幼いころから「どうふるまうか」考えていた
人間関係の悩みの原因は、幼少期のトラウマにあることも……
「そうだ、私は実家にいるときから、自分が今どうふるまったらいいかを考え続けていたと気づいたんです。うちは父方の祖父母が同居していて、母はいつも祖母の顔色をうかがっていた。そして私は母のストレスのはけ口になり、仲の悪かった両親の仲裁役にもなり、祖母に甘えることで母への当たりを弱くしなければならないと思っていたんです」
3歳違いの弟は、存在するだけで愛されていた。だが、リツコさんにはいろいろな役目が、誰も何も言わないのに課せられていた。少なくとも彼女自身はそう感じていた。子どものころから周りの大人の顔色を読みながら暮らしてきたのだから、「自分らしさ」などわかるはずもなかったのだと彼女は気づいた。
大人の顔色を読んで生きてきて、苦しかったんだ
「夫にその話をしたら、『そうだったんだ……大変だったね』と言われたんです。その言葉で私、号泣してしまった。夫は軽く言っただけだったようで、私があまりに泣くのでどうしたらいいかわからなかったみたい。でも私自身は、それで少しすっきりしたんですよ。原因もわかったし、少なくとも大変だったねと言ってくれる人が今はいる。過去はもう忘れようと思えた」今でも数人いるシチュエーションで、どうしたらいいかわからなくなる。だが、わからなければ黙っていてもいいと思えるようになった。話をふられたら答えればいい。無理しておもしろい人だと思われなくてもいいし、誰かとキャラがかぶるのではないかという心配もする必要もないのだ。
「実際にはそこまで開き直れていませんが、心の中ではそう思えるようになった。娘には、こんな心配をする大人になってほしくないので、なるべく鷹揚におおらかに接することにしています」
これから少しずつでもいい。自分を解放していこうと思っている。リツコさんはそう言って明るい表情を見せた。