損益通算ができない新NISAで高配当株投資をしても大丈夫?
Q. 損益通算ができない新NISAで高配当株投資をしても大丈夫?
「新NISAの成長投資枠を使って高配当株に投資したいと考えています。しかし新NISAでは損失を出した場合、非課税のメリットを生かせない上に、損益通算もできない点が不安です。高配当株に投資してもよいものでしょうか?」(31歳・会社員女性)A. 新NISAと高配当株投資は相性が良いので大丈夫。ただし、銘柄を分散したほうが安全です
ご指摘のとおり、NISAでは損益通算(株などで出た利益に対して損失を差し引くことができる制度)ができません。利益が出れば非課税のメリットを生かせる一方で、損失が出ると損益通算できずに「デメリットだけ」になります。よって、NISAでは「トータルでプラス」になるように銘柄分散するのが良いです。ご質問者さまは「新NISAで高配当株投資をする」ことを検討しているようですが、高配当株投資自体は新NISAと相性が良い投資法です。
第一に、高配当株投資では「配当収入」を受け取れますが、新NISAでは配当収入に対する課税をチャラにできます。
第二に、高配当株投資では「質の劣った株」や「割高で利回りの低い株」といった、ハズレをつかみにくい性質があります。経営陣が株主を軽視するような質が低い株や割高な株は、配当利回りが低い傾向があるからです。
新NISAは特定口座以上に「投資先選びのミスが高くつきやすい」です。だからこそ、ミスが起きにくい高配当株投資は相性が良いのです。
以上を踏まえると、高配当株投資は、投資初心者でも取っ付きやすく、新NISAのメリットも生かしやすい手法と言えます。
一方で、高配当株投資も万能ではありません。たとえば、1銘柄に資金を一極集中したりすると、当てが外れたときに損をして、新NISAの節税枠を腐らせてしまう恐れがあります。
そこで筆者としては、最低でも3銘柄以上の高配当株に分散することをオススメします。
分散の目安は「業績が連動しない3銘柄」を選ぶことです。
たとえば「不動産株A、不動産株B、不動産株C」のように同じ業種の3銘柄を選んでも、不動産市況全体が崩れてしまえば共倒れになってしまいます。
ですから「原油株A、陸運株B、電力株C」のように、業績が連動しなさそうな銘柄を選んで分散効果を高めると良いでしょう。
特に筆者は「損失を相殺し合う」銘柄分散が理想だと考えています。
たとえば、「原油株A、陸運株B、電力株C」という銘柄分散では、原油の値段が動いたときに、A~Cが互いの弱点をカバーし合うような関係があります。
原油価格が上がると、原油株Aの採算が良くなりますが、ガソリンをたくさん使う陸運株Bや、化石燃料を使う電力株Cの採算は悪化します。
逆に、原油価格が下がると、ガソリンをたくさん使う陸運株Bや、化石燃料を使う電力株Cの採算は改善しますが、逆に原油株Aの採算は悪化します。
この3銘柄分散の場合には「原油価格がどう動いても利益が出る」ようにポートフォリオを組めていると感じませんか?
上記はあくまで一例で、銘柄分散には他にさまざまなやり方があります。
たとえば、
◯円高メリット株+円安メリット株(輸出株+輸入株など)
◯金利上昇メリット株+低金利メリット株(銀行株+高債務比率株)
といった方法です。
どんな投資にも弱点がある以上、「絶対に損をしない組み合わせ」というものはありません。とはいえ、組み合わせ次第で「幅広いリスクに耐えうる資産」を組むことは可能だと思います。
個別株投資は難しいし、うまくいかずにつらい時期もあります。しかし、うまくやれば大きな利益がでる可能性がある上、勉強しがいがあり、知的好奇心の強い方にとってはとてもスリリングです。
新しいNISAをきっかけに「投資が楽しい!」と感じる人が一人でも増えるとうれしいですね。