人間関係

自分基準で不快なら「誹謗中傷」と攻撃する匿名アカ…SNSで「意見」すら発信できない異常さ

パリ五輪の開幕以降、SNSやネット上で「誹謗中傷」という言葉をこれまで以上に耳にするようになった。意見や提言までも「それは誹謗中傷だ」と指摘され炎上するとは、異常事態ではないか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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何でも「誹謗中傷」と言いたがる世の中だが……

何でも「誹謗中傷」と言いたがる世の中だが……

パリ五輪の開幕以降、これまで以上に「誹謗中傷」という言葉を聞くようになった。何でもかんでも誹謗中傷と言えばいいというものではない。この言葉だけが独り歩きをするのは怖い。

「これって叱咤激励ですか?」

競泳の元五輪選手・萩原智子さんが、日本代表選手について自分が偉そうなことを言える立場ではないと前置きしながら、自身のX(旧Twitter)上で「日本競泳チームは、次に向けて、収穫、反省、課題……分析してるよね?『チーム全体での対話』をお願いします。年齢、上下関係なく、多少、ぶつかっても腹を割ってとことん話す……第三者が立ち合い、どんな立場であっても安全を保証してほしい。すべてを吐き出して、認め合えたら、本当の意味でのリスタートができると思う。あとはリーダーの選出」とつづった。

自身が代表選手のときも思うところがあったのだろう。第三者が立ち会うことなく、上から下への一方的な指導という名の抑圧もあったのかもしれないと感じるような文面である。代表チームも組織であり、上に年配者が立っているのであれば、そういうことはありがちだ。今こそ、誰でも何でも言えるオープンな組織を渇望しているとも受け取れる。

ところがこれについて「これって叱咤激励って言うんですか? それとも誹謗中傷ですか? 私は成績について外野にあーだこーだ言われたら全て『誹謗中傷』に聞こえますが」というコメントがついた(現在は削除済み)。

「誹謗中傷」と「批判」は違う

誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言いふらして他人の名誉を損なう行いのことである。

類語のように使われる「批判」は善悪や正誤を見定めた上で指摘することであり、必ずしも悪意が含まれるとは限らない。他方、「誹謗中傷」は相手を貶める悪意が先行している。

萩原さんの文章に、悪意はまったくない。自らも身を置いたことのある組織に向けての前向きな提言であり、批判ですらない。

これを「誹謗中傷ですよね」と言い切ってしまうことに、世間の怖さを覚える。誹謗中傷だと言い切ることは、相手を黙らせる支配的な行為ですらあるからだ。

>否定や攻撃でなく「意見」を言えるか?
 
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