島田佳奈の恋愛コラム

「被害者にも落ち度はある」と主張する昭和的価値観は“老害”? セクハラ認識の世代間ギャップとは

セクハラの線引きは意外と曖昧。コンプライアンスがハッキリしていない限り、被害者が声を上げれば「そんなつもりはなかった」としてもあなたは「加害者」です。時代に即した価値観へとアップデートするために知っておきたいTipsをお届けします。

島田 佳奈

執筆者:島田 佳奈

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被害者にも落ち度はある!? セクハラ認識の世代ギャップ

被害者にも落ち度はある!? セクハラ認識の世代ギャップ

セクハラの線引きは意外と曖昧。コンプライアンスがハッキリしていない限り、被害者が声を上げればそんなつもりはなくとも「加害者」に……。時代に即した価値観へとアップデートするために知っておきたいTipsをお届けします。  
<目次>

昭和はおおらかでよかった? “セクハラされた側”の言い分とは

セクハラに明確な線引きはなく、被害者が声を上げれば「そんなつもりはなかった」としてもあなたは「加害者」。生きにくい世の中になったと嘆く人もいるでしょう。

「昭和の頃はもっとおおらかだった」――いくら昔話をしたところで、今は令和です。これまでに起こった事件や世論などにより、少しずつ「いけないこと」が定義されてきました。結果(人によっては)不自由かもしれない人間関係が「正しいもの」になったのです。

筆者は若い頃、昭和的な「おおらかすぎる性認識」の被害に何度も遭いました。夜のお仕事の世界はもちろん、昼間のオフィスでも(主に上司世代のおじさんから)ボディタッチをされる行為は、本来許されるものではなかったはず。しかし当時は「襲われたわけじゃないから」と我慢してやり過ごすほうが「通例」だったのです。

痴漢の腕をつかみ駅員に引き渡すほど勇敢だった筆者でも、相手が上司となれば話は別。本当にイヤなら「やめてください」と声を上げることもできましたが、今後の人間関係に悪影響が出るほうがイヤだと計算したのです。

「1回1万円ですよ」などと冗談でかわし、上司からのセクハラ行為を「貸し」扱いにしていた当時の自分。いつか仕事上で理不尽な目に遭ったら(貸しを)返してもらおうと目論んでいましたが、相殺にするほどの事件も起こらず、貸しは時効を迎えました。

今も昔も、筆者と同じようにやり過ごしてしまった(泣き寝入りした)女性は、多いのではないでしょうか。
 

「自分自身が安心して過ごせる」ことが重要

いつの世も、セクハラや性犯罪に対し「声を上げられる」人もいれば「恐怖のあまり抵抗できず」被害に遭ってしまう人もいます(ここでは「男性の加害者と女性の被害者」のケースを前提とします)。そんなセクハラ(もしくは性犯罪)についてSNSで交わされる議論を散見すると、男女での解釈に大きな隔たりを感じます。

加害者の男性を許せないと言いつつ「男を誘惑するような格好をしていたから」などと、被害者の女性にも過失があると主張する人もいれば、「どんなファッションも自由。理性でブレーキをかけられない犯罪者が悪い」と被害者を擁護する人もいます。

しかし「深夜に若い女が酔ってフラフラしているからだ」「相手の車に乗った(一緒にホテルに行った)時点で合意したも同然」など、女性側の「隙」を指摘する外野は少なくありません。

視点をグローバルにすれば、それらも一理あるでしょう。例えばアフリカのコンゴにおいては、性暴力が軽視されています。権力を誇示するための性暴力が重罪にならない以上、被害を受ける女性たちは後を絶ちません。

イランなどイスラム教徒の多い国では、女性だけがヒジャブ(スカーフ)で頭髪を覆い、体の線が出ないゆったりした衣服を身につけなくてはなりません。女性が肌を露出することが「男性を誘っている」と解釈される国において、髪や体を布で隠すことは身を守る大切な手段。

昨今はヒジャブを外すことを望む女性たちがデモを行ったりしているようですが、残念ながら暴力で制されているようです。日本ではなじみが薄いものの、全世界でムスリム(イスラム教徒)は約19億人います(2022年時点)。不自由を強いられている女性は多いのです。

対して日本における女性の人権は(昭和の昔と比べて)かなり改善されてきたという考え方もあります。しかし筆者は思うのです。よそはよそ、うちはうち。他の国がどうであろうと、自身が生きる国で安心して生きられなければ意味がないと。
 

「令和的価値観」に一刻も早くアップデートすべし

セクハラも性犯罪(性暴力)も、決して「性欲の強さ」が引き起こしているものではありません。むしろ「いけないと分かっているのについ」手を出してしまう愚かさは、悪しき性癖、もしくは治療の必要な精神面の問題ではないかと想像します。

罪悪感を抱いているのであれば、まだ救いがあります。理性で己を律することができない以上、女性を傷つけた場合は死ぬほど反省すべきですが、更生の可能性はあるでしょう。

最もタチが悪いのは「このくらい、いいじゃないか」と悪びれていないケース。

ちまたで芸能人が女性の髪を乱暴に引っ張ったり、同意なく性行為を強要したという(うわさレベルの)ニュースが炎上したのは、加害者が己の行為を悪いと思っていない(ように見えた)から。もちろん当事者間ではさまざまな言い分があると思うので、外野があれこれ言うべきではありませんが、具体的な事例が露呈したことにより、世間の人々は「自分ごと」として許せず激高したのでしょう。

「女性が隙を見せた」などという「被害者にも過失はある」視点は、たとえ心の中でそう思ったとしても、表で発言したらそれは「セカンドレイプ」と思われても仕方がありません。未だ昭和の価値観でいる「老害」な方々(男性とは限りません!)は、一刻も早く「令和的コンプライアンス」に頭の中をアップデートすべきです。

「相手の人権を尊重する」「性欲は理性でコントロールする」――異性をむやみに傷つけないためには、この2つを死守すること。どれほど偉い人よりも、コンプラを遵守できる紳士のほうが、尊敬に値します!
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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