「いいパートナー関係」としか名付けられない
人には事実婚と思われているのだろうが、カオルさんの気持ちとしては「公私にわたるパートナー」だと言う。「男女の関係である部分が少ないんですよね。恋愛感情で盛り上がるみたいなのが2人とも苦手なんだと思う。そこはかとなく恋心はあるんですけど、それを前面に出すより仕事の話をしたり、一緒に映画を観て議論したり、その方が楽しいんですよ」
いいパートナー関係だと彼女自身が思うのは、彼が彼女と完全に同じ目線でいてくれることだ。男だから女だからということにとらわれず、我を張るより相手の意見を先に聞いてから、自分の意見も言う。そういう男性に出会ったのは初めてだったとカオルさんは言う。
「いつでも私の意見を優先してくれるというわけでもない。でも私の仕事には口をはさまないし、相談しない限り何も言わない。大事にされるってこういうことかと思ったんです。相手の自立性を損なわないというのかな。偉そうにしないし、いつでも感情もフラットだし。無理してないかなと最初のうちは心配していたんだけど、彼は『そういう人』なんです」
だからケンカをしたこともない。仕事で言い合いになることはあるが、それはケンカではなく、いいものを作ろうとするからこその意見のぶつかり合いだ。
「意見をぶつけ合う楽しさも初めて知りました。相手にヘンだと思われたらどうしようと余計な心配をすることなく、私はこう思うって言えるのは本当に気持ちがいい」
「妻」ではなく「パートナー」
他人同士の最低限の礼儀を欠かすことなく、快適で円満なのは、結婚という枠に縛られていないからかもしれないとカオルさんはいう。彼は一度も彼女を「妻」と表現したことはない。2人とも、「公私ともにいいパートナー」だと紹介している。「夫より少し下がって歩くとか、そういうの嫌なんですよ、私。昔はちょっとそういうのに憧れたこともあったけど、私の性格上は無理だとよくわかった。だから結婚にも縁がなかったんだろうなと思います。でもそのおかげで彼に会えたわけだし……」
自分がごく自然にふるまい、ごく自然に自分の考えを言える環境にある今を、カオルさんはとても幸せだと考えているそうだ。