特定口座で保有するオルカンを新NISA口座に移すべきか?
Q. 特定口座で保有する全世界株式ファンドを新NISA口座に移すべきか?
「特定口座でeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)を保有しており、新NISAでもオルカンのみを購入するつもりですが、特定口座はそのまま保有し続けるべきか、いったん売却して新NISA口座で買いなおすべきか迷っています。アドバイスをお願いします」(52歳・公務員女性)A. 新NISA口座へ「ゆっくり乗り換える」のが無難ですが、腕に自信があるなら「多少の決め打ち」もアリ
ずばり、株式ETF※への中長期での積立投資では、特定口座よりも新NISA口座のほうが有利だと考えられます。質問者さまは52歳の公務員とのことで、以下のような運用方針を前提としていると推察しました。
・公務員の仕事を定年まで続ける
・仕事を続けるかぎり、新NISAでの積立投資(オルカン)も続ける
・つみたて投資枠は使い切るつもりだが、成長投資枠は使い切るか考え中
・積み立てたオルカンは定年退職後まで売らない予定(=中長期投資)
以下では、この4点を前提とした場合、「筆者だったら、こうやって運用するだろうな」と考えたことをまとめます。
値動きの「先読み」は難しい
投信の値動きを「先読み」するのはとても難しいです。
ですから、よほど腕に自信がないかぎりはタイミングを分散しながら「ゆっくり特定口座から新NISA口座へ切り替えていく」のが無難でしょう。
たとえば、筆者であれば、1カ月あたり30万円ずつ……つまり、新NISAの節税枠(つみたて投資枠120万円分、成長投資枠240万円分)をすべて使い切るペースで、すこしずつ切り替えていきます。
一方、腕に自信がある場合は「多少の決め打ち」は許されるとも考えています。
たとえば、筆者は「国債金利と株式益回りの差」を見ながら、どの投資商品を選ぶか決めています。
国債金利はいわば「実質ノーリスクで得られる利回り」です。2023年11月現在、アメリカの短期国債は金利が5%くらいです。
株式益回りは短中期的には「リスクを取ることで期待できる最大の利回り」です。3億円の純利益を稼ぐ会社を100億円で買収したら、「益回り3%」と考えます。
リスクを取るのであれば、リスクを取るだけの「うまみ」があるべきです。リスクを取らないでも5%のリターンが得られるなら、それ以上の利回りが期待できないのにリスクを取る意味はありません。
つまり、「株式益回りが国債金利よりも圧倒的に高いときは株式投資のうまみも大きいが、逆にほとんど差がないか、国債金利のほうが高いときにはリスクを取るうまみに欠ける」と言えます。
だから筆者は、オルカンが割安でうまみが大きいときはなるべく早めにNISA口座へ移して節税効果を高めたいと考えます。逆に、オルカンが過熱気味に見えるときは積み立てを先送りにしたり、別の投資商品に乗り換えたりすることも考えます。
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以上、まとめると、大多数の方にとっては新NISA口座に「毎月コツコツ切り替える」のが無難です。
一方、質問者さまが多少「タイミングの決め打ち」を許容できるなら、オルカンが暴落して割安になったときなどに、まとめて一気に新NISAへ移してしまうなどといった工夫もアリかと思います。
コツコツ切り替えるにしても、一気に切り替えるにしても、どちらの場合にもリスクがあります。
コツコツ切り替える場合は、値上がりしたときに「一気に切り替えればよかった」となりますし、一気に切り替えた場合は、値下がりしたときに「コツコツ切り替えればよかった」となります。
どちらにせよ後悔は避けられません。筆者であれば、両方のパターンについて考えて、「どっちの後悔をするほうがマシか?」で選んでみると思います。
※株価指数に連動する上場投資信託