことが分かった。部下の女性と不倫旅行をしていたのだ。

絶望の淵に立たされて

「3歳児と新生児を抱えて絶望の淵に立たされました。私の実家は遠くて帰るに帰れない。近くに住む夫の母親に泣きついたら、『あなたがうちの子をないがしろにするからじゃない?』と義母に言われて。3歳児の手を引いてベビーカーを押しながら歩いていて、ふっと車道に出ていこうとしたり、踏切で下りている遮断機をかいくぐって……なんて思ったことが何度もあります」

そのたびに近くにいた人に救われた。踏切のとき、彼女をぐっと引き止めたのは、夫が日ごろから慕っている中学時代の先輩だった。夫はこの先輩に会うと言いながら、実は女性と会っていたこともあった。

「そのとき、彼がいろいろ話を聞いてくれて。夫の恥をさらすようでなかなか言えなかったんですが、彼がうまく引き出してくれたんです。『サホリさんから聞いたとは言わないから、オレに任せてくれないか』と言われました」

家庭を向くようにはなったけれど

その先輩は若くして結婚、4人も子どもがいて、両親と8人家族で暮らしていた。地元でも有名な仲よし家族でもあったが、先輩は妻の言いなりだとも言われていた。

「いいんだよ、妻を立てて暮らしているのが一番、と豪快に笑い飛ばすような人なんです。その後、夫をどうやって説得したのか、あるいは納得させたのか分からないけど、夫が早く帰ってきて子どもたちの面倒を見るようになった。下の子が初めて立ったときも歩いたときも、夫は家にいたんです。目の前で立ち上がる子を見て、夫はものすごく感動したみたい。上の子のときも見たかった、オレはもっと子どもと関わっていきたいと言い出して。オレを見捨てないでほしいとも言った。でもそれって結局、不倫相手に見捨てられたタイミングだったみたいなんですよ。それでも私は、夫が変わってくれるなら今までのことは水に流そうと決めました」

夫との関係を立て直しながらパートで仕事を始め、家事は8割方こなした。子どもたちの誕生日が来るたびに、家族で祝えることがうれしかった。

「でも考えたら、私は誕生日に夫からきちんとおめでとうと言われたことがない。いつも子どもたちが先に言って祝ってくれて、お小遣いをためてプレゼントをくれる。夫はそれを見ながら拍手して。夫がプレゼントをくれたことはありません」

それどころか、些細なことでチクチクと皮肉を言うことも増えていった。仕事でのストレスを妻にぶつけていたようだ。夜中に帰ったが思ったような夜食が用意されていないと妻を叩き起こすこともあった。

夫の心の闇に気づいて

パートながら信頼されるようになったサホリさんが残業を頼まれ、すでに中学生だった娘が「夕飯作っておくよ」と言ってくれたことがあった。たまたま早く帰ってきた夫は、娘が作った夕飯を走って帰宅した妻の目の前でゴミ箱に捨てた。

「オレは妻が作ったものが食べたい。子どもにこんなことをさせるなって。あれには私も娘も、2人とも傷ついた。最近、それを思い出して、ふと、夫は女が嫌いなのかもしれない、心の底では憎んでいるのかもしれないと思いました」

少なくとも、自分より弱い立場の人間に、自分の心の闇をぶつけることを平気でするタイプの男性ではあったのかもしれない。

「子どもたちの受験や学校選びに、親は口を挟まない方がいいと私は思っていたけど、夫はいちいち報告させていました。そして陰で『あんな大学でいいのかなあ』と私に聞こえよがしに言う。私は短大卒なんです。有名私立大学出の夫は私を下に見ていた」

このところ、ずっとそうやって過去をたどっていたら、とても夫とはいい関係でいられるはずもないと思うようになったという。

「結局、相いれない夫婦だったし、2人きりに戻ったらろくに会話もない。それどころか私はずっとモラハラされてきたんだと思うようになりました。渦中にいるときはモラハラだと思わなかったし、子ども優先で夫との関係なんて考える暇もなかった。でも気づいてしまったからには、このままでいるのはつらい」

なるべく早く、自分の先行きを考えなければとサホリさんは今までとは違う一歩を踏み出そうとしているようだ。
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