4代目の思いと戦略がピンチを救う
ところが、コロナ禍のピンチがV字回復のきっかけにもなったのですから、世の中分からないもの。当時SNSでは、売るあてがなくなった特産品を購入して生産者を支援し、フードロスを削減しようという通販サイトがいくつも設立されました。「元祖 鯱もなか」もそこに商品を出品。するとおよそ200件もの注文が寄せられたのです。「お客様から『おいしかったです』『これからも頑張ってください!』という温かい声をいただきました。それまで卸売りが中心で直接お客様の声を聞く機会がほとんどなかったので、皆さんのメッセージがより心に響きました」
こう振り返るのは3代目の長女、古田花恵さん。当時は専業主婦で、生家の仕事は時々手伝うくらい。父親も大変な和菓子作りを娘に継がせるつもりはありませんでした。しかし、お客さんの声にふれたことで「こんなに愛してもらっているうちのお菓子を私の代でなくしてはいけない!」という気持ちが膨らみ、家業を継ぐことを決意します。
以来、ホームページや通販サイトをリニューアルし、SNSでも情報をこまめに発信するように。体制を整えた上で、2021年8月に花恵さんが正式に4代目に就任します。これをプレスリリースにまとめて地元メディアなどに送ると、ネットニュースに取り上げられ、これを機に次から次へと取材が舞い込むことに。
「専業主婦が実家の和菓子屋を継ぎ、コロナ禍の危機にもめげず奮闘している」というストーリーが、暗いニュースばかりの時世にあって大きな共感、そして応援したいという“推し活”の心理を呼び起こしたのです。
SNSを駆使して常に話題を発信
SNSを活用して話題の発信、ファン作りに努めてきたのは、花恵さんの夫、憲司さんです。「日々のこまめな投稿で親しみやすさを持ってもらい、時にはバズることを意識した投稿も。商談を控えて『いいね!』をお願いしたら1万近くが集まったり、和菓子離れと呼ばれる風潮に対する悩みや決意を長文にして投稿したり、素直な気持ちを投稿すると、皆さん反応してくれるんです」
また、他ブランドやグッズなどとのコラボも、SNSを通してフォロワーがつないでくれるケースが多いのだとか。名古屋のアイドルグループ、「TEAM SHACHI(チームシャチ)」やJリーグのサッカーチーム「名古屋グランパス」とのコラボは、それぞれのファンの投稿をきっかけにグループ、チームの公式アカウントが反応して実現にいたったものでした。
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