この記事では、具体的にどのような活用をしていけばいいのか、どのような順番で資産運用していくかについて、説明していきます。
ステップ1:長期・分散・積立投資で着実に育てる
まずは「長期・分散・積立投資」で着実に育てるところから始めましょう。時間を味方にすることでリスクを抑えながらリターン狙うといった、最も基本的なスタイルです。下記の戦略を織り交ぜながら、必ず行っていきましょう。NISAやiDeCoなど税制優遇制度を活用することで、効率的な資産形成が可能です。■新NISAを始める
新NISAについての詳しい仕組みについては記事が乱立していますので詳細は避けますが、一言で言うと「運用して殖えた分に課税されない仕組み」です。これに関しては始めない理由が何もなく、少額からでもいいので始めたほうがいいでしょう。
購入するファンドなどに関してはネットの情報をうのみにしないことが大事です。若い医師なら期間の長い投資が可能ですので、配当利回りに加え、成長産業を見極めて投資してください。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の会社に相談するのも一手です。
■iDeCoを始めるか検討する
iDeCoは、年間決められた額までの投資額が、所得から控除される形で投資ができる仕組みです。その面ではNISAよりもメリットが大きいと言えます。要するに、年間1000万円の所得の医師がiDeCoで年間10万円投資(貯蓄)すると、所得が990万円として課税されるといったものです。
2024年12月からは、iDeCoを利用するために職場で証明書を取得する必要がなくなり、より身近な制度になりました。2025年度の税制改正によって投資額の上限のUPも期待されています。企業年金のない、一般的な中小企業の会社員や多くの医師などは月額2万3000円(年間27万6000円)から月額6万2000円(年間74万4000円)と、上限が大幅に上昇することになりそうです。
ただしデメリットもあります。原則60歳になるまで引き出せないため、近い将来使う資金としては全く計算に入れられません。自身の老後資金として使うこと、そのお金は所得控除されるということを理解して運用しましょう。
運用選びとしてはインフレを意識した投資が絶対的に必要ですが、銘柄などはIFA法人などに相談してください。
ステップ2:生命保険を“守り”と“資産形成”の両輪で使う
所得が高い医師は「高額な保障は不要」と思いがちですが、所得が高いからこそ遺された家族の生活保障はもちろん、資産形成・老後資金への備え、開業資金の借入れに対する万一のリスクヘッジ、事業承継対策、また開業医の場合は税金対策として、生命保険を活用していきましょう。■貯蓄型保険を資産形成に生かす
一般的な終身保険・養老保険や外貨建て終身保険、変額保険、個人年金保険などは「保障を持ちながら資産形成ができる」仕組みです。特に医師のように可処分所得が高いために「投資と保険を分ける必要」があまりなく、かつ中長期での運用が可能な方にとっては生命保険は死亡その他に対する保障と併せ、税制メリットのある金融商品として活用する判断は賢明と言えるはずです。
■法人設立後は保険を使った退職金戦略も有効
開業後の医療法人化や、何らかの事業で法人化をしている医師の場合、法人契約の生命保険を使って、事業リスクをヘッジしながら将来の退職金や事業承継に備えることが非常に重要です。
特に開業医は、規模の大きい(分院がたくさんあるような)クリニックを除くと「その先生が亡くなってしまうなど働けなくなれば、会社そのものの売り上げがなくなってしまう」といった状況が多く見受けられます。医師の万が一に備えることと、将来の老後資金準備に両方備えることが可能な生命保険を活用することは大きなメリットとなります。また、適切な保険設計は、税金対策としても有効なツールにもなります。
ステップ3:株式投資・投資信託で資産の増加を狙う
ステップ1のNISAやiDeCoとは別に余剰資金があれば、さらにご自身で運用していくこともいい選択肢と言えると思います。株式投資やETF(上場投資信託)・投資信託を活用しましょう。ポイントは、投資方針を持って感情に流されない運用を継続すること。IFAとの相談も有効です。ただし、優先順位としては、上記1、2の後に検討する必要がある(現在や将来の生活状況によっては生命保険は劣後することもあります)と言えると思います。
資産形成は“忙しい医師”こそ始めるべき
医師の働き方やライフステージに合った投資戦略と保険活用を組み合わせることで、効率的な資産形成が可能になります。1~3までは、ほぼ全ての医師が検討してもいいと考えられます。大切なのは、信頼できるIFAやFP(ファイナンシャルプランナー)といったパートナーと共に、無理のない範囲で一歩を踏み出すことです。NISAやiDeCo、その他総合的判断をできないFPや保険営業、不動産投資業者に流されないことが大事です。