伝統の味を守りつつ、新たな魅力もプラス
看板商品・鯱もなかのパッケージは2022年にリニューアル。6個入り(左・980円)と9個入り(右・1360円)を並べると名古屋城の天守閣になる。名古屋城売店、名古屋駅のグランドキヨスク名古屋などで販売
名古屋のシンボル、金シャチ(金のしゃちほこ)をかたどった最中は、かつてはいくつも類似商品があったそうですが、今も残るのは元祖であるこの店の商品をはじめごくわずか。イカつさの中に愛嬌もある金シャチの形は、名古屋人の郷土愛をくすぐると同時に、意外やSNSでも映えると購入・写真投稿する人が後を絶ちません。歴史ある商品を残していけるよう、伝統の味を守り続けていると言います。 また、中身のおいしさは変えない一方、装いは一新。主要な商品のほとんどはパッケージをリニューアルし、店頭での存在感をアップさせました。さらには新商品の開発もこの4年間で20種類以上。「新旧の商品の魅力アップ」にも積極的に取り組んでいるのです。
そして何より確かな商品力があるからこそ、ファンが継続し、リピーターになっていると花恵さんは胸を張ります。
「『パッケージが変わったから久しぶりに食べたけど、やっぱりおいしいね』とか、『あんこはあまり好きじゃないんだけど、鯱もなかはおいしく食べられる』とおっしゃっていただけることが多くて。お菓子の専門学校へ通ってあらためて勉強したからこそ、自信はあります。今後もさらにおいしい商品を作っていきたいと思っています」
“推し活”するファンが集うコミュニティー作り
今、商品のヒットに欠かせないのが「コミュニティー作り」と言われています。お店や商品のファンの主にオンライン上のつながりです。「元祖 鯱もなか」は、花恵さん、憲司さんらの頑張りがコミュニティーの核となり、コラボや新商品などの話題、素直な思いの発信がコミュニティーの参加者の“推し活”の輪を広げています。そして、お菓子にとって何より大切な“おいしさ”が、ファンをつかんで離さない原動力になっています。SNS全盛の時代にマッチした取り組みに力を入れつつも、和菓子の老舗としての味作りも決しておろそかにしない。この両輪のバランスが高い次元で取れているからこそ、「元祖 鯱もなか」は奇跡の復活を果たし、そして愛されているのではないでしょうか。
名古屋を訪れる際にはぜひ、販売店や本店に足を運び、その魅力、おいしさにふれてみてください。