糖尿病予防には睡眠が大切
糖尿病は、「万病のもと」とも言われています。糖尿病になり「インスリン」というホルモンが正常に働かなくなると、高血糖状態が続くことで、目の網膜や腎臓、末梢神経などに悪影響を及ぼし、致命的な合併症を生じるためです。近年では、認知症の発症リスクを高めることもわかってきました。糖尿病になってから治療することは難しいので、ならないように予防することが大切です。
糖尿病予防に大切なのは、「適切な食生活・運動・睡眠」
血糖値は食事の影響を受けるので、糖尿病にならないためには、適切な食習慣が大切であることは言うまでもありません。また、血糖の消費を促すためにも、適度な運動も必要です。そして、意外に知られていませんが、食生活と運動に加えて重要なのが「睡眠」です。そのカギは、「コルチゾール」というホルモンが握っています。
コルチゾールは、環境の変化などを含む外的刺激に私たちがさらされたときに、副腎皮質から分泌されるホルモンで、ストレス反応を引き起こします。「ストレス」と聞くと悪いことのように思われるかもしれませんが、ストレスはもともと体外で起こる変化に対して体や心が適応するためのしくみですから、必要なものです。
コルチゾールはいくつかの作用をもっていますが、その一つに「体内で糖分を作る反応を促して血糖を上昇させる」という役割があります。血糖は最終的に活動するために必要なエネルギーを作り出すのに使われます。ですからコルチゾールの作用は、私たちがエネルギーが必要な状態になったときに備えてくれているものとみなすことができます。
しかし、糖尿病との関係でみると、高血糖状態を作り出すコルチゾールは、糖尿病を引き起こす、あるいは悪化させる要素の一つになります。コルチゾールは必要なときに働き、そうでないときは働かないようになっているのが理想的です。
睡眠とコルチゾールの関係……眠っている間は分泌が減る
そこで、ポイントになるのが「睡眠」です。コルチゾールの分泌は、日中と夜間で変わります。具体的には、夜間の睡眠中には血中コルチゾール量がぐっと減少し、早朝になっていよいよ目覚めるというころになると、再び増加してきます。つまり、しっかり睡眠をとれば、その間はコルチゾールの悪影響から解放されるのです。逆に、無理をして睡眠時間を削った生活を送っていると、コルチゾールの分泌が高まった状態が続きます。精神的にも肉体的にも緊張した状態が続くため、眠ろうと思っても眠れないという睡眠障害が起こり、さらにコルチゾールの分泌が低下しなくなるという悪循環に陥ります。また、精神状態の悪化から、食べ過ぎたりお酒を飲み過ぎたりして、血糖値の上昇をまねくこともあります。こうして、睡眠不足は糖尿病をまねいてしまうのです。
糖尿病予防または改善のためにも、食事と運動に加えて、ちゃんと睡眠をとるように心がけましょう。
■関連記事