飲食ができ、本を購入できるのが図書館との違いで、1タイトル1冊ずつしか置いていないので次に来たときにはないかもしれないのが一般的な本屋との違いです。
「文喫 栄」は、これまでの2店舗(六本木/2018年12月開業、福岡天神/2021年3月開業)とは異なるさまざまな特徴が。まずスケールが最大。370坪152席3万冊(六本木/120坪70席3万冊、福岡天神/180坪120席3万冊)と広々とした空間に多彩な本を取りそろえます。
時間料金制やモーニングなど名古屋独自のシステムも
一番の特徴である入場料は、初めて時間料金制を導入。六本木/1650円(税込、以下同。土日祝2530円)、福岡天神/大人1650円(土日祝1980円)、大学生1155円(土日祝1386円)、中高生825円(土日祝990円)、小学生550円と、既存2店が1日通しの料金であるのに対して、「文喫 栄」は90分825円(延長30分275円、1日最大2475円 ※3歳以下無料)となっています。実は90年代以降一世を風靡(ふうび)したマンガ喫茶の時間料金制は名古屋が元祖。その点でも名古屋らしいといえますし、価格にシビアな名古屋人にとっては、最低料金が低く設定されることで、入場の際の心理的ハードルがグッと下がります。 「本屋と喫茶大ホール」という独自のテーマにも「文喫 栄」ならではの特徴が現れています。喫茶店文化が根づく名古屋の土地柄に合わせて、空間もメニューも喫茶店らしさをより色濃く。とりわけ正面のエリア「喫茶 セントラルサニー」は、ステンドグラスやタイルの装飾など古き良き時代の喫茶店をほうふつとさせます。
フリーで利用できるドリンクも種類をより充実させ、「文喫 栄」オリジナルのブレンドコーヒー、自家製レモネードなどここだけの味も。フード類も充実していて、名古屋喫茶発祥の鉄板ナポリタン、赤味噌で味変できるキーマカレーなど、ご当地の味を取り入れています。
レトロ喫茶の雰囲気を醸し出すステンドグラス。小倉トースト、鉄板ナポリタン、エビフライ、プリンアラモードなどがカラフルでかわいい。愛知県岡崎市の中日ステンドアートがデッドストックのガラスなども使って制作
入場者の半数が本を購入。客単価は一般書店の2倍以上!
実は「文喫」を運営するのは本の大手取次会社である日本出版販売株式会社。「文喫」には「本を手に取ってもらうきっかけづくり」という狙いがあります。同社広報課によると「本の買い上げ率は非常に高く、六本木と福岡天神では入場者の半数近くが本を購入されています。また、本の購入単価も高く、通常書店の2倍以上になっています」といいます。 「文喫 栄」では「本屋というよりも喫茶店としてご利用するお客様が多い印象です」と店長の棚橋さん。「シニア世代による短時間の利用が多い」といいますからまさに喫茶店感覚です。その一方で「4~5冊まとめ買いするお客様も少なくなく、また普段はなかなか手を出しにくい、1万円を超す高額な本をお買い求めくださる方もいらっしゃいます」とのこと。
店内はレトロ喫茶調の「喫茶 セントラルサニー」の他、落ち着いた書斎風の「読居 嘴広鸛」(ハシビロコウ)、小上がりでクッションに体をうずめてくつろげる「POPUPスタンド COFFE」(コッフェ)、ビジネス書を中心にそろえて個室ブースや会議室もある「WORK&STUDY DENGEN」など、多彩なスペースがあり、用途に合わせて使い分けができそう。
地元の人気カフェやサンドイッチブランドとのコラボもあり、食との出会いも併せて楽しめます。さらに「平日は名古屋独自のフードメニュー+入場料のランチプラン=1485円がある他、デザートプランの導入も計画中」(店長・棚橋さん)とのことなので、使い勝手はいっそうよくなりそうです。 町の書店が減少している中、新しい本との出会いを提供してくれるのが「文喫」の魅力。書棚は細かくテーマごとに分けられ、少しずつひもづいたタイトルが並べられているので、まったく知らなかったけれど興味を引く本が次々に見つかります。本好きの人はもちろん、普段読むのはベストセラーや好みの分野のガイドブックが中心というライトユーザーも、来る度に一期一会の本との出会いがあるはずです。