「黒く、濃く」書けることが鉛筆に求められる基本性能
従来の2Bの鉛筆(左)と、uni タブレット授業えんぴつ(右)の筆跡の比較。右の方が反射以前に、黒さ、濃さが際立つ
「元々、鉛筆で書いた文字は光を反射するというのは昔から、多くの人が感じていたと思うんです。それが、タブレット授業が始まったことで、文字が光って写真に撮ったときに読みにくくなってしまうという形で不満として認識されたということなのでしょう」と中村さん。
鉛筆やシャープペンシルの芯は、グラファイトを主原料に作られているため、色も黒というよりグレーですし、ただでさえ光に反射して角度によっては読みにくくなってしまいます。
今や、小学校ではかつてのHBに変わって2Bなどの鉛筆を使うことが推奨されているのも、シャープペンシルの使用が避けられているのも、この「濃く、ハッキリ」した文字を書いてほしいという気持ちが働いている部分もあったのだと思います。
タブレットで手書きの紙の写真を撮るのは、結構難しい
「弊社のSNSなどにノートを撮った画像がアップされていますが、あれはかなり見やすく撮れたものを投稿しているんですよ。でも、現場でのリアルな写真は、暗かったり、光っていたり、文字が薄かったりします。ノートをキレイに撮るのは、ただでさえ難しいですから」と中村さん。
鉛筆の筆跡に付きものの「光沢」がタブレット授業の邪魔になる
反射を抑えた「uni タブレット授業えんぴつ」での見え方のイメージ
「私も、研究部門の人間も、どうしたら鉛筆はもっと使いやすくなるだろうかというのを常に考えています。その中のひとつとして、“光沢を抑える”という構想はもともとありました。また、学習環境が大きく変ったこととうまくタイミングが合い、開発が本格化していきました。光沢自体は、多少読みづらくても、角度を変えれば読めるし、それほど欠点ではなかったのですが、タブレット授業が始まったことで、自分ひとりの見えにくさではなく、クラス全員で書いた文字が共有されることになって、友人たちや教師も困ることになったわけです」と中村さん。
実際、文字が見えにくいことで授業が中断したり、後ろの席の子の学習意欲が減退したり、書いた子も自分の意見が伝わりにくいのではと思ったり、光ることのデメリットは、タブレット授業によって拡大したと言えます。
それを克服するための鉛筆の登場は、時代に応じた筆記具の変化とも言えるでしょう。そう考えると、シャープペンシルの是非以前に、「小学校教育に向いた筆記具とは」という議論の方が有意義な時代になったということかも知れません。
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