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巨額詐欺事件で見た!タワマン住民による奇妙な役割分担、被害者はこうしてだまされた

ドバイが拠点の企業「マーケットピーク」が扱う暗号資産への投資を違法に勧誘したとして、2023年5月に男女9人が逮捕される事件がありました。他人に紹介すれば成功報酬が得られるとして、20代の若者を中心に2000人以上から約7億円超を集めていました。なぜこれほど多くの若者が怪しい投資話にだまされてしまったのでしょうか。

執筆者:All About 編集部

タワーマンション

タワマン内にいた2人の住人の役割とは?

ドバイが拠点の企業「マーケットピーク」が扱う暗号資産への投資を違法に勧誘したとして、2023年5月に男女9人が逮捕される事件がありました。他人に暗号資産を紹介すれば成功報酬が得られるとして、20代の若者を中心に2000人以上から約7億円超を集めていました。

なぜこれほど多くの若者が怪しい投資話にだまされてしまったのでしょうか。「詐欺撲滅弁護士」として知られる杉山雅浩弁護士が、被害に遭った大学生に直接話を聞きました。

展示会に誘われたのに突然タワマンへ

杉山雅浩弁護士(以下、杉山):インタビューの前に、この事件の顛末について触れておきたいと思います。男女9人が逮捕されたことがニュースになりましたが、その後、リーダー格の男を含めて9人全員がなんと不起訴処分となっています。

このような処分となった原因は分かりません。しかし、マーケットピークの勧誘を受けて2000人を超える人が被害に遭ったという事実が残っている以上、似たような投資詐欺の案件もたくさんありますから、注意喚起という意味で今回のインタビューをさせていただくことになりました。

協力いただく被害者のCさんには感謝を申し上げます。ではよろしくお願いします。

Cさん:よろしくお願いします。

杉山:まず、Cさんはどこでマーケットピークの勧誘を受けたのでしょうか?

Cさん:通っていた大学で同級生に誘われ、マーケットピークの幹部が住んでいたタワマンに連れていかれました。

杉山:どこのタワーマンションですか?

Cさん:大阪の中之島にあるタワマンです。

杉山:そのマーケットピークの幹部とは、大学生なんですか?

Cさん:いや、幹部は大学生ではないです。

杉山:タワマンに連れていかれる際、マーケットピークであるとか、投資案件の話であるということは、同級生から聞いていたのですか?

Cさん:いいえ。同級生から勧誘を受けたときには投資の話は一切ありませんでした。大阪の中之島には、グランキューブと呼ばれる国際会議場があるのですが、「そこで展示会があるから来ないか」という誘いでした。

特に予定もなく暇だったというのもあって行ったら、国際会議場の近くのタワマンに連れていかれ、元の話とは全然違う投資案件の話を受けました。

杉山:なるほど。いわゆる「ブラインドキャッチ」と言うのですけれども、普通の展示会であるとか、飲み会であるとか、そういった話から突然投資のマルチ商法の話になってくるパターンですね。マルチ商法や投資詐欺、ポンジスキーム等で、勧誘目的であることを隠して誘い出す手法です。

実は、この手法自体がもう既に違法なんですよね。しかし詐欺師が勧誘で用いる典型的なパターンです。さて、タワマンでは幹部はどんな話をしていましたか?

タワマン内にいた2人の住人の役割とは

Cさん:まず幹部の人間の部屋では、マーケットピークの歴史と、あとはその創設者のセルゲイ(セルゲイ・ヘック)の話です。それが2時間ぐらい。

杉山:具体的にどんな歴史を幹部は話していたのですか?

Cさん:ある企業を買収した話とか、利益を上げるためにどういう活動をしてきたか、みたいな話です。

杉山:その後はどういう話をしていましたか?

Cさん:歴史の話が終わると、同じタワマンの中にある別の人間の部屋に連れていかれました。

杉山:同じタワマンに2人いるわけですか。歴史を話す人と、もう1人は?

Cさん:歴史を話す人と、あとは稼ぐ方法を話す人です。歴史の方の人間は逮捕されていません。

杉山:なるほど。では稼ぐ方法を話す人は逮捕されたわけですね。

Cさん:はい。逮捕された9人の1人だと思います。

杉山:その稼ぐ方法の話をする人は一体どんな話をしたのでしょうか?

