マイナス金利が解除されたけど、住宅ローンは変動金利と固定金利どっちがいいの?
Q. このご時世、固定金利と変動金利どちらがいいのでしょうか?
「住宅ローンを検討中です。このご時世、固定金利と変動金利どちらがいいのでしょうか?」(35歳・会社員男性)A. まだまだ、変動金利がおすすめ!
このご時世とは、マイナス金利が解除された(金利のある世界に戻った)現在のことを指しているのかと思いますが、預貯金の利子が増えることはうれしいものの、住宅ローンを組んでいる方やこれから組もうとされている方には、厄介なタイミングといえなくもありません。インターネット記事や週刊誌では、「変動金利神話の崩壊(※)」などの見出しがおどっていたりもするので、変動金利は危険といった印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。確かに、固定金利には、金利が変動しない安心感があります。特にフラット35であれば、最長35年後の金利も確定しているため、なおのこと安心でしょう。
一方で、変動金利は、固定金利よりも低い金利で借りられるというお得感があります。例えば、三井住友信託銀行では、変動金利の店頭表示金利が2.475%のところ適用金利は0.33%となっています。諸条件を満たせば、さらに0.03%下がるようです。
これをフラット35(融資率9割以下・新機構団信付)で借りるとなると、当初5年間の金利は0.85%、6年目以降が1.85%となります。バブルの頃をご存じの方であれば、1.85%も超低金利の部類に属するのですが、現在の変動金利と比べると割高感があります。
具体的に返済額をシミュレーションしてみましょう。例えば、5000万円を借りる場合、
・変動金利0.3%であれば、月々の返済額は12万5421円
・フラット35(融資率9割以下・新機構団信付)であれば、当初5年間の月々返済額は13万7674円、6年目以降が15万8390円
これは、あくまでも変動金利が上がらなければの話ですが、借り入れから6年目以降の約3万3000円の差は、やはり大きいと言えるのではないでしょうか。
また、ここで抑えておくべきことは、金利優遇(店頭表示金利と適用金利との差)という値引き合戦が行われていることです。
住宅ローンを借りる際には団信の保証内容なども大切ですが、まず、検討するのは金利の低さです。だからこそ、金融機関は金利優遇によって魅力のある金利を提示しているのです。仮に、今後変動金利の金利が上昇したとしても、この金融機関の値引き合戦に乗って、今の固定金利よりも低い金利で借り続けることができる可能性は十分にあるのです。
さらに、今回のマイナス金利解除においても、日本銀行が慎重な姿勢をみせたように、賃金の上昇を伴わないインフレであれば、変動金利は上がらないといったことも考えられます。
また、(このご時世に限ったことではありませんが)預貯金のある方、つまり、いざとなれば繰り上げ返済や一括返済などで金利上昇の影響を回避できる方にとっても、「続・変動金利神話」なのです。
とはいえ変動金利を選んだとしても、仮に固定金利を選んだ場合との差額(前述のシミュレーションであれば、約3万3000円)は貯蓄に回すなどして、今後の金利上昇に備えておきたいところです。
(いずれの金利表記も2024年6月末時点・筆者調べ)
※変動金利神話の崩壊とは、バブル崩壊後に長らく低金利が続き、変動金利が上がる見込みは低いと考えられていたが、マイナス金利が解除されたことで、必ずしも変動金利が有利とは言えなくなったこと
文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。