「お金があれば不幸は避けられるが幸せにはなれない」というデータ(1)もあります。お金をもつことで「将来の不安を抑えるクッション材」の役割になります。だから安心感が高まるのですが、「安心なだけで幸せか?」というと、そうはいかないようです。「不幸を避ける」ことと、「幸せになる」ことは、同じようでいて違います。
買い物を何倍も楽しむコツ
「お金を貯めても幸せになれない」……ということは、幸せのカギを握るのは「お金の使い方」です。ではどうすれば、より幸せな「お金の使い方」ができるでしょうか?買い物を楽しむコツは「迷っているときのワクワク感」を最大限楽しむことです。
人間というのは不思議なもので、「欲しいものを手に入れる」とすぐに飽きてしまうのですが、「欲しいものについて調べている」ときは決まってワクワクしています。よく買い物は「迷っているときが一番楽しい」と言いますが、この「迷う」楽しみを、いろんなところで味わうのが、楽しくお金を使うコツだと思います。
たとえば筆者はゲームオタクなので、連休前には「次の連休にどんなゲームをやろうかな?」とどんな新しいゲームを買おうか悩みます。実際にゲームを買うとすぐに飽きてしまったり、「思ったのと何か違う」と後悔したりすることも多いのですが、たとえ数百円~数千円の買い物でも「あっちにしようかな~」「こっちにしようかな~」と悩む工程は、なんど繰り返しても楽しいです。
また、エリザベス・ダンらの研究(2)によれば、「大きなモノ消費」より、「小さなコト消費」のほうが満足感が高いようです。
コト消費というのは、「モノを買う」のではなく「体験を買う」消費のことです。たとえば、ランチに出かけるとか、イベントに参加するとか、習い事をする、といったものです。
コト消費は「迷う」材料が多いです。なぜなら、モノ消費と違って単純に比較できないからです。たとえば「休日のランチ」1つを取っても、「新しくできた中華の店に行く」か「新しいレシピに挑戦する」かでは、まったく毛色が違います。そのぶん、迷う時間も楽しいですし、かつ、経験したことが思い出となって残ります。
筆者はブランド物のバッグなどをドカンと買ってパーッとお金を使うのも気持ちが良いですが、案外、すぐに飽きてしまうものです。その点、友達や家族とおいしいレストランに出かけると、「あのお店はおいしかったね~」「あそこの店はハズレだったね~」と、思い出も残ります。
時間がないときには、即断即決でパパッと手際よく決めなきゃいけないときもあります。しかし、余裕があるときには、「あっちにしようかな~」「こっちにしようかな~」と、少額な支出について、時間を気にせずのんびり迷う時間を作ってみてはいかがでしょうか。
参考
1. Kushlev, K., Dunn, E. W., & Lucas, R. E. (2015). Higher income is associated with less daily sadness but not more daily happiness. Social Psychological and Personality Science, 6(5), 483–489. https://doi.org/10.1177/1948550614568161
2. エリザベス・ダン著, 「幸せをお金で買う」5つの授業