特に電動キックボードのシェアリングサービスは普及しており、韓国PM産業協会によると、2020年の7万台から急増し、2023年には29万台がシェアされている。
交通渋滞が特に激しい都市部では、キックボードをレンタルして通勤する人も増加している。しかし、便利さの一方で事故も多く、電動キックボードが歩行者と激突、あるいは乗用車と衝突し、負傷、死傷者が出るケースが後を絶たない。
交通事故分析システムを基にした韓国道路交通公団の報告によると、2019年に447件だったPM車両の事故は2023年には2389件。死傷者は8人から24人、負傷者にいたっては、473人から2622人にまで急増している。
また、歩行者の通行を妨げるように乗り捨てるマナー違反、キックボードの利用規則を破るルール違反行為も目立つ。
先日韓国のサッカーチーム所属の外国人選手が無免許運転で摘発され、その際韓国での利用ルールを知らなかったと謝罪したが、そもそも韓国人利用者たちの間でも、PM車両の利用に関する規則が十分周知されているとはいえない。乗用車とは違い交通法規が軽視されがちである。
厳罰化が求められる現状
現在韓国では、PM車両は免許証保持者のみが利用できることになっている。利用可能な免許のうち、取得可能年齢が最も低いものは第2種原動機付き自転車免許で、満16歳以上。それにもかかわらず、免許確認が不十分なままレンタルを行う業者もあり、実際には中学生でも利用できてしまう。無免許運転が摘発されると10万ウォン(※約1万1000円)の罰金。1年間は運転免許試験を受験できない。
もちろんヘルメットの着用は義務化されている。しかしヘルメットをしている利用者は少数だ。摘発されれば罰金2万ウォン(約2200円)だが、そもそもシェアライド用の電動キックボードにヘルメットが設置されていない場合がほとんどだ。
電動キックボードは1人乗り用とされているが、違反行為である2人乗りもよく見かける。これは乗車定員違反で罰金4万ウォン(約4400円)。
また、電気用品および生活用品安全管理法により、電動キックボードは時速25キロの速度制限がかけられているが、中には利用時に速度制限装置を外してしまうケースも報告されている。
電動キックボードといえども、運転免許が必要な「車」に分類されるので、当然飲酒運転(対人傷害ではない場合)は違反行為で20万ウォン(約2万2000円)以下の罰金、免許取り消し、停止処分が科されることもある。
PM車両関連の事故の中でも、特に“飲酒運転”による事故の増加は顕著。有名人が起こした事故もいくつかあり、2021年には有名な野球選手が飲酒後電動キックボード乗車時の転倒で飲酒が発覚し、免許停止、10万ウォン(約1万1000円)の罰金処分を受けている。
今年に入ってからは、有名アイドルグループのメンバーによる飲酒運転が報道され、改めて処罰の強化を求める世論が高まったことで、道路交通法の一部改正を求める法案が国会でも発議された。
独自に安全な利用方法や交通ルールの啓発活動を行う自治体も増えており、学校教育の現場でそれらを学ぶ機会が必要だという声も多く上がっている。一方で、利用者の意識改革は難しいとし、パリやメルボルンのように、ソウルからPM車両を排除する議論も必要だと主張をする議員や市民もいる。
利用者でなくとも、誰もが事故に巻き込まれる可能性がある問題だけに、今後政府、各自治体でどのような議論や対策がなされるか、国民は注目している。
<参考>
※レートは2024年10月15日時点のもの