『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』(田中渓著/徳間書店)では、元ゴールドマン・サックス マネージング・ディレクターの田中渓氏が熟知する「富裕層マインド」を余すところなくお伝えしています。
今回は本書から一部を抜粋し、豊かに生きるヒントが詰まった「億を超える人」の習慣化を身につけるノウハウについて紹介します。
<目次>
「習慣化」は一生の武器になる
仕事でもプライベートでも、何かひとつのことを「習慣化」できる力を身につけておくと、それは一生の武器になる、と僕は確信しています。僕自身、習慣化の技術を身につけたことで人生が大きく変わりました。富裕層のみなさんにとっても習慣化は「億を超える人」としてサバイブしていくうえでも通底している考え方です。
もともと日本人は、「目標を立てる」「学ぶ」というアクションは苦手ではないと思っています。ただ、「実行する」だけは別で「お金が貯まったらやろう」「時間に余裕ができたらはじめたい」「予定が空いたら行く」という類の話は、たぶんすべて実行されないはず。その都度クリエイティブな言い訳をつけて実行しないことがほとんどでしょう。
だから、習慣化してとにかく行動に移す。これは投資も仕事もプライベートもすべて同じ理屈です。
習慣化により定着させた記憶がたしかな技術に
有名な「エビングハウスの忘却曲線」を見てもわかるように、僕たち人間はすぐに忘れるという特徴があります。勉強でいえば、習ったことを1時間後にはすでに半分以上の56%、1日たつと74%というかなりの割合で忘れてしまいます。ですが、その都度復習をすれば劇的に改善します。そうやって、忘れる→復習→忘れる→復習を繰り返し、記憶として定着させる。忘却曲線に逆らって、習慣化により定着させられれば、それは獲得されたたしかな技術になります。金融リテラシーを身につけたいと思ってお金の勉強をはじめるときも、習慣化するまでが勝負です。
ポイントは、習慣化するまでには、意思の力をできるだけ使わないように、きちんと仕組み化をすることです。
残業や飲み会は「決めたこと以外の時間」に
たとえば、「平日は毎日21時に15分必ず勉強する」と決めたら、カレンダーやスケジュール帳に書き込んで予定をブロックします。絶対にブロックした予定は動かさないこと。「仕事が終わった後に」というのもよくないです。仕事が終わる・終わらないはコントロールが難しいので、時間で区切ります。特定のアクションにトリガーとして紐づけてしまうのもおすすめです。「電車に乗ったら、英語アプリ」「家事をするときに、ニュースポッドキャスト」「朝起きてからすぐ、15分間動画を見ながらヨガ」など、毎日の生活のなかで必ずおこなうアクションに絡めて条件反射で行動します。残業や飲み会があっても仕事は中断して、勉強の後再開する、飲み会は早めに帰ることにする、場合によっては15分なら中抜けする、として調整をしていきます。
とにかく自分がやると決めたことを優先させて、「それ以外の時間」に仕事や飲み会の予定を入れてしっかりこなしていく、というイメージです。「仕事」が後にくる。くどいようですが、念押ししておきます。
365日毎朝3時45分に起床
ちなみに僕は友人からは「異常なまでにルーティンにこだわるやつ」と思われています。その理由のひとつは、僕が365日毎朝3時45分に起床して、「25km走る」「60km自転車に乗る」「7000m泳ぐ」というメニューのうち、どれかを毎日必ずこなしているからかもしれません。今はどれもまったく苦痛ではないのですが、習慣化する前は「睡眠不足だから」「雨が降っているから」「二日酔いだから」などと言い訳を考え出しては、何とか意思の力でベッドから這い出ていました。
それ以外にも「毎日、語学学習のアプリを20分やる」という習慣もあるのですが、決めたルールどおりにやることを徹底するため、40時間走りっぱなしのレースの最中にも、走りながらブツブツ英語を呟いてやっていました。
早朝のルーティンを仕組み化できた理由
では、そんな僕がどうやって早朝のルーティンを仕組み化、習慣化させていったのか。僕の場合、「何も考えずに行動に移せるよう、言い訳をつくれない環境を前もって整えておく」ということをしました。具体的には、翌朝起きてすぐに外に出られるよう、毎日寝る前にウェアとソックス、シューズ、飲んでおくべきサプリなどをお皿にまとめておく、ということにいたるまで用意しておきます。「今日はどのTシャツを着ようかな、どのソックスとシューズを履こうかな」ということすら考える隙を脳に与えません。
行動できない理由がない
目がさめたらただそこにあるものを身につけて、飲むべきものを飲んで、緊急対応が必要でないならメールのチェックだけして躊躇なく外に出る、ということを毎朝続けています。起きてから10分以内には運動がはじまっています。「行動できない理由がない」という状況をつくっておく、ということになるでしょうか。じつは、話を聞いてみると、富裕層たちもその人なりのルーティンを持っていることが多く、そのルーティンを続ける時間を意識的につくっているように思います。習慣化は、外部要因に邪魔されることなく自分の道を歩んでいくために必要なマインドといえそうです。
田中渓 プロフィール
1982年横浜出身。上智大学理工学部物理学科卒業。同大学院中退後53回の面接を経て、ゴールドマン・サックス証券株式会社に2007年に新卒入社。同社でマネージング・ディレクターに就任し、投資部門の日本共同統括を務め、2024年に同社を退社。在籍17年間で20カ国以上の社内外300人を超える「億円」資産家、「兆円」資産家、産油国の王族など超富豪などと協業・交流をする中で、富裕層の哲学や思考、習慣などに触れ、その生態系を学ぶ。