円安が続くとどうなる?
「このまま円安が続いていけば、日本社会は崩壊してしまうのか。貧困の連鎖を断ち切るには円高しかないのか?」(22歳・男性)
この記事では、この質問に対する筆者の考えを述べていきます。
円安が続くと日本社会は崩壊する?
「社会の崩壊」をどう定義するかしだいですが、円安=貨幣価値の希薄化と考えると「円安のせいでハイパーインフレが起きて日本で大混乱が起きる」リスクが思い浮かびます。日本が多額の債務を抱えていることに加えて、国民が大幅な増税を支持するとは考えづらいです。そう考えると、このまま円安が続いてハイパーインフレが起きてしまうリスクはあり得ると思います。
長らくデフレが続いていた日本だとイメージが湧きにくいかもしれませんが、貨幣の価値は時間とともに薄らいできています。
たとえば、吉野家の牛丼は約10年前(2013年)には280円でしたが、2024年8月には498円まで上がっています。上昇率は77%です。吉野家の牛丼は極端ですが、おおむね貨幣の価値はゆっくりと目減りしていくものなのです。
貨幣の価値が減ってしまう理由は、貨幣をたくさん印刷するからです。いま日本の政策金利はたったの0.25%ですが、低い借り入れコストで借り放題です。貨幣供給量も年々増えているため、「貨幣そのものの希少性」が薄れています。
貨幣の希少性が急激に薄れると、とんでもない勢いで物価が上がるおそれがあります。トルコなんかが良い例で、同国のインフレ率は「1年で数十パーセント」というレベルです。
ただし、円安も悪い話ばかりではありません。円安になることで外国人が日本に旅行しやすくなっています。ホテルや観光業界は潤うと期待できます。また、円安の影響で「日本のものづくり」が活発になる可能性もあります。円安のおかげで日本の製造コストが安上がりになり、工業を誘致しやすくなるからです。
貧困の連鎖を断ち切ることは円高しかないのか?
ご質問者さまは「貧困の連鎖を断ち切ることは円高しかないのか」と心配なさっているようですが、円安も悪い話ばかりではないということです。一部の人は円安で潤っているのは間違いない事実です。とはいえ、円安も行き過ぎるとハイパーインフレにつながるおそれがあります。ハイパーインフレのリスクを抑えるために、国はどのような手を打つべきなのでしょうか。
1つは金融緩和を止めることです。たとえば、日本銀行が政策金利を引き上げること(=利上げすること)で、日本円の流通量を減らして円高に誘導することができます。
円高になった場合、海外から多くを輸入している会社が潤うことになります。たとえば、電力会社。原子力発電所が止まった今、日本の電力会社は石炭や天然ガスを海外から輸入しています。これらのエネルギー資源は円高になると輸入コストが抑えられるので、円高になると電力会社は儲かるでしょう。
それ以外にも、日本の食物自給率は50%を切っていますから、最終消費者にとっても円高は朗報かもしれません。海外から仕入れた食料品も安く買うことができるでしょうから、円高になると生活が楽になると期待できます。
一方、金融引き締めをすると、変動金利で住宅ローンを借りている人は金利の支払いが増えて生活が苦しくなります。融資を受けている企業も利払いの負担が増えます。新たに発行する国債の利払いも増えるので、国も大変です。
また、円安の恩恵を受けやすいインバウンド消費や、工場誘致が滞るおそれがあります。円安で儲けていた人からすると、円高は逆にリスクとなりそうです。
円安と円高。どちらに転ぶかによって、得をする人、損をする人が分かれます。為替の未来を見通すのはあまりにも難しいです。筆者としては、円安・円高どちらに転んでも良いように資産を運用していくのが良いと思います。