推し活の必須アイテム「硬質ケース」ありきの設計
製作の流れとしては、これまでace.で培ってきたビジネスバッグという枠の中に、どのように推し活の要素を入れていくかという感じだったそうです。そのために、実地調査をしたり、実際、普段持ち歩いているものはどういうものかを調べたり、自分たちの推し活の経験を踏まえたりといったリサーチを重ねたのだそうです。「例えば、ビジネスバッグにはPCポケットを付けますが、そこにPCじゃなくて他のものを入れている人もいました。そのような感じで、これまでとは何かしら違った使い方ができるのではないかと、私と矢部、あと同じ部署の須藤良輔の3人で考えて具現化していくという流れでした」と白石さん。 しかし、よくお話を伺ってみると、在りモノのビジネスバッグをベースに作るというような安易なものとは全然違っていました。
例えば、サイズを決めるにあたっても、基準としたのはA4ファイルが入るとかそういうことではなく、クリアハードケース、いわゆる硬質ケースのサイズに合わせて作っていったというのです。
「まず、硬質ケースが入ることが最初のサイズ決めのポイントだったんです。だから、ボディバッグはB5のケース、かぶせショルダーはA4のケース、ボックスリュックはB4のケースがスムーズに出し入れできるようになっています。調査したところ、このサイズのケースに入れたアクスタやカードなどを交換しているところが頻繁に見受けられたんです。これがマストアイテムだとしたら、入れられるサイズじゃないと」と白石さん。
硬質ケースは100均で売っているものなどをしっかり調べて、それがちゃんと入るように設計されています。ボディバッグが通常のものより大きいのも、かぶせショルダーが通常のメッセンジャーバッグと比べて横長なのも、ボックスリュックがace.のビジネスバッグとしては珍しいボックスタイプなのも、この硬質ケースありきで作られているからなのです。
そして、それが通常のビジネスバッグとは一味違う見た目につながり、このバッグの個性にもなっています。女性向きのジュエルナローズのバックパックのときは、応援うちわが入るサイズで設計したそうです。そのあたり、ターゲットとニーズの調査が行き届いていますね。 「ポスターをどうするかも結構議論しました」と白石さん。最初は、バッグの下部に丸めたポスターを差し込めるベルトを付けようというアイデアもあったそうです。
「バッグ側面のペットボトルを入れるポケットも、ポスターが差せるようにベルトを付けるなどアイデアは出たんですが、本当に、そんなにポスターを差す需要はあるのかと思ったんです」と言うのは、開発メンバー3人の中で唯一“オタクではない”須藤さん。
ポスターは大きいから、むしろ紙袋とかに入れて持つ方が安全だし、そちらの方が主流なのではと考えた須藤さんは、サイドポケットはペットボトルや水筒入れにして、その上はチャームを付けるなどの方が良いのでは、といった現実的なアイデアを出すことで、全体を調整する役割を果たしていたのだと言います。
>次ページ:ライブの現場で便利なワンボックス構造とペンライトホルダー