老後にもらえる年金は、厚生年金に加入していた会社員などは老齢厚生年金と老齢基礎年金になります。老齢厚生年金は、現役時代の給与と加入期間によって決まります。老齢基礎年金は加入期間に応じた金額で、40年加入した場合は満額の79万5000円(2023年度)になります。ずっと自営業者や専業主婦で国民年金のみに加入していた人の場合、受け取れるのは加入期間に応じた老齢基礎年金だけになります。
このように、老齢年金の年金額は人によって異なります。今の高齢者は、どれくらいの年金をもらっているのか、厚生労働省の調査「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」で、状況を見ていきましょう。
男性は月17万円台、女性は月9万円台がいちばん多い
図表1は厚生年金保険の加入者、つまり会社に勤め、厚生年金保険に加入していた人の基礎年金を含めた老齢年金の年金額の分布です。年齢に関係なく、男女別・金額別に分けたものです。グラフを見て一目瞭然ですが、男性と女性のグラフの形は大きく異なります。男性の場合は、年金月額は17万円台が97万人といちばん多く、次に18万円、その次に16万円と、17万円をピークにした山なりで、裾野が広がっています。受給権者の平均年金月額は16万3380円でした。
一方、女性の場合は、年金月額は9万円台がいちばん多く、約85万人。次に10万円、その次に8万円と、9万円をピークにした鋭い山で、15万円以上もらっている人は少数です。平均年金月額は10万4686円でした。
ちなみに、厚生年金保険の受給権者には、「特別支給の老齢厚生年金」の「報酬比例部分」のみを受け取っている、65歳未満の受給権者も含まれています。
厚生年金保険に加入していた人は全体で1618万人いますが、そのうち男性が3分の2の1083万人、女性は3分の1の535万人と、男性が女性の約2倍になっているのも特徴です。
国民年金のみに加入していた人は、平均月5万円台
国民年金だけに加入していた人が受け取っている老齢年金の分布は、図表2の通りです。男性、女性ともに、年金月額が6万円台の人が多く、次に5万円、4万円台と続きます。平均年金月額は男性が5万9013円、女性は5万4346円。男性が若干多いものの、それほど大きな違いはありません。
受給者の人数を男性と女性で比較すると、年金月額6万円台のみ、男性の人数が多く、それ以外では女性の人数が男性を上回っています。
人数の総数を見てもわかるように、女性1894万人に対し、男性は1448万人と、女性のほうが400万人以上も多いのは、会社員の妻で国民年金第3号だった人が多いせいかもしれません。
厚生年金加入者の60代前半の年金月額は数万円
図表1、2は、老齢年金の受給権がある全年齢の人の平均年金月額ですが、厚生年金保険に加入していた人については、生年月日によって60代前半で特別支給の老齢厚生年金が受け取れます。また、年金の繰上げ受給を選択した人もいて、そうした人たちの1歳刻みの平均年金月額の調査結果をまとめたものが図表3です。60~64歳の男性の平均年金月額は8万~10万円台。女性では60、61歳が8万円台、62~64歳は5万円前後と少なめです。
60代前半は老齢年金の受給開年齢始が段階的に引き上げられている途中で、この令和3年度(2021年度)の調査では、男性は63歳から、女性は62歳から「特別支給の老齢厚生年金」の「報酬比例部分」が受給開始になっています。それ以前に老齢年金を受給している人は、「繰上げ受給」を選択している人になります。また、男性の62歳が月10万円をこえているのは、坑内員・船員の受給権者の割合が高くなっているためです。
65歳からは老齢厚生年金と老齢基礎年金の両方を受け取れるため、男性、女性ともに平均年金月額がぐんと高くなり、男性では約17万円、女性では約11万円になっています。
老齢年金を受給するための資格加入期間は、以前は25年必要でしたが、制度改正で現在は10年以上になりました。そのため国民年金の加入者については、25年以上加入した場合と25年未満の場合の平均年金月額が、以下のように出ています。
●国民年金受給権者の平均年金月額
・老齢年金25年以上……5万6368円
うち新規裁定……5万4050円
・通算老齢年金25年未満……1万9397円
当たり前ではありますが、加入期間が25年未満の人は平均年金月額も少ないという結果です。
老齢年金は、公的年金の加入状況によって大きく異なり、加入期間が長くなるほど、多くもらえます。年金保険料の負担もありますが、老後の生活を支えるものですので、しっかり納めておくといいでしょう。
記事協力:インタープレス