人間関係

大学生の息子は「実家暮らし」か「1人暮らし」か……子どもの自立問題についての夫婦間バトル

息子が大学生になる時に、自立してほしくて一人暮らしを勧めたが結局今も自宅から通学している。夫に言わせると、いつかは独立するのだから急がなくてもいい、冷たい母親だと言われてしまうのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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かわいい息子を手元においておきたい父と自立をさせたい母

かわいい息子を手元においておきたい父と自立をさせたい母

子どもに早く出て行ってほしいと願う親と、1人暮らしをさせるくらいなら実家にいさせたいと思う親。どちらの気持ちも客観的には理解できるが、実際には親の意見が異なって、かなりバトルになっている家庭もある。 

ひとり暮らしができるように育てたのに

「私は息子が1人暮らしできるように、小さいころから料理も教えたし、自分のことは自分でやるように仕向けてきました。共働きだったから、彼にも風呂掃除などできることはさせてきた。彼が大学に行きたいと言った時、『これで子育てから解放される』とうれしかったんですよね」

苦笑いしながらそう言うサトコさん(52歳)。息子は現在、大学2年生だが、サトコさんの思いとは異なり、自宅から大学に通っている。

「彼のやりたいことって、とある地方の大学にしか学科がなかったんですよ。でも彼が高校3年生になった時、自宅から通える範囲にその学科ができて……。これで家から通えると言うので、実験もあるから大学近くにアパートを借りたらどうかなと勧めてみたんです」

すると本人は「どうして? 家から通えるからいいよ。お金も大変だし」とけげんな顔をした。夫も「そうだ、家から通えばいい」と加勢する。

「だから夫に言ったんです。子どもは早いうちに独立させた方がいいと。早くひとりで生きていくことを学ばないと、いつまでも親を頼るでしょう。そうしたら夫は『どうせいつかは独立していくんだから、急がなくていいじゃないか』って。そういうことじゃないんですよね」

30歳になっても実家にたら……

サトコさんの夫は地方出身なので大学入学とともに上京した。1人暮らしは過酷だったと今でも思っているのだそう。それは慣れない土地で、いきなり1人暮らしをしたからだとサトコさんは反論する。

「結果的に夫は早めに家を出て自立できたのだから、それは貴重な体験だったと思いますよ。私は夫が1人暮らしをしていたから、結婚しても大丈夫だなと感じていた。30歳になっても実家にいて親に家事をやってもらっている男性とは結婚したくないですから」

サトコさんの結婚の条件は「1人暮らしの男」だったそうだ。 

家事ができるというだけの話ではない

夫は「自宅住まいだって家事はできるようになる。そもそも、結婚したらこれからの時代、やらざるを得ないだろうし」とのんびり構えている。だが、サトコさんの意見は違う。1人で暮らすということは、孤独も引き受けていくことだと考えているという。

「自分のことは自分でやる。病気になったら、自分の判断で誰かに助けを求める。もしかしたら誕生日をひとりで過ごすかもしれない。イベントごとに誘われず、ひとりで夜を持て余すこともあるかもしれない。それでもその孤独に耐えて、あるいは孤独にならないような努力をしながら、1人暮らしは進んでいくわけですよ。私は就職してすぐ家を出ました。経済的には大変だったけど、自分の力で生きたかったから。息子にはそういう自立心が欠けているような気がするんです。だから私は1人暮らしを勧めた」

だが夫は、そんな孤独は知らなくてもいいと言う。若い時期に孤独を覚えることはない。年をとれば人はみんな孤独なのだから、と。

「これについては夫と私は分かりあえないままですね。親といっしょに住んでいれば、こちらだって言いたくもないことを言いたくなるし、息子も1人でやるべきことを甘えたり頼ったりしてしまう。18歳になったら、もう自立してもいいでしょ。学生のうちは経済的には少しは助けるつもりでいたのだから」

「僕のことが嫌いなの?」と言い出す息子

結局、息子の「家から通う」にサトコさんは屈した。家から追い出すわけにもいかなかったし、夫が息子の味方となったので、息子は出ていかずに済んだ。

「その代わり、あなたについての一切の面倒は見ないからねと息子には伝えました。食事の支度も洗濯もしない。1人だったらやらなければいけないことだから。息子は『一緒に洗濯すれば水道代が助かるじゃん』『どうしてそんなに頑ななの?』『僕のことが嫌いなの?』とまで言い出した」

親が子を自立させようとするのは、動物の世界なら当たり前のことだ。餌を自力でとれるようになったら親子は離れていくことが多い。

「私は親子がベタベタしているのが苦手なんです。もちろんお互い困った時は助け合いたいけど、子どもには子どもの人生がある。早く自分の人生を見つけてほしいし、生活のペースも自分で作ってほしい。夫に言わせれば『人間は動物とは違う。きみには情がないのか』と言われたけど、情があるからこそ自立を促していることを分かってもらえないんですよ」

サトコさん自身も、もうそろそろ改めて自分の人生を歩き出したいのだという。結婚や子どもにとらわれず、1人の人間として仕事と生活を大事にしたい。そのためにも子どもから解き放たれたい。

「こんなふうに思う私は、夫が言うように冷たいんでしょうかねえ」

自由になりたい妻と、かわいい息子とともに暮らしたい夫。まだまだバトルは続きそうだ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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