Cさん:マーケットピークが発行する仮想通貨が、2024年の終わりには今の価格から500倍になるという話でした。あとは、この仮想通貨に投資したい人を勧誘して紹介すれば、もっと稼げますよという話もありました。

杉山:なるほど。配当や月利に関する説明はありましたか?

Cさん:はい。自分が振り込んだ額の10%が月に振り込まれ、1年間トータルだと120%振り込まれると説明を受けました(月利10%、年利では120%)。

杉山:その上で買った仮想通貨が500倍になるという話ですね?

Cさん:そうです。

杉山:紹介の話についても詳しく聞かせていただけますか。

Cさん:紹介したら「これぐらいもらえる」という話をしていました。「自分らはネズミ講ではない」という話もしていました。

杉山:その部屋には何人くらい人がいたんですか?

Cさん:自分と自分を誘った同級生。そして、稼げる方法を話していた、逮捕された人間ですね。この3人だけです。

杉山:幹部は儲かっている感じでしたか?

Cさん:やっぱり、かなり華やかな生活をしていました。

杉山:なるほど。「自分は儲かっているぞ」みたいな自慢話をしていたわけですね。そのタワーマンションはどんな感じのマンションでしたか? 何階くらい?

Cさん:高層マンションですね。歴史の話をした人間は22階に住んでいて、稼ぐ方法を話した人間は48階に住んでいました。

「高齢者は勧誘するな」幹部から指導

杉山:それで結局、いくら送金したんですか?

Cさん:約1万ドルです。

杉山:買った後はどうなりましたか?

Cさん:アポ電の練習です。

杉山:アポ電とは?

Cさん:同級生を誘う練習です。普通だったら高齢者をだますじゃないですか。でも高齢者は仮想通貨には興味がないというか、そもそも知らないので、「高齢者は誘うな。誘うのなら若い子を誘え」と指導を受けました。

杉山:なるほど。そんな指導があったのですね。集まっていたメンバーには、やはり同級生が多かったのでしょうか?

Cさん:若い子がほとんどで、大学生や大学を中退した人とか。

杉山:1万ドルのお金はどう工面したんですか?

Cさん:自分の場合はお金がありました。ただ、お金がない人の場合、「払えない」と言っても、大阪駅前の第1、第2、第3、第4ビルにある消費者金融に無理やり連れて行かれ、借入させられるんです。

杉山:これって、勧誘方法の指導を受けるときに、「若い子はお金を持ってないから借入させるのが基本だ」みたいな説明があるのですか?

Cさん:はい。「借入させるのが基本だ」と言っていました。

杉山:典型的なやつですね。Cさんを勧誘した大学の同級生もだまされていたのでしょうか?

Cさん:だまされていたと思いますし、あとは通帳が捨て駒にされたという感じですかね。

※Cさんは本件の被害金を同級生の口座に入金していた。

Cさん:自分も入金するときは、なんで同級生の口座に振り込まないといけないのかと、幹部の口座に振り込んだらいいのにと思っていたんですけど、今思ったら、同級生の口座を捨て口座として利用する目的だったんだなと思います。

杉山:なるほど。そもそも詐欺師ですから口座なんて持っていないですからね。今日はありがとうございました。

(※本記事は、杉山雅浩弁護士が運営するYouTube番組「詐欺撲滅弁護士【杉山雅浩】」の内容を一部編集してお届けしています)

杉山 雅浩(すぎやま・まさひろ)
静岡県生まれ、東京都在住。上智大学法学部法律学科卒業後、弁護士法人V-spirits法律事務所代表弁護士を経て、東京、仙台に支店を持つ弁護士法人ワンピース法律事務所を開業。同社、代表役員弁護士として活躍中。得意分野は、離婚問題、残業代請求、相続問題、交通事故、企業法務、起業家支援など多岐にわたる。セナー事件、ジュビリーエース事件、OZプロジェクト事件等多くの有名投資詐欺事件の首謀者逮捕や被害金の回収に実績あり。詐欺撲滅YouTuberとして、活動中。詐欺に詳しい弁護士として、NHK、千葉テレビ、フジテレビ、日本テレビのスッキリ他、多数のメディアに出演。主な著書に「身近に潜む詐欺 あなたはもう騙されている」(みなみ出版)。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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