『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』(田中渓著/徳間書店)では、元ゴールドマン・サックス マネージング・ディレクターの田中渓氏が熟知する「富裕層マインド」を余すところなくお伝えしています。
今回は本書から一部を抜粋し、豊かに生きるヒントが詰まった「億を超える人」の朝時間を活用するメリットについて紹介します。
心の余裕が段違いの朝時間
もし日中や夜にどうしても自分の時間がとれないということであれば、朝の時間を活用する方法もあります。とくに、朝は朝でも4時とか5時とか早朝の時間が狙い目です。人によっては3次会、4次会と前の日を生きているなか、すでに次の日の人として人生のプラスになる活動を先取りできていることに対する気持ちのよさや、心の余裕が段違いです。「そんなキツいことは無理だな。朝は5分でも長く寝ていたい」と、はじめは思うかもしれません。僕もそう思っていました。前述したとおり、会社に寝泊まりをしていたときは、寝落ちするギリギリまで仕事をして、目が覚めた瞬間からすぐにまた仕事モードにスイッチ。仕事と仕事以外の切れ目を見つけるのがなかなか難しく、脳が休まる時間すらなかったように思います。
「余計な運動で疲れるのでは」という予想に反して
ただ、仕事と睡眠の間に運動、という時間を挟んだことにより、体はすっきりし、脳がリフレッシュされ、思考もポジティブになることが実感でき、「余計な運動で疲れるだろう」という予想に反して、心身ともに健康になりました。自分の時間を見つけるために24時間の時間の使い方を見直したところ、「早朝に時間をつくるしかない」と思いはじめてから、毎朝3:45に起きて走っています。朝7時の起床時間だったのを6時に、6時から5時へ、5時から4時へ……と前倒ししているうちに、今の3:45という時間が僕にとってのベスト起床時間として収まりました。自分のための時間であることはもちろん、職場にも家族にも迷惑をかけない時間帯です。
さらにこの習慣のいいところは、朝の運動が終わった時点で、その日の1日の仕事の段取りや方向性がすべて決まっているということです。
運動中に1日の仕事の段取りが完了
具体的には、起きて家を出る前に、その日の会議の予定を把握し、前日のメールを斜め読みでざっと目を通す。そこでは深く考えずそのまま走り出す。すると、走っている間、脳が勝手にメールの返信やプレゼンテーションの構成、会議の段取り、意思決定のためのロジックなどをどんどん考えはじめてくれます。音楽やラジオを聴きながら走っているのに、です。この脳のオートパイロット機能にまかせておくと、走り終わった頃には、その日1日にすべき仕事の段取りがすべて終わっています。後はそれを午前中にアウトプットするだけ、という状態です。
結果として、早朝習慣が定着するまでの「長く寝ているのに、起きてからアウトプットに辿り着くまでの思考時間」が削れるので、早く帰れるようになり、睡眠不足にもなりませんでした。
世界トップレベルの富裕層の習慣
「朝がいちばんいい」というのが間違いないなと確信したのは、出張先の香港のホテルに宿泊したときのことでした。そこでは世界中のいわゆる「偉い人」が集まる会議があったんです。僕はいつものとおり、3:45に起きてホテル内のジムで走っていたところ、部門のグローバルヘッドがジムにやってきたと思ったら、僕の隣のランニングマシンで走りはじめました。それからジムのドアが開くたびに、まだ早朝なのに偉い人が続々と入ってきて自分たちのトレーニングをスタート。世界のトップレベルの富裕層たちが三々五々集合して早朝からトレーニングをしているという光景でした。
そこには「朝がいちばんいい」という彼らの共通した意見があり、みなそれぞれのルーティンを持っていたことを知りました。
意思決定はすべて午前中に
富裕層たちは早起きの人が圧倒的に多いです。早朝からトレーニングをした後は、仕事のメールをバンバン返し、意思決定すべきことはそこから午前中までにすべて片づける。午後は人に会ったり、報告を受けたりというインプットの時間。夕方になって、午前中に指示していたことがどうなっているかを聞いて、必要な意思決定をする。必要であればさらに指示を出して早めに帰宅する。後は自分の自由な時間に充てる。と、そんなふうに1日を有意義に過ごす人も多いです。
早起きも習慣化してしまえば、とくに痛痒を感じることもなくなります。朝の時間がどれだけ私たちにプラスの効果をもたらすかについては、すでにあちこちでいわれているとおり。本書を読んだことをきっかけに、まずは一度、早起きを試してみることをおすすめします。
田中渓 プロフィール
1982年横浜出身。上智大学理工学部物理学科卒業。同大学院中退後53回の面接を経て、ゴールドマン・サックス証券株式会社に2007年に新卒入社。同社でマネージング・ディレクターに就任し、投資部門の日本共同統括を務め、2024年に同社を退社。在籍17年間で20カ国以上の社内外300人を超える「億円」資産家、「兆円」資産家、産油国の王族など超富豪などと協業・交流をする中で、富裕層の哲学や思考、習慣などに触れ、その生態系を学ぶ。