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タワマンの「当たり前」に潜むリスク…「一体どうしろと?」宅配業者を悩ます“配達の難所”がごろごろ(2ページ目)

タワマンは一見、一棟に多くの世帯が集中しているため配達効率がいいように思えますが、実態は異なり「配達の難所」に宅配業者が悩まされています。ECや物流業界に環境変化が起こる中、タワマンの「当たり前の利便性」が大きな岐路を迎えていそうです。

執筆者:All About 編集部

配送業者の行く手を阻む強固なセキュリティー

配達時間が増える要因はエレベーターだけではありません。タワマンで配送を行うためには“多くの関所”をクリアしなければいけないのです。
 
まず、マンション敷地内の荷さばき用の駐車スペースが限られていること。駐車時間に制約があったり、駐車可能な台数が限られていたり、ルールが無視され住民の車が停めてあったりと、“駐車スペースの争奪戦”が発生しています。ときには搬入口から遠いところにトラックを駐車して荷物の積み下ろしをすることも起きています。
 
駐車スペースを確保できたとしても、次なる関所はタワマンへの入館です。多くのタワマンでは、住民の安全を確保するため「厳重なセキュリティー」を設けています。実はこの複雑で強固なセキュリティーは、住民の安全を確保する反面で、配送上の大きな障壁となっているのです。

例えば、配送ドライバーは居住者とは異なる搬入専用口から入館し、警備室で受付を行います。配達先の在宅が確認できたらエレベーターへと進みます。特に厳重なセキュリティーを採用しているマンションではエレベーターに乗り込むときにもチェックが。さらに降りたフロアでも確認されることも。荷物1個の配達に対して複数回のセキュリティーをクリアする必要があるのです。
 
また、最近では下層階と上層階でオフィスや商業施設、居住エリアが分かれているタワマンも増えています。こうした建物は搬入口がオフィスエリアと居住エリアで異なるなど、配送ドライバーにとっても、ハードルが高い関所になっています。
 

台車の利用禁止や、宅配ボックスの不足も

タワマンでは共用部分の破損を防ぐため、“台車”の利用が禁止されている物件もあります。「大理石の床材を傷つけないためとはいえ、一体どうやって大量の宅配用ペットボトルを運ぶのか……」ネット上には配送業者の苦悩があふれていました。
 
また、不在時に利用する宅配ボックスも潤沢に用意されているとは限りません。宅配ボックスが満杯の場合は空くまで再配達が繰り返されるため、配送効率が著しく低下します。
 
タワマンは、居住者にとって眺望に優れ、セキュリティーが高い反面、配達などの利便性との両立が課題となっています。昔のお屋敷には勝手口があり、業者はそこから出入りをしていました。現在のタワマンでは搬入口と警備室があるとはいえ、厳し過ぎるセキュリティーとエレベーターによる垂直移動によって、大変な時間がかかるようになってしまったのかもしれません。

<参考>
※1:不動産経済研究所「超高層マンション動向 2024
※2:経済産業省「令和5年度電子商取引に関する市場調査
※3:日鉄興和不動産「タワーマンションの物流問題、ロボットで解決しよう。

 

【この記事の筆者:蜂巣 稔】
【この記事の筆者:蜂巣 稔】
物流ライター。外資系コンピューター会社で金融機関・シンクタンク向けの営業、輸出入、国内物流を担当。その後2002年から日本コカ・コーラにて供給計画、在庫適正化、物流オペレーションの最適化などSCM業務に18年以上従事。2021年に独立。実務経験を生かしライターとしてさまざまなメディアで活躍中。物流、ビジネス全般、DXやAIなどテクノロジー領域が中心。通関士試験合格、グリーンロジスティクス管理士。
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