筆者が運営する「恋人・夫婦仲相談所」においても、ときどき相談者から寄せられる質問のひとつです。自分たちの状態を“見える化”したい願望は、少なからずあるようです。
「スキンシップ」に関する夫婦間の2大悩み
そこで筆者は、夫婦仲良し度のことを「FND(ふうふ・なかよし・ど)」と名付けて5つの指標を作成していますが、その指標の1つがスキンシップです。筆者の相談所に寄せられる「スキンシップ」のお悩みは大きく2つに分類されます。
1つは「スキンシップがない、拒否される」というお悩み。そしてもう1つは「パートナーからのスキンシップが不快だ、やめてほしい」というお悩みです。
この2つは真逆のようですが、実はどちらも「スキンシップのやり方や心地よい距離感が夫婦間ですれ違っている」という問題に起因しています。
ではなぜ、このようなすれ違いが起きてしまうのか。
「スキンシップ」は本来、心地よいもの
本来、スキンシップは「心地よいもの」として脳に刷り込まれています。子育て経験者は、ベビーマッサージやハグなど、子どもとのスキンシップが推奨されていることはご存じでしょう。
母親が子どもにスキンシップをはかると、子どもの脳内ではオキシトシン(愛情ホルモン)が分泌され、幸せな気分を高めるセロトニンの分泌も促されます。つまり、スキンシップによって子どもは不安な気持ちやストレスが軽減されます。そしてスキンシップをはかった親にもオキシトシンが分泌されるため、子どもと同じようにリラックス効果を得られることになります。
このようにして、スキンシップのおかげで母子双方の精神が安定し、お互いへの信頼や愛情を深める効果が得られるのです。
スキンシップが心地よいのは、相手との信頼関係や愛情などの「精神的な結びつき」があってこそ。心を許していない相手からのスキンシップは痴漢やセクハラと一緒で、心地よいとは真逆で、受け入れがたいストレスあるいは恐怖になります。
「夫婦ならスキンシップは当たり前」とは限らない
つまり、「夫婦だからスキンシップは当たり前」「夫婦だからいつどんな風に触ってもよい」とは限らないことを理解しておきましょう。実際に、スキンシップへの価値観は人それぞれ違います。
人によっては他人に触られることはもちろん、物理的な距離が近いことにすら不快感を示す人もいます。一般的に夫婦はパーソナルスペース(=他者に侵入されると不快に感じる心理的なテリトリー)が最も近い(狭い)関係と言われますが、それでもすべての人が距離感ゼロなわけではありません。
そして「心地よい距離感」も長い夫婦生活の中で不変ではなく、時間の経過とともに変化していきます。
結婚当時は「べたべたすること」「イチャイチャすること」が好きだった妻が、年を経るとスキンシップが苦手になることもよくあります。そして、その原因は単に「恋愛感情が無くなった」だけではなく、夫からの「スキンシップの取り方」にあることも珍しくありません。
夫婦の「スキンシップ」具体例から考えるNG理由
まず、シズカさん(仮名・46歳)の例です。【NG理由】このスキンシップは、「タイミング」に大きな問題があります。働く母親にとって一番忙しい時間帯に、妻の気持ちを1ミリも考えず、お尻を触って「なんか手伝おうか?」とズレたことを言っている時点で最悪です。家事にあまり貢献していないであろう普段の行動が、妻の怒りを倍増させているようです。「夫からのスキンシップにイライラします。フルタイムの仕事から帰宅して、大急ぎで夕飯の支度をしている時、急に後ろに立った夫が私のお尻をなでながら『忙しそうだね? なんか手伝うことある?』とのんきに聞いてきます。私のお尻に触ってる暇があったら、黙ってさっさと食器と箸でも出さんか、このボケ! とマジでキレそうになります」
一方で、マドカさん(仮名・35歳)の例はどうでしょうか。
【NG理由】このスキンシップの問題点は、「触る場所」と「かける言葉」にあります。本人は妻の豊富な皮下脂肪を、愛情を込めて“軽くいじった”つもりだったのかもしれませんが、やっと訪れた妻のリラックスタイムをぶち壊しにする、最低なアプローチになってしまったようです。「子どもたちもベッドに入って、忙しかった一日もようやく一段落。ここからはやっと自分の時間! とばかりに最近ハマっている動画をリビングのソファに寝転んで見ていると、通りがかった夫がニヤニヤしながら『うわー、タプタプ』と言って、私の太ももを触ってきます。
その触り方も言葉も本当にウザくて『やめてっ!』と、本気で夫に怒鳴ってしまいます」
これらの事例で明らかなように、触られるタイミングやシチュエーション、触る場所、かけられる言葉や態度、さらには日ごろの夫に対する感情の積み重ねが、そのタッチを心地よいものにしたり、不快なものにしたりします。
妻から夫に「スキンシップの問題点」をどう伝える?
従って妻側は、夫のスキンシップが「心地よくない」と思った時には、上手にその理由を伝えて、改善を求めることが大切です。「やめてっ!」「触らないで!」「キモい!」だけでは事態の改善につながりません。具体的に何がいけないのか、どうしてほしいのかを言葉で伝えるのです。
【ポイント1】何がダメなのかを具体的に指摘
・「家事で忙しい時はやめて」「生理中で体調が悪いから触られたくない」など、タイミングが不適切であることを指摘
・「ここは触られたくない」「そういう言葉を言われるのはバカにされてるみたいで悲しい」など、触る場所や言葉が不適切であることを指摘
【ポイント2】どうしてほしいのかを具体的に指示
・「胸やお尻は嫌。手や肩にしてほしい」「ぎゅっと力を入れずに優しく触れてほしい」など、触る場所や触り方への希望を指示
・「急に触られたらびっくりするから、先に声をかけてほしい」「私の体は私のものだから、私の気持ちを尊重してほしい」など、タイミングの配慮や妻へのリスペクトの必要性を指示
効果が出た! 妻からの改善案で夫の「スキンシップ」に変化
こうした改善策を実践した結果、スズカさん(仮名・42歳)のような効果が出た例もあります。スキンシップがコミュニケーションの一環であることが、この事例から感じていただけると思います。「夫に、『私の許可なく勝手に触らないで』と冷静に伝えて理解をしてもらったおかげで、最近の夫は『ハグしてもいい?』と私に許可を求めるようになりました。照れながら言うその様子が、付き合い始めたころに戻ったようにちょっと新鮮です。
私が『いいよ』と言うと『ありがとう』と言いながらそっと抱きしめてくれます。こんなスキンシップは、よそよそしい感じに聞こえるかもしれませんが、夫が私の気持ちを大切にしてくれていると思うと、とても幸せな気持ちで満たされます」
「夫に触られるのが不快」という方は、避けたり拒否したりするだけではなく、ぜひ改善の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
スキンシップレスはセックスレスの着火点
筆者はセックスレスの予防改善を専門にしていますが、スキンシップレスはセックスレスの着火点になりえます。セックスレス夫婦にはなりたくないなと1ミリでも感じているならまずスキンシップを継続することがいかに重要かに向き合ってください。夫婦仲良し度(FND)は確実に高得点になります。