韓国教育部が毎年実施する「学生希望職業調査」の2023年の結果を見てみると、子どもたちの生活に密着する分野の職業や、学校教育及び進路指導科目などで重視されている分野、メディアでよく話題となる人物たちの関連分野など、現在のトレンドや時代を反映するような職業が並んでいる。
このランキングを眺めてみると、小・中・高生のトップ3の職業に、順位は違えど「教師」がランクインしている。特に高校生のランキングでは1位だ。学生が最も身近で日々目にする仕事だけあり、この職業に対する子どもたちの関心は高いようだ。
公務員ならではの安定性があり、かつ公教育の現場で未来ある子どもたちを指導する重要な任務である点などにやりがいを見いだし、なりたいと思うのだろうか。いや、少なくとも小学生が公務員で安定的などの理由で教師を選択するとはあまり考えられないので、やはり後者のような類の理由で人気なのだろう。
給与が格別良いわけでは……
しかし……あくまで大人目線の感想だが、昨今の学校教育の現場における教師の負担の大きさを考えると、教師が上位トップ3に入るほどの人気とはにわかには信じがたい。韓国の公立小学校で事務職員を務める友人にこのランキング結果を見せた。彼女はそこに登場するさまざまな職業に納得しつつも、医者ならともかく、教師が1位というのは意外だったと言いながら首をかしげた。「教職の給与が仕事内容と照らし合わせたときに格別良いとは言えないし……」と不思議がるので、早速教職の給与がどの程度の水準にあるのか調べてみる。
教育部が公開している世界各国の学生・教員の現況や財政に関する調査結果(OECD教育指標2023)によると、韓国の小学校初任教師の年収は3300万ウォン台(約364万円)で、OECD教育指標平均である3620万ウォン(約400万円)よりも低い。
しかし、キャリア15年以上になると、OECD教育指標平均の4973万ウォン(約550万円)よりも高い5913万ウォン(約653万円)であった。中・高も同様で、15年目を境にようやくOECD平均より高くなる。
韓国統計庁の企業規模別平均所得調査(2022)の結果を見ると、大企業勤務者の月収平均は563万ウォン(約62万円)、中小企業勤務の場合は266万ウォン(約29万円)。
これを基に年収を算出して比較してみると、教職は中小企業勤務よりは給与が高いものの、大企業には及ばず。これは予想に違わず。もちろん年齢別、教職経験年数、雑用、学生の課外活動指導など、あらゆる業務内容とさまざまな条件を整えてより細かく比較検討すれば、待遇の良し悪しに対する判断は変わってくるものなのかもしれないが、給与面で教職がなりたい職業1位になることはまず考えられない。
※レートは2023年1月11日時点
>次ページ:しかも、最近の学校事情はそうそう穏やかではない。