名古屋の観光・旅行

コロナ禍で売上激減、廃業寸前のピンチからなぜ?「元祖 鯱もなか本店」が奇跡のV字回復を果たしたワケ(2ページ目)

元祖 鯱もなか本店は創業110余年の名古屋の老舗和菓子店。多彩なコラボ商品を発売し、SNSのフォロワー数5万人超の話題の人気店だ。しかし、ほんの数年前は“廃業寸前”の状態だった。どうやって奇跡的なV字回復を果たしたのか? なぜ今、こんなに愛されているのか? その秘密を探る。

大竹 敏之

執筆者:大竹 敏之

名古屋ガイド

4代目の思いと戦略がピンチを救う

ところが、コロナ禍のピンチがV字回復のきっかけにもなったのですから、世の中分からないもの。当時SNSでは、売るあてがなくなった特産品を購入して生産者を支援し、フードロスを削減しようという通販サイトがいくつも設立されました。「元祖 鯱もなか」もそこに商品を出品。するとおよそ200件もの注文が寄せられたのです。
 
「お客様から『おいしかったです』『これからも頑張ってください!』という温かい声をいただきました。それまで卸売りが中心で直接お客様の声を聞く機会がほとんどなかったので、皆さんのメッセージがより心に響きました」
 
こう振り返るのは3代目の長女、古田花恵さん。当時は専業主婦で、生家の仕事は時々手伝うくらい。父親も大変な和菓子作りを娘に継がせるつもりはありませんでした。しかし、お客さんの声にふれたことで「こんなに愛してもらっているうちのお菓子を私の代でなくしてはいけない!」という気持ちが膨らみ、家業を継ぐことを決意します。
 
以来、ホームページや通販サイトをリニューアルし、SNSでも情報をこまめに発信するように。体制を整えた上で、2021年8月に花恵さんが正式に4代目に就任します。これをプレスリリースにまとめて地元メディアなどに送ると、ネットニュースに取り上げられ、これを機に次から次へと取材が舞い込むことに。

「専業主婦が実家の和菓子屋を継ぎ、コロナ禍の危機にもめげず奮闘している」というストーリーが、暗いニュースばかりの時世にあって大きな共感、そして応援したいという“推し活”の心理を呼び起こしたのです。
 

SNSを駆使して常に話題を発信

4代目の古田花恵さんと専務の憲司さん夫妻。二人三脚で老舗を復活させた

4代目の古田花恵さんと専務の憲司さん夫妻。二人三脚で老舗を復活させた

SNSを活用して話題の発信、ファン作りに努めてきたのは、花恵さんの夫、憲司さんです。
 
「日々のこまめな投稿で親しみやすさを持ってもらい、時にはバズることを意識した投稿も。商談を控えて『いいね!』をお願いしたら1万近くが集まったり、和菓子離れと呼ばれる風潮に対する悩みや決意を長文にして投稿したり、素直な気持ちを投稿すると、皆さん反応してくれるんです」  

また、他ブランドやグッズなどとのコラボも、SNSを通してフォロワーがつないでくれるケースが多いのだとか。名古屋のアイドルグループ、「TEAM SHACHI(チームシャチ)」やJリーグのサッカーチーム「名古屋グランパス」とのコラボは、それぞれのファンの投稿をきっかけにグループ、チームの公式アカウントが反応して実現にいたったものでした。

>次ページ:もちろん、V字回復の要因はSNSによる話題作りだけではない
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます