そんな中、時間指定で家の前まで荷物を届けてくれる人たちがいます。玉のような汗を額に浮かべ、荷物をしっかり届けてくれる物流のプロたち。台車を押しながら街を駆け巡る宅配便ドライバーの姿はまさに「街のアスリート」と言えそうです。
後編では宅配ドライバーの苦労や思いについて、宅配ドライバー歴26年のAさん(仮名)に聞きました。
>【前編はこちら】猛暑の中、奔走する「宅配ドライバー」のリアル!1日3回は着替える、歩行距離はゴルフ18ホールと同じ!?
宅配は晴れの日だけではなくて
配送や集荷の仕事は、晴れた日だけではありません。最近ではゲリラ豪雨も頻繁に発生します。こうした雨に、どのような対応をしているのでしょうか。「まずは荷物をぬらさないようにすることが第一です。荷物をビニールシートで覆い、透明のテープで目張りして隙間から水が入り込まないようにします。ちなみに祖母から教わった教訓は今でも生きています。『雨が降り出す30分前には、生温かい風が吹いてくる』と(笑)。そんな風を感じたときは荷物をぬれないようにカバーして、急いで長靴に履き替えます」
荷物のぬれ対策には、お客さまに対応してもらえるとうれしいことがあるそう。A4などの封筒大のパッケージで書類を送るときは、クリアフォルダーに入れて厚紙を同封すると、書類が折れ曲がったり水にぬれたりすることを防げるそう。問題なく届けることは宅配会社の責任でありながら、荷物の受け取り側への気遣いがクレームを減らすことにもなるそうです。
「置き配が当たり前になると助かるのですが……」
物流の2024年問題では「再配達」が頭の痛い課題です。配送に行っても不在によって荷物を渡せないとなると、配送効率を下げてしまうのです。「再配達を行う場合、道路事情で時間がかかってしまいます。例えば、一方通行が多いエリアでは、街の外周の大通りを一周してから元の場所に戻ることになります。場所にもよりますが、そうなった場合は1件再配達するのに20分近くかかってしまうこともあります。
夜の時間指定の配送も変化しました。コロナ禍が落ち着いたあと、残業する人たちが増えたように思います。コロナ中の夜間の時間指定の配送は18時~20時が多かったのですが、最近では19時~21時の時間帯が増えました。
一方で、こうした時間帯に受け取れない場合は土曜日午前中の再配達に変更されることが多いです。また、故郷の親御さんもこの時間帯を指定されることが多いのです。土曜日午前着は日本人が好きな時間帯なのかもしれません」
一方、配送側の担い手不足で、土曜日の配送はタイトになりがちだと言います。「あらかじめ送り手側と受け手側で配送時間のすり合わせができていたり、指定した場所に非対面で届けられる置き配が当たり前になると助かるのですが……」と、Aさんは話します。
インターホンが壊れていたり、不具合のまま放置されていたりする寮やマンションは意外にも多く、再配達の原因になるそうです。こうした不具合があると、在宅でもつながらず、玄関のオートロックを開けてもらうことができません。荷物を届けられないため、再配達が繰り返されてしまいます。物流の2024年問題の解決には物流会社の努力だけではなく、街の人たちの協力も必要と言えそうです。
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