「解体パズル」が、食材としての生物の部位や生態を、パズルとして楽しみながら覚えたり理解したりして、さらに遊んだあとは、フィギュアとして飾っておけるという全方位的な製品なのに比べ、「解体パズルLite」はどちらかというと「パズル」であることに比重を置いた製品になっています。
ラインアップも、今回の「解体パズルLite たこ焼きパズル」をはじめ、「にんにく」「うに」「納豆」「寿司」と、食べ物自体をモチーフに、その内部構成ではなく、バラバラになったパーツを組み立てて、それらの食べ物の形にするという製品なのです。
これだけ聞くと、なんだか簡単そうに思えますが、例えば、「たこ焼き」の場合、いざバラバラになると、組み合わせる向きも分からなければ、球体のどこに位置するのかも、実際にさまざまなパターンを試してみないと分かりません。
つまり、これは出来上がりが“立体になったジグゾーパズル”に近いパズルなのです。「たこ焼き」の場合、全部で10個の生地パーツに、タコパーツが2個、ソースのパーツも2個あって、ここから2個のたこ焼きを作らなければなりません。
つまり、まず、生地パーツから、ひとつの球になる5個のパーツをより分ける必要があるわけです。タコパーツもほとんど同じに見えますが、実は形が違っています。ソースパーツも同じです。
ふわっと握って壊さないように組み立てる繊細さも必要
とにかく、どれとどれがうまくハマるのかを総当たりで試していくことになるのです。しかも、各パーツは正しく組み合わせれば隙間なくぴったり球形になるのですが、正しい組み合わせだからといって、パチンとハマるわけではありません。なので、球形を指の中で保ちながら、他のどのパーツが合うのかを試さなければなりません。タコも、パーツを2つ組み合わせた状態で入れる必要があります。後から入れることはできません。
そうやって組み立てているうちに、だんだんコツはつかめるのですが、うっかりパーツを取り落としたりすると、どの向きでハメるのが正解かすぐ分からなくなりますし、きちんとハマっていると思っていたものが、タコを入れてみるとうまく入らず、最初からやり直しになったりと、シンプルな形状で、パーツも全部で14個しかないのに、結構時間もかかるし、丁寧な作業が要求されるし、頭も使うのです。「Lite」と言ってる割に、パズルとしての難易度は「解体パズル」以上。
出来上がったら飾りたくなるたこ焼きとしてのリアル
ただし、パズル要素が強いといっても、そこは「解体パズル」の仲間ですから、ちょっとした仕掛けやユーモアも忘れていません。たこ焼きといえば、舟に入っていて、見た目的には4個くらいはないと飾ったときに様になりません。そこで、ダミーのたこ焼きが2個付属。組み立てた2個と一緒に付属の舟に乗せて、さらにダミーのたこ焼きの上部に空いた小さな穴につまようじを刺すことができるようになっているのです。
表面の凹凸や色、透明素材で作られたソースのパーツなど、見た目のリアリティーも手抜かりなく作られているので、完成すると、本物のたこ焼きみたいです。 生地パーツとソースパーツで素材を変えてあったり、タコの断面の白くなっているところがやけにリアルだったり、そういう細部にこそ気を配って作られているから、組み立てている側も、単にパズルを組み立てているというのではなく、たこ焼きを作っているという気分になることができます。
タコなんて完成してしまえば外からは見えなくなるのに、食べたときに生地からのぞくタコの断面の白さを再現しようと努力して作られたあとがあるのが、遊ぶ側としてはうれしいのです。
遊んでみると分かるユーモアとアートの絶妙なハイブリッド
このシンプルな造形で、一見簡単そうで、実際に遊んでみると思いのほか手ごわくて、しかし、頑張ればどうにか糸口がつかめてきて、何とか形にすることができるようになるという、そのバランスとデザインの絶妙さが、このパズルの醍醐味(だいごみ)でしょう。実際、筆者も、「たこ焼きパズル? 簡単そう」と思っていました。箱には「難易度:フツウ」と書かれているしと、寝る前に作り始めたら、やめられなくて2時間ほど格闘した末に、眠くて諦めて、翌日、ようやく完成にこぎつけました。それでも頑張ればどうにかなるわけで、そのあたりが本当によく出来ているのです。 この製品の開発担当者は、「解体パズル ホホジロザメ」の開発担当と同じ、株式会社メガハウス トイ事業部企画チームの芳賀智江さん。彼女によると、開発的にはサメよりたこ焼きの方が全然大変だったそうです。
特に、試作品を何度も組み立てて、きちんと組み上がるかどうかだけではなく、細かくバランスや難易度の調整も行わなければならないのが大変だったそうです。タコの断面のリアルさも、彼女が特にこだわった部分だといいます。
作っている最中に、中からタコが見えている様がかわいくなるはずというのが、たこ焼きのパズル化のポイントで、だから、切り口にリアルさが必要なのです。
そういう意味では、「解体パズル」同様、この「解体パズルLite」もアート的な製品だと言えるでしょう。舟とダミーを用意してディスプレイできるようにするというのも、飾られることを想定しているからこそ。
それでいて、きちんとふざけていて、「オモチャ」であることの矜持のようなものも感じます。「解体パズル」同様、「解体パズルLite」も続いていくそうなので、たこ焼きで遊びつつ、次回作にも期待しましょう。