再開発が進む、中野駅周辺
再開発が進む中野区
中野区の地域のシンボルとして永く愛され、地元経済の成長をけん引する存在であった「中野サンプラザ」が2023年7月2日に、50年の歴史に幕を閉じました。中野サンプラザに入居していたテナントや地域住民からは、これまでの感謝とともに閉館を惜しむ声も聞かれましたが、老朽化しているとはいえ、なぜ解体されることになるのか?というと「再開発」というのが答えとなります。
実際、中野サンプラザの跡地には収容規模7000人のホールやホテルに加え、オフィスや住居、商業施設などが入る地上60階、地下3階、高さ250メートルほどの高層ビルが建設され、2028年度の完成が予定されています。
このように、JR中野駅前は、「中野サンプラザ」だけでなく、既に新庁舎に移転された中野区役所をはじめ、駅周辺が大きく再開発で変化しようとしています。この規模の大きさから、渋谷駅周辺同様に「100年に一度の再開発」と呼ばれる地域となっているのです。
中野区の中古マンション相場
中野駅周辺の再開発が注目されるのには、都内屈指の繁華街である新宿にも近く、JR中央線、中央総武線、東京メトロ東西線の3路線を利用できるといった利便性の高いエリアであるといった理由があります。2024年5月の相場情報としては、利便性の高さに加え、再開発が進んでいることから、中野の3LDK~4DK規模のファミリータイプの中古マンションの相場は、7059.52万円となっており、同沿線の人気エリアである吉祥寺の同規模のファミリータイプの中古マンションの相場の6870.33万円を上回っています。
街の再開発の意味と目的
そもそも、再開発には、都市再開発法に基づく「市街地再開発事業」をはじめ「防災街区整備事業」や「優良建築物等整備事業」などのほか、さまざまな形態の再開発があります。近年では、高度経済成長期に建てられた団地などのマンションが、「マンション建替事業」などとしてもよみがえっています。これらの再開発の意味は、「一度造られた建造物から成る街を、時代に適合した形態に組み替えること」です。そして、再開発によって、商業施設や交通網が整備されて住みやすくなったり、企業を新しく誘致することで新たなコミュニティーが形成され、地域が活性化したりするといった目的が達成されるのです。
不動産業界における再開発の考え方
不動産取引といった観点からは、再開発によって、街のブランド力が上がるため、市場での需要も高まり、不動産取引が盛んになる状況が見込めます。不動産売買や不動産投資を検討している方にとっては、「再開発」というトピックは大注目に値するのではないでしょうか。もっとも、再開発で新しい街になると思いきや、過去のやり方を引きずる「厄介者」がいることも知っておいたほうがよいでしょう。
というのも、市街地再開発事業では、第一種市街地再開発事業(権利変換方式)と第二種市街地再開発事業(用地買収方式)に区分されるのですが、厄介者が出現しやすいのが、第一種市街地再開発事業(権利変換方式)なのです。
中野駅周辺では、およそ11の再開発プロジェクトが進行しているといわれていますが、中野四丁目新北口駅前地区をはじめとした4つがそれに該当します。
この権利変換方式というのは、施工地区内の権利者(土地の所有者など)の権利を、等価で、新しく建てられる再開発ビルの敷地や床に関する権利に置き換えるものです。
こういった場合、例えば、昔から自分の土地で商売をしていたお店であれば、これまでは自分の土地に看板を出そうがのれんを掲げようが自由に行えました。しかし、権利変換後の新しいマンションでは、区分所有者の一人としてマンション管理組合のルールに従わなければなりません。具体的には、マンションによって、看板を出すのに制限を加えられたり、看板使用料なんかの名目の費用が発生したりすることもあります。
しかし、これに納得せず、ルールを無視したり、払うべきものを払わなかったりといった事例もあるのです。マンション全体の規律やマンション管理組合の会計といった観点からは、好ましい状況ではありません。
そのため、特に、第一種市街地再開発事業(権利変換方式)によって建てられるマンションで低層階に商業施設が入る場合は、トラブル要因が潜在していることを知っておいたほうがよいでしょう。
文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。