食材から離れた野心作「解体パズル ホホジロザメ」ができるまで
食材がモチーフになっているのも、そういう部分への配慮なのでしょう。ところが、今回ついに、食材を離れてホホジロザメが取り上げられました。当然、パズルのパーツも内臓です。「食材に縛られると、どうしても狭い展開になってしまうというのがあって。それでも中身が気になる生き物はかなりたくさんいると思っていました。それでちょっと変わった生態で、中身が気になって、中を開けた状態が人間的に拒否反応の起きない、グロくないものはないかと考えたんです。
犬や猫は正直イヤですし、中身にも興味が持てません。そう考えていって、モチーフとして人気があるものならサメ、それもホホジロザメだよねと企画がまとまりました」と今回、「解体パズル ホホジロザメ」の開発を担当されたトイ事業部企画チームの芳賀智江さん。 2025年は映画『ジョーズ』の公開50周年ですし、サメ映画は日本でも大人気です。しかも、この「解体パズル ホホジロザメ」は、それだけの製品ではありません。実際に組み立ててみると、サメの体内がいかに興味深い構造であるかが理解できると同時に、ディテールまで徹底的に作り込まれている製品としての楽しさに圧倒されました。
例えば、目が片方、別パーツになっていたり、頭の骨の中に小さな脳を差し込むようになっていたり、子宮の中には子サメがいて、胃の中には何か分からない謎の骨が入っていたりします。
「サメは何でも食べるから、胃の中から正体不明の謎の骨が見つかることがあるらしいんですよ。そういったサメの性質を表現したくて、骨を入れました。製品を作るにあたって、ホホジロザメについてかなり調べたんです。そこにかなり時間がかかりました」と芳賀さん。
リアルとかわいいの絶妙さにユーモアもプラスするバランス感覚
さらに、このシリーズ全体の特徴として、各パーツはリアルに造形しつつ、全体はかわいらしく見えるような配慮がなされているという点があります。牛にしても顔がかわいくて、足がちょっと短いことで、全体のフォルムに愛嬌(あいきょう)があります。マグロの顔もそうですし、サメに関しては、芳賀さんはつぶらな瞳になるように、何パターンも提案されたのだそうです。「サメって目が死んでいるというイメージがありませんか? でもそこをリアルにしてしまうと怖くなりすぎる。それはこのシリーズでは微妙だなと思っていて。サメに関しては、それこそ『ジョーズ』みたいに怖い顔にしてもいいかとも思ったのですが、愛らしさがないと、体半分の中身が見えてしまっているから、かなり怖いモノになっちゃうなと。なので、歯茎は見えているけどあごや歯は控え目になっていたり、少し寸詰まりなフォルムにしたりと、いろいろ考えています」と芳賀さん。 水しぶきを上げてサメが水上に現れているように見える台座が付属しているのですが、これにも仕掛けがあって、サメの背びれのパーツだけを、このスタンドに装着できるようになっています。そうすると、サメ映画でおなじみの「水上を背びれだけが近づいてくる」あのシーンが再現できるわけです。
それこそ、最初の焼肉パズルのお皿に始まり、「一尾買い!!トラフグ解体パズル」のフグ調理師免許証、「一本買い!!キングサーモン解体パズル」のサーモンの寿司など、何かひとネタを仕込むことが、この「解体パズル」シリーズの伝統になっているようです。
「初代の担当者がとにかく凝る人で、今回私がサメのパズルを制作するにあたっても、その人にいろいろ教えていただいたんです。もう本当にモノづくり全般に渡って勉強になりました。一応、私が解体パズルの2代目担当ということになるのですが、緻密でこだわりが強くて、愛情を持って要素を詰め込むといったところは受け継いだと思っています」と芳賀さん。
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