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「被害金を回収できる」を信じた人の末路、なぜカモリストに掲載されたのか

国際ロマンス詐欺の被害に遭い、「お金を回収したい」とわらにもすがる思いで、助けを求めたらさらに金銭をだまし取られた……。そんな「二次被害」が相次いでいます。被害者支援に取り組むNPO法人の代表に最近の二次被害の手口などを聞きました。

執筆者:All About 編集部

弁護士

「被害金を必ず回収できる」とうたう弁護士事務所の広告。実は詐欺?

国際ロマンス詐欺の被害に遭い、「お金を回収したい」とわらにもすがる思いで、助けを求めたらさらに金銭をだまし取られた……。そんな「二次被害」が相次いでいます。

国際ロマンス詐欺の被害者支援に取り組むNPO法人「CHARMS」代表理事の新川てるえさん(59)は「国際ロマンス詐欺において、被害者を助けることを装って金銭をだまし取る“リカバリー詐欺”は昔からあったが、手口が巧妙化している」と話します。新川さんに最近の二次被害の手口などを聞きました。

弁護士による「二次被害」が相次ぐ

ネットで「国際ロマンス詐欺」と検索すると、たくさん表示される弁護士事務所の広告。実はこの中に、「被害金を必ず回収できる」と言って高額な着手金を請求する弁護士がいることをご存じでしょうか。

CHARMS代表理事の新川さんは、「現実的に、海外に送金したお金を取り戻すことは、ほぼ不可能です。弁護士に数十万円の着手金や調査金を支払ってもどのような調査を行なっているのか不明で、お金を取り戻せない。このような二次被害が相次いていることについては、弁護士会も注意喚起しています」と呼びかけています。

弁護士だから……といって必ずしも信頼できないとなると、被害に遭った場合どうすればよいのでしょうか。新川さんは、弁護士ではなく必ず警察に相談するよう、被害者に伝えているといいます。

「もし自分が被害に遭ったら、まず警察に被害届を提出しましょう。その上で、メールアドレスやLINEアカウントを変更するなど自分の個人情報を見直す必要があります。一度でも詐欺の被害に遭うと、自分の個人情報が詐欺師の間で共有されるからです。詐欺師はお金を搾取できた人を『カモリスト』というリストに掲載します。新たな詐欺師が近づいてこないためにも、個人情報をアップデートすることが大事です」

SNSの「被害金を取り戻した」も実は罠?

X(旧Twitter)で「国際ロマンス詐欺」と検索すると、被害者と称したアカウントが多数表示されます。こうしたアカウントの中には、犯人が偽のアカウントを作成し、多くのキーワードを含む投稿を行なっているものもあります。

新川さんは、「SNSで『被害金を取り戻したので、気になる人は連絡ください』というような発信をしているアカウントは、リカバリー詐欺を狙ったものだ」と言います。

SNS上の交流でトラブルに巻き込まれないためには、どうしたらよいのでしょうか。対策を新川さんに聞きました。

「SNSは面識のない人とも交流できるメリットがある一方で、そのリスクについても認識すべきでしょう。例えば、Facebookで見知らぬ人からの友達申請に承認すると、自分だけでなく、友達もカモになる可能性があります。『私は詐欺に引っかからないから大丈夫』などと思って、安易に申請を承認していると、友達が詐欺師のターゲットになってしまうことも。そのような事態を防ぐためにも、見知らぬ人からの友達申請は無視してブロックしましょう」

XやInstagramのフォロワーの数が増えるのを見て安易に喜ぶのも禁物だといいます。「どんな人が自分の情報を見ているのかプロフィールをチェックして、不審な点があればブロックしたほうがよいですね」

根本的な問題と向き合って

被害者の中には、マインドコントロールのような状況に陥っている人も多いと言われています。新川さんは被害者に対して、どのようなカウンセリングを行なっているのでしょうか。

「例えば、詐欺被害に遭った根本的な原因は夫婦仲や過去のトラウマにあると考えている人がいます。そのような方々に対しては、自己肯定感を高め、自己改善を促すかたちでカウンセリングを行なっています。被害に遭っただけであれば、時間が解決するしかありません。ただ、そうではなく、他に心理的な問題を抱えているのであれば、カウンセリングを受けて根本的な問題を解決しておいたほうがよいでしょう」

コロナ禍を経て対面での人づきあいが減ったといわれる昨今。人の孤独感や弱みに忍び寄る詐欺の手口に、細心の注意を払いましょう。

<取材・文/秋山志緒>

教えてくれたのは……新川 てるえさん
作家・コメンテーター・家族問題カウンセラー
1964年、東京都生まれ。10代でアイドルグループのメンバーとして芸能界にデビュー。離婚経験を生かし1997年12月にインターネット上でシングルマザーのための情報サイト「母子家庭共和国」を主宰。2023年に国際ロマンス詐欺被害者支援のためのNPO法人CHARMSを設立、代表理事に就任。シングルマザーコメンテーター・家族問題カウンセラーとして雑誌、テレビなどに多数出演。著書に『子連れ離婚を考えたときに読む本』(日本実業出版)、『被害額4500万円! 国際ロマンス詐欺の卑劣な手口』(インプレス)などがある。

秋山 志緒
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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