投資先、どこの国がいい?
「日本株に投資すべきかアメリカかインドかどこが良いか聞きたいです」(60代)
ご質問者さまは、どこの国を買うべきかで運用方針に悩んでいるんですね。そこで本記事では、株式投資の「国選び」について、筆者の考えをまとめていきます。
日本株・米国株・インド株、それぞれの特徴
まず1点、ご質問者さまが投資先を日本株に限定していないのは素晴らしいなと思いました。その理由は、投資家は「ホームカントリーバイアス」があって母国への投資が過大になりがちで、筆者自身も日本株を買い過ぎているくらいなのですが、きちんと海外にも目を向けているからです。
そのうえで、「じゃあどこの国に投資するのが良いか?」というと、これはそれぞれの国の(1)カントリーリスク、(2)経済と株価水準、を加味して総合的に判断すべきでしょう。
言うまでもなく理想的な投資先は、国家統治が安定していて、経済の見通しが明るく、そして株価水準が安いところです。
(1)カントリーリスク
まずカントリーリスクの話ですが、前提として筆者は地政学に疎いので、ぜひ質問者さまがじっくり自分で調べたうえで考えていただきたいです。
筆者の認識では、インドは政治・経済情勢が不安定で、金融市場も未発達なので、日本や米国と比べるとカントリーリスクが高い印象があります。最近だと、2023年にアダニ財閥の不正疑惑が話題になりましたが、金融市場で大きな事件が起きやすいと考えられます。
また日本はガバナンスに問題がある企業が多いです。さいきんは大分マシになりましたが、それでも米国と比べると株主を軽視する経営陣も多いですから、その点はマイナス評価です。
地理的な視点に目を向けると、日本とインドは中国の隣国ということもあり、米中新冷戦が続くうちは、中国の勢力を抑える「防波堤」としての役割が大きくなっていくと考えています。これは経済的には追い風と認識していますが、リスク要因でもあります。
米国は、世界一の覇権国家です。同国の政治制度もよくできていると思いますし、米国が世界の貿易のチョークポイントを握っているので手堅い印象があります。世界を揺るがすAIの覇権を持つのもおそらく米国で、これから大きな動きがあるかもしれません。
(2)経済と株価水準
次に経済ですが、経済の成長スピードはインド>アメリカ>日本です。
世界銀行が発表した資料によると、2023年のGDP成長率はインドが7.6%、アメリカが2.5%、日本が1.9%です。
一方、2024年9月時点の株価水準はインド>アメリカ>日本です。
World PE Ratio.comで調べてみた所、2024年9月12日時点のインド株のPERは27.1倍、米国株のPERは25.7倍、日本株のPERは17.4倍でした(計算方法は調べていませんが、たぶんこれは実績PERです)。
これを益回りに直すと、インド株の益回りは3.69%、米国株の益回りは3.89%、日本株の益回りは5.74%です。
インドの政策金利は6.5%、アメリカの政策金利は5.5%、日本の政策金利は0.25%、ということを考えると、インド株・米国株の益回りは無リスク金利よりも低いですが、一方、日本株の益回りは無リスク金利より高いです。
年齢と資産配分
ご質問者さまの年齢(60代)を考えると「大きな失敗はしたくない」お年頃なのかと想像しています。老後資金の安全を確保するのであれば、株式にこだわらず債券などに投資するという手もあります。また、新興国の株は変動が激しいため、先進国株を比べてリスキーな一面もあります。もろもろ含めて「どの国の、どんな資産クラス(株式、債券、不動産など)を買うか」だけでなく「いくらずつ配分するか?」を筆者なら考えます。
投資判断の例
株式投資に限定するのであれば、株価が高くても余りあるくらい「成長する」と考えるならインド株を多めに買う。(例)インド株:アメリカ株:日本株=4:3:3
AIなどの進歩で「ゲームチェンジが起きる可能性が高い」と考えるなら米国株を多めに買う。
(例)インド株:アメリカ株:日本株=3:4:3
成長性が低くとも「適正株価で買うのが手堅い」と考えるなら日本株を多めに買う。
(例)インド株:アメリカ株:日本株=3:3:4
よく分からない、あるいは、自分の頭で考えるのが面倒くさいなら全世界に分散投資する。
(例)オルカンなどで全世界に分散投資する
このように調べたことを頼りにして、「どのように資産を配分すれば、許容できるリスクの範囲内で納得できるリターンにつながりそうか」を筆者なら考えます。
まとめ
投資判断は「自己責任」です。自分の頭でじっくり考えて決めるのが大切ですから、この記事では「どこの国の株がおすすめ」という話は書きませんでした。世界で何が起きていて、それぞれの国がどのような仕組みで動いていて、経済の見通しがどうで、株価は高いのか安いのか。
投資判断はこういう「複雑」な状況を踏まえなければならず、カンタンではありませんが、いちど決めたら変えられないものでもありません。
本記事だけでなく、日本や米国、インドのことをじっくり調べ、勉強してみて、そのときどきでベストだと思う資産配分を考えてはいかがでしょうか。