住宅ローンを検討するとき、不動産に紹介された金融機関を利用した方がいいのか
Q. 住宅ローンを検討する際、不動産業者にいくつか金融機関を紹介されましたが、何か裏がありますか?
「住宅ローンを検討する際、不動産業者にいくつか金融機関を紹介されましたが、何か裏がありますか?(実は利率が悪いなど)自分で見つけた金融機関の方が、利率の良いローンを利用できるのでしょうか?」(35歳・会社員男性)A. 悪質な裏はありませんが……
まず、不動産業者の会社案内やホームページなど、何らかの資料で、取引銀行を確認してみてください。おそらく、いくつか紹介された金融機関の名前が列挙されているかと思います。不動産業者と金融機関との関係から、月単位や年単位で、住宅ローンの案件を何本か紹介してほしいといった約束があったりもするため、裏があるといえばあることになります。このいわゆる「不動産業者の提携ローン」は、一般的に、通常よりも金利優遇幅(店頭金利と適用金利との差)が大きいため、検討に値するかと思います。
もっとも、利率が最も低いから紹介されているわけではないため、より低い金利で住宅ローンを組むためには、買主自身でネット銀行をはじめ他の金融機関も検討しなければならないでしょう。
ただし、その際にはローン条項の期限や、物件の引き渡し日に注意しなければなりません。
ローン条項の期限に注意する
住宅ローンを利用する不動産売買契約の場合には、ローン条項といって、例えば「令和○年○月○日までに○○銀行○○支店の融資が不成立であった場合、本契約は当然に効力を失う」などの文言が、期限とともに規定されているかと思います。これは、買主を守るための取り決めです。原則として売買契約締結後に、予定していたローンが実行されず、買主が代金を支払えない(代金支払債務を履行できない)場合には、売主から(債務不履行を理由に)売買契約を解除され、これに加えて、売買契約に定められた違約金(一般的には売買代金の20%相当額)を支払わなければなりません。
原則論では、買主にとって過酷な事態を招き、結果的に住宅用の土地建物売買取引に萎縮効果をもたらすことになりかねません。
そこで、登場するのがローン条項という特約です。万一、予定したローンが実行されない場合でも、売買契約をペナルティーなしで解消できるようにするもので、あらかじめ売買契約書に、融資が受けられないことが確定した場合は契約を解約できる旨が規定されています。
ただし、ローン条項には期限があり、その期限内に融資の可否を確定させなければなりません。これを過ぎてしまうと、違約金の支払いといった最悪の事態になりかねませんので、ご自身で金融機関を探す場合は十分に注意したいところです。その点、提携ローンであれば、スケジュール管理を不動産業者に任せられるため、買主としては安心です。
また、ネット銀行など自分で見つけた金融機関で融資を受ける場合には、お仕事を抱えながら、期限内に手続きもしなければならなくなり、大変になってしまいます。しかも、住宅ローンの審査書類は多く、複数の金融機関に提出する場合、書類を書いて必要書類を集めるだけでも面倒な事務作業になっています。
金利差や総支払額などを確認して、可能であれば、提携ローンで審査を進めながら、金利の低いネット銀行などを一つ厳選して、自分で申し込みすることがベストな選択ではないかと思われます。
物件引き渡し日までの段取りも重要!
また、ローン条項の期限と同様に、物件の引き渡し日も重要な決め事です。引き渡し日に融資を受ける金額が実行されないと、違約金の支払いにもなりかねません。自分で申し込んだ金融機関で融資を受ける場合には、引き渡し日までに決済できるように段取りすることも必要となるでしょう。文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